東京でアルバイトを探す人が特に注意したいのが、採用直後の試用期間や研修期間だ。
求人広告には「研修期間あり」「試用期間3か月」「研修中は時給変更」といった条件が掲載されることがある。しかし、こうした期間を設定しただけで、最低賃金を下回る時給にできるわけではない。
東京労働局も2026年度の最低賃金改定に関する案内で、10月1日以降は試用期間・研修期間を含めて地域別最低賃金を下回らないよう注意を呼びかけている。
試用期間中の時給は1,280円以上が原則
例えば、次のような求人があったとする。
- 通常時給:1,350円
- 試用期間:3か月
- 試用期間中:時給1,200円
- 試用期間終了後:時給1,350円
この条件で2026年10月1日以降に東京都内で勤務する場合、試用期間中の1,200円は原則として最低賃金を下回る。
通常時給が1,350円でも、最初の3か月間だけ1,200円にすることは、通常の試用期間という理由だけでは認められない。
ただし、最低賃金法には、試の使用期間中の労働者などについて、一定の条件を満たした場合に最低賃金の減額を認める特例がある。
これは事業主が自由に決められる制度ではない。都道府県労働局長の許可が必要であり、単に雇用契約書へ「試用期間中は時給を下げる」と記載しただけでは適用されない。
研修期間中の最低時給も同じ?
一般的な飲食店や販売店の研修であれば、原則として時給1,280円以上が必要だ。
例えば、次のような業務が研修期間中に行われても、通常は最低賃金の対象になる。
- レジ操作や接客の練習
- 商品の品出しや陳列
- 店舗内の清掃
- 調理補助や配膳
- 先輩スタッフと一緒に行う実務
- マニュアルに沿った店舗業務
「まだ仕事を覚えていない」「一人で接客できない」「先輩の指導を受けている」といった理由だけで、最低賃金を下回る時給を設定することはできない。
なお、認定職業訓練など、法律上の要件を満たす特定の訓練には減額特例の制度がある。ただし、こちらも許可が必要であり、通常の店舗研修と同じ扱いにはならない。
試用期間・研修期間の求人を判断するポイント
| 求人の条件 | 最低賃金の考え方 |
|---|---|
| 通常の試用期間 | 原則1,280円以上 |
| 店舗での一般的な研修 | 原則1,280円以上 |
| 接客未経験者向け研修 | 原則1,280円以上 |
| 先輩によるOJT | 原則1,280円以上 |
| 法定要件を満たす減額特例 | 労働局長の許可がある場合に限り例外 |
特に、求人票に「研修期間中は時給1,150円」と記載されている場合は、そのまま応募・契約する前に理由を確認したい。
最低賃金を下回る条件が提示されているなら、採用担当者に新しい時給と適用開始日を確認することが先決だ。
【固定残業代込みの求人に注意】最低賃金1,280円を正しく計算する方法

最低賃金の確認で間違いやすいのが、固定残業代を含む給与の計算だ。
求人票に「月給25万円」「各種手当込み」「固定残業代含む」と書かれていると、給与が高く見える。しかし、最低賃金の判定では、支給総額をそのまま労働時間で割ればよいわけではない。
厚生労働省の最低賃金制度では、通常の労働時間に対する基本的な賃金を対象とし、時間外割増賃金などは計算から除外する仕組みになっている。
固定残業代は最低賃金の計算に含めない
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、一定時間分の時間外労働などに対してあらかじめ支払う賃金だ。
例えば、求人票に次のような条件が記載されているとする。
| 給与項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本給 | 200,000円 |
| 固定残業代 | 30,000円 |
| 月給総額 | 230,000円 |
| 月平均所定労働時間 | 160時間 |
この場合、固定残業代を含めた23万円を160時間で割るのは適切ではない。
最低賃金の比較では、固定残業代を除外して計算する。
200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円
この例では、算入対象となる賃金が基本給だけであれば、時給換算で1,250円となる。東京都の最低賃金1,280円を30円下回るため、そのままでは最低賃金を満たさない。
月平均160時間の場合、最低賃金を満たすために必要な算入対象賃金は次のとおりだ。
\[
1,280円 \times 160時間 = 204,800円
\]
つまり、対象となる賃金が基本給だけなら、月額204,800円以上が必要になる。
なお、職務手当など、最低賃金の算入対象になる定額手当があれば、その分も加えて判定する。一方、固定残業代などの対象外賃金は加えない。
最低賃金の計算から除外される手当
厚生労働省が示している主な除外対象は以下のとおりだ。
- 臨時に支払われる賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賞与など
- 時間外労働に対する割増賃金
- 休日労働に対する割増賃金
- 深夜労働に対する割増部分
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当
特に注意したいのは、通勤手当だ。
例えば、時給1,250円で交通費が別途支給されている場合、交通費を加えて時給1,280円相当になったとしても、最低賃金を満たしたことにはならない。
深夜手当や残業手当があれば最低賃金を満たす?
