退職時に会社から「制服のクリーニング代は最後の給料から引きます」と言われた場合は、注意が必要です。
ここで関係するのが、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則です。
同条では、賃金は原則として通貨で労働者本人に直接、その全額を支払わなければならないと定めています。
つまり、会社が従業員に何らかの費用を請求できる場合でも、その金額を当然のように給与から差し引けるわけではありません。
クリーニング代を給与から天引きできる条件
労働基準法第24条では、法令に定めがある場合などを除き、賃金からの控除には労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定が必要とされています。
また、労使協定があることと、個々の従業員に対する費用請求がすべて適法であることは別問題です。
厚生労働省の労働条件に関する解説でも、賃金からの一方的な控除は原則として認められないと説明されています。
労働者本人の自由意思に基づく相殺合意が認められる場合もありますが、形式的に同意書へ署名しただけで、必ず有効になるわけではありません。
こんな給与天引きには注意
| 会社からの説明 | 確認すること |
|---|---|
| 最終給与から一律1,000円を引く | 控除の根拠と労使協定 |
| クリーニング代として実費を引く | 実際の料金と費用負担の取り決め |
| 制服を返さなければ5,000円を引く | 返却条件と賠償請求の法的根拠 |
| 制服を洗わなければ罰金を取る | 違約金・損害賠償予定の禁止との関係 |
| 退職する人は全員クリーニング代を負担する | 採用時の明示内容と就業規則 |
特に、労働基準法第16条では、労働契約の不履行について違約金を定めたり、あらかじめ損害賠償額を予定したりすることを禁止しています。
ただし、実際に発生したクリーニング費用の請求と、違約金としての定額徴収は区別する必要があります。
給料からクリーニング代を引かれそうになったときの対応
まずは感情的に対立するのではなく、次の内容を確認しましょう。
1. クリーニング代を本人が負担する規定はどこにあるのか。
2. 具体的な金額はいくらなのか。
3. 実際のクリーニング費用を示す領収書はあるのか。
4. 給与から控除するための労使協定があるのか。
5. 自分が控除に同意した経緯はどうなっているのか。
会社から説明を受けたら、メールなど記録が残る方法で回答を求めるのがおすすめです。
納得できないまま給与から差し引かれた場合も、給与明細と会社とのやり取りを保管してください。
【返却手順】退職時に制服をクリーニングして郵送する方法

退職が決まったら、制服の返却方法を早めに確認しておきましょう。
店舗まで直接返しに行く方法だけでなく、会社によっては郵送での返却を認めている場合もあります。
特に、すでに退職して店舗に行きづらい場合や、引っ越しによって職場から遠くなった場合は、郵送返却が便利です。
退職時に失敗しない制服返却の6ステップ
会社に返却方法を確認する
店舗への持参なのか、本社への郵送なのかを確認します。返却期限と担当者も聞いておきましょう。
制服の枚数と付属品を確認する
シャツ、ズボン、エプロン、帽子、ネクタイ、名札など、貸与されたものをリストアップします。
洗濯表示と返却条件を確認する
自宅洗濯が可能か、指定業者によるクリーニングが必要かを確認します。判断に迷ったら会社に問い合わせます。
指定された方法で洗濯する
家庭洗濯が認められていれば表示に従って洗い、十分に乾燥させます。専門クリーニングが必要なら、会社と費用負担を確認してから依頼します。
返却前に状態を撮影する
制服の全体写真と枚数が分かる写真を撮っておきます。クリーニングを依頼した場合は領収書も保管します。
返却して受領記録を残す
郵送なら追跡可能な配送方法を選び、発送伝票や配達完了記録を保管します。直接返却する場合も受領確認をお願いしましょう。
バイト退職後に制服を郵送するときの注意点
郵送で返却する場合は、次の4点を忘れないようにしてください。
- 送り先の住所と担当者名を確認する。
- 送料を誰が負担するか事前に決める。
- 制服が完全に乾いていることを確認して梱包する。
- 追跡番号と発送控えを保管する。
特に送料については、会社負担なのか本人負担なのかを確認しておくと、後から余計なトラブルを避けられます。
また、クリーニング済みの制服を郵送する場合は、仕上がり後にビニールカバーを外すべきかどうかも確認しましょう。湿気が残った状態で長時間密封すると、臭いやカビの原因になる可能性があります。
会社に確認するときに使えるメッセージ例
退職時のクリーニング方法や費用が不明な場合は、次のように連絡するとスムーズです。
お疲れさまです。
退職に伴う制服の返却について確認させてください。
制服は自宅で洗濯して返却しても問題ないでしょうか。それとも、クリーニング店での専門クリーニングが必要でしょうか。
また、クリーニング代と郵送で返却する場合の送料について、会社と本人のどちらが負担するのかも教えていただけますと幸いです。
返却方法や期限についても、あわせてご案内いただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
会社と話し合っても解決しない場合の相談先
制服のクリーニング代をめぐって話し合いがまとまらない場合は、労働問題の相談窓口を利用できます。
労働基準監督署
給与の一方的な控除や賃金未払いなど、労働基準法違反が疑われる場合に相談できます。
総合労働相談コーナー
退職時の費用負担や会社との話し合いなど、幅広い労働問題を相談できます。専門の相談員が面談・電話で対応し、相談は無料で予約も不要です。
厚生労働省の案内によると、総合労働相談コーナーでは必要に応じて助言・指導やあっせんも案内しています。法令違反の疑いがある場合は、労働基準監督署などの担当部署につなぐ仕組みもあります。
【よくある質問】バイト制服のクリーニングに関するFAQ
Q1:バイトの制服は毎回クリーニング店に出さないといけませんか?
A1:必ずしも必要ではありません。家庭洗濯が可能な制服なら、職場の規則に従って自宅で洗濯できます。ただし、飲食店など衛生管理が重視される職場では、制服の交換頻度や洗濯方法が指定されている場合があります。
Q2:退職時の制服は自宅で洗濯して返却しても大丈夫ですか?
A2:会社が家庭洗濯による返却を認めており、洗濯表示にも適合していれば可能です。指定業者によるクリーニングが返却条件になっている場合は、事前に会社へ確認してください。
Q3:バイトの制服クリーニング代を最後の給料から天引きされるのは違法ですか?
A3:一方的な給与天引きは、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に反する可能性があります。賃金控除に関する労使協定や、本人の自由意思に基づく合意などを確認する必要があります。
Q4:会社指定のクリーニング店を使う場合、費用は必ず自分で払うのでしょうか?
A4:必ずしも本人負担ではありません。就業規則や労働条件通知書、会社との取り決めを確認してください。指定業者を利用する義務と、その費用を誰が負担するかは別の問題です。
Q5:退職した後、制服を郵送で返却しても問題ありませんか?
A5:会社が郵送での返却を認めていれば可能です。送り先、返却期限、送料負担、必要なクリーニング方法を確認し、追跡できる配送方法を利用すると安心です。
まとめ:バイト制服クリーニングで損をしないための判断基準
バイト制服クリーニングで大切なのは、毎回クリーニング店に出すべきかどうかだけでなく、誰が費用を負担するのか、退職時にどのような状態で返却するのかを明確にしておくことです。
2026年11月時点で、覚えておきたい要点は次の5つです。
- 毎回のクリーニングは一律の法律上の義務ではない。
- 自宅洗濯が可能かどうかは、洗濯表示と職場のルールで判断する。
- 退職時に専門クリーニングが必要かは、貸与条件や就業規則を確認する。
- 従業員にクリーニング費用を負担させる場合は、労働条件の明示や就業規則の記載に関するルールを確認する。
- 給与からの一方的な天引きには、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則が関係する。
特に注意したいのは、会社から「制服はクリーニングして返してください」と言われたとき、その指示だけで費用まで本人負担と決まるわけではないことです。
クリーニングの必要性、指定業者の有無、費用負担、返却方法は、それぞれ分けて確認することが大切です。
退職時に余計な出費やトラブルを抱えないためにも、制服を返却する前に就業規則と労働条件通知書を確認し、分からないことは会社に書面で問い合わせておきましょう。