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【心理を解明】ぬいぐるみを抱いて寝るのはなぜ?大人と子どもで異なる安心感

新城 灯里 新城 灯里 • 更新: • 公開: • 読了約 17 分
目次

ぬいぐるみを抱いて眠る理由は、単に柔らかいものが好きだからではない。心理的な安心感、触覚による心地よさ、愛着、寝る前の習慣など、複数の要素が関係している。

特に注目したいのは、ぬいぐるみが自分の気持ちを落ち着かせるための対象になっている点だ。

1. 抱きしめることで安心感を得られる

人は不安や緊張を感じているとき、何かに触れたり、抱きしめたりすることで気持ちが落ち着くことがある。

ぬいぐるみには、次のような特徴がある。

- 柔らかい素材が触覚的な心地よさをもたらす
- 抱きしめる動作によって気持ちを落ち着かせやすい
- いつも同じ形や感触に触れられる
- 見慣れた表情や存在に親しみを感じられる
- 自分のペースで接することができる

人間関係のように相手の反応を気にする必要がなく、いつでも同じように接することができる点も特徴だ。

仕事や勉強で緊張した日、寂しさを感じる夜などにぬいぐるみを抱きしめたくなるのは、こうした感覚的・心理的な心地よさが関係している可能性がある。

2. 心理学でいう「移行対象」としての役割

子どもが特定の毛布やぬいぐるみを手放したがらない現象は、心理学における「移行対象(トランジショナル・オブジェクト)」という概念と関係する。

この概念を提唱したのは、イギリスの小児科医・精神分析家であるドナルド・ウィニコットだ。

1953年の論文では、乳幼児が毛布や柔らかい物などに愛着を持つ現象を取り上げている。

移行対象は、子どもが養育者との関係を保ちながら、自分自身で安心感を得る力を育てていく過程に関係するものと考えられている。

例えば、次のような行動が挙げられる。

- 寝るときに特定のぬいぐるみを探す
- 不安になったときにお気に入りの毛布を握る
- 外出先にもお気に入りの人形を持っていく
- ぬいぐるみを抱くと落ち着いて遊びや睡眠に移れる

大切なのは、ぬいぐるみが親や家族の代わりになるという単純な話ではないことだ。

子どもが自分の力で不安を和らげるための、身近な支えとして機能する場合がある。

3. 大人がぬいぐるみを抱いて寝る心理

大人の場合、ぬいぐるみへの愛着は子どもの移行対象とは少し異なる意味を持つ。

代表的な心理として、次の4つが考えられる。

① 寂しさを和らげたい

一人暮らしや生活環境の変化などによって、夜に孤独を感じる人もいる。ぬいぐるみを抱くことで、身近に親しみのある存在があるという感覚を得られることがある。

② ストレスを切り替えたい

仕事や人間関係で疲れたとき、ぬいぐるみを抱く行為が一日の終わりを意識する習慣になる。自分を休ませるためのスイッチとして使っている人もいる。

③ 思い出や愛着を大切にしたい

子どもの頃から持っているぬいぐるみには、家族や過去の経験、楽しかった記憶などが結び付いている場合がある。

④ 自分だけの安心できる空間を作りたい

誰にも気を使わず、自分の好きなものに囲まれて眠りたいという気持ちも、ぬいぐるみを抱く理由の一つだ。

大人がぬいぐるみを抱いて寝ることは、精神的な未熟さを意味するものではない。物への愛着は年齢を重ねても自然に存在する心理現象である。

【研究結果を検証】幼児96人の調査で分かった睡眠とぬいぐるみの関係

ぬいぐるみ抱いて寝る

ぬいぐるみを抱いて寝ることについて、特に注目したいのが2023年4月24日に学術誌『Scientific Reports』に掲載された日本の研究だ。

論文のタイトルは「Exploring role of sleep aids in sleep problems in preschool children」。

山口雅則氏、江戸川大学の石橋美香子講師らが参加した研究で、幼児が就寝時に毛布やぬいぐるみなどを使う理由と、睡眠問題との関係を調べている。

研究対象は40〜47か月の日本人幼児96人

研究では、40〜47か月の日本人幼児96人を対象に、睡眠時に使用するアイテムと心理的な特徴などを調べた。

調査項目には、子どものストレス、不安傾向、問題行動、気質などが含まれている。

ストレスについては質問紙だけでなく、唾液中のコルチゾールに関する測定も行われた。

研究で明らかになった要点は以下のとおりだ。

調査項目 研究内容・結果 研究対象 日本人幼児96人、40〜47か月 調査対象 毛布やぬいぐるみなどの睡眠補助アイテム 心理的特徴 使用する子どもは不安症状が見られやすい傾向 使用状況 養育者やきょうだいと一緒に寝る場合でも、アイテムを使用する子どもが多かった 睡眠問題との関係 不安傾向や気質を考慮すると、使用そのものに独自の関連性は認められなかった 研究上の解釈 養育者の代わりというより、不在などによる不安に対抗する役割が考えられる

睡眠問題が増えるわけではない?

この研究で重要なのは、ぬいぐるみなどを使う子どもに睡眠問題が多いという単純な結果ではなかったことだ。

実際、養育者の評価では、睡眠補助アイテムを使っている子どもに睡眠問題が多く見られる傾向もあった。

しかし、不安症状や気質などを考慮した分析では、アイテムの使用自体と睡眠問題との間に独自の関連性は確認されなかった。

つまり、睡眠に問題があるからぬいぐるみを使う、あるいはぬいぐるみを使うから睡眠問題が起こる、と単純には説明できない。

不安を感じやすい子どもが、自分の気持ちを落ち着かせるために使っている可能性があるのだ。

研究結果を過大評価してはいけない理由

この研究は、ぬいぐるみを抱くことが睡眠障害を治すと証明したものではない。

注意したい点は3つある。

- 対象は96人の日本人幼児であり、成人や乳児を対象とした研究ではない。
- 睡眠補助アイテムには毛布なども含まれ、ぬいぐるみだけの効果を切り分けた研究ではない。
- 睡眠問題は養育者の評価に基づいており、睡眠改善の因果関係を証明する実験ではない。

それでも、ぬいぐるみを使う習慣が幼児の睡眠問題に直結するわけではないという結果は、保護者にとって参考になる知見だ。

【大人の睡眠とストレス】ぬいぐるみを抱きしめる心理的効果はある?

大人がぬいぐるみを抱いて寝る場合、心理的な安心感と実際の睡眠の質は分けて考える必要がある。

抱きしめると落ち着くという本人の感覚は大切だが、それだけで睡眠時間が増える、深い睡眠