これも誤解されやすいポイントだ。
22時から翌5時までの深夜労働には、原則として25%以上の深夜割増賃金が必要になる。しかし、その割増部分を通常の時給に加えて最低賃金を満たしていると判断することはできない。
例えば、通常時給が1,200円で深夜割増が加わり、支給額が1,500円になったとしても、通常時給が1,280円を下回っている問題は解消されない。
残業代や深夜割増賃金は、最低賃金とは別に確認する必要がある。
月給制・日給制のアルバイトも時給換算が必要
最低賃金は時給制の人だけを対象にした制度ではない。
日給制なら1日の所定労働時間で割り、月給制なら1か月平均所定労働時間で割って比較する。
基本的な計算式は次のとおり。
| 給与形態 | 最低賃金の確認方法 |
|---|---|
| 時給制 | 時給が1,280円以上か |
| 日給制 | 対象となる日給÷1日の所定労働時間 |
| 月給制 | 対象となる月給÷月平均所定労働時間 |
| 出来高払制 | 対象となる賃金総額÷総労働時間 |
例えば、月給20万5,000円、月平均所定労働時間160時間なら、時給換算は1,281.25円となる。
このように、給与形態が違っても、時間額に換算して比較することが基本だ。
【最低賃金を下回る求人票の見分け方】応募前に確認したい5つのポイント
東京のアルバイト求人を探す際には、表示された時給だけで判断しないことが大切だ。
特に最低賃金が改定された直後は、古い求人情報が残っていたり、試用期間の条件が更新されていなかったりする可能性がある。
東京労働局は2026年度の改定に際し、最低賃金を下回る求人について注意を促している。ハローワークの求人票では、最低賃金以上に変更されるまで公開を中止する取り扱いも案内されている。
1. 時給1,280円未満の求人は理由を確認する
2026年10月1日以降の東京都内の一般的なアルバイト求人で、時給1,200円や1,250円と記載されていれば、まず確認が必要だ。
ただし、求人広告の掲載時期と実際の勤務開始日が異なる場合もある。
古い求人広告が更新されていない可能性もあるため、募集企業に現在の適用時給を確認することが望ましい。
2. 研修期間中だけ時給が低くないか
求人票では通常時給が大きく表示され、研修期間中の条件が小さく記載されている場合がある。
例えば、
- 通常時給:1,350円
- 研修期間:時給1,200円
- 研修期間:2か月
という条件だ。
通常時給だけを見ると最低賃金以上だが、研修中の賃金が原則の最低基準を下回っている。
応募前に、研修期間中の時給と適用期間を確認したい。
3. 固定残業代の金額と時間数が明示されているか
月給や給与総額が高くても、固定残業代の内訳が分からない求人には注意が必要だ。
確認したい項目は次の3つ。
- 固定残業代を除いた基本給はいくらか
- 固定残業代は何時間分でいくらか
- 超過した残業時間に対する追加支給があるか
厚生労働省の労務管理に関する案内でも、通常の賃金部分と固定残業代を判別できるようにすること、固定残業時間を超えた場合には追加の割増賃金を支払うことが示されている。
4. 交通費や各種手当を時給に足していないか
例えば、次のような求人を考えてみよう。
- 基本時給:1,250円
- 交通費:月10,000円
- その他手当:あり
交通費は最低賃金の計算対象にならない。
手当があるからといって、必ずしも最低賃金を満たしているとは限らない。対象となる賃金と対象外の賃金を分けて確認する必要がある。
5. 労働条件通知書と求人広告の内容が一致しているか
採用が決まったら、求人広告だけでなく、労働条件通知書や雇用契約書の内容も確認したい。
特に次の項目は重要だ。
- 基本時給または基本給
- 試用期間の有無と期間
- 研修中の給与条件
- 所定労働時間
- 残業の有無と割増賃金
- 固定残業代の金額と対象時間
- 交通費などの手当
- 賃金の締め日と支払日
採用担当者から口頭で説明された内容と、書面に記載された条件が異なる場合は、勤務開始前に確認しておこう。
【最低賃金を下回っていたら?】アルバイトが取るべき対応と相談先
実際に勤務を始めた後で、時給が1,280円を下回っていることに気付く場合もある。
その際、最初から退職を決める必要はない。まずは勤務実績と給与明細を整理し、会社に賃金の計算方法を確認することが重要だ。
最初に確認する資料
最低限、次の資料を手元に残しておきたい。
1. 求人広告のスクリーンショット
2. 労働条件通知書・雇用契約書
3. 給与明細
4. タイムカードや勤務記録
5. 会社との給与に関するやり取り
これらがあれば、契約上の時給と実際の支給額を比較しやすくなる。
会社に確認するときの伝え方
感情的に抗議するより、まずは計算の根拠を確認する形で問い合わせるとよい。
例えば、次のように伝えられる。
「東京都の最低賃金が2026年10月1日から1,280円に改定されたと確認しました。給与明細では時給が1,250円となっていますが、適用されている賃金条件と計算方法を確認させてください。」
会社側の計算ミスや求人情報の更新漏れであれば、確認後に修正される可能性もある。
相談先は東京労働局や労働基準監督署
会社に問い合わせても解決しない場合や、最低賃金を下回る賃金しか支払われない場合は、公的な相談窓口を利用できる。
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 東京労働局労働基準部賃金課 | 東京都最低賃金の制度・改定 |
| 管轄の労働基準監督署 | 最低賃金違反や未払い賃金 |
| 総合労働相談コーナー | 労働条件や職場のトラブル |
| ハローワーク | 求人票の賃金条件や記載内容 |
東京労働局の最低賃金に関する問い合わせ先は、労働基準部賃金課の03-3512-1614だ。
最低賃金法では、最低賃金を下回る賃金を労使双方が合意していたとしても、その部分は無効となり、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされる。
また、使用者には不足分を支払う義務があり、地域別最低賃金に違反した場合には、50万円以下の罰金が定められている。
【東京最低賃金バイト2026】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年11月現在、東京都のアルバイト最低時給はいくらですか?
A1:2026年10月1日から時給1,280円です。改定前の1,226円から54円引き上げられました。
Q2:高校生や大学生のアルバイトにも1,280円が適用されますか?
A2:原則として適用されます。学生だからという理由で最低賃金を下回る時給にすることはできません。
Q3:アルバイトの試用期間中は時給1,200円でも大丈夫ですか?
A3:原則として認められません。最低賃金の減額特例について労働局長の許可を受けた場合などを除き、試用期間中も1,280円以上が必要です。
Q4:研修期間中だけ時給を下げることはできますか?
A4:一般的な店舗研修や接客研修であれば、原則として最低賃金以上が必要です。研修中であることだけを理由に時給を下げることはできません。
Q5:交通費込みで時給1,280円なら問題ありませんか?
A5:問題がある可能性があります。通勤手当は最低賃金の計算対象外です。交通費を除いた対象賃金で判断してください。
Q6:固定残業代込みの月給が高ければ最低賃金を満たしますか?
A6:必ずしも満たすとは限りません。固定残業代を除いた最低賃金の対象賃金を所定労働時間で割って確認する必要があります。
Q7:最低賃金1,280円未満の求人を見つけたらどうすればよいですか?
A7:まず募集企業に現在の時給と適用条件を確認してください。実際に最低賃金を下回っている場合は、東京労働局や管轄の労働基準監督署に相談できます。
まとめ:東京で最低賃金を下回らないアルバイト選びの判断基準
2026年11月現在、東京都でアルバイトをする際の最低賃金は時給1,280円だ。2026年10月1日の改定によって、従来の1,226円から54円引き上げられた。
今回の改定で特に覚えておきたいのは、通常時給だけを確認しても、実際の賃金が適正かどうかは判断できないということだ。
試用期間や研修期間も原則として最低賃金が適用される。固定残業代や通勤手当を含めた給与総額で判断することもできない。
アルバイト選びでは、次の3点を基準にしたい。
- 時給の確認: 2026年10月1日以降の勤務は原則1,280円以上か。
- 契約条件の確認: 試用期間・研修期間・各種手当の内訳が明確か。
- 給与計算の確認: 固定残業代や交通費などを除外しても最低賃金を満たしているか。
最低賃金は、働く人が守られるための法的な基準であり、事業主との交渉によって放棄できるものではない。
時給の数字だけでなく、給与の内訳や契約条件まで確認することが、東京で安心してアルバイトを続けるための基本になる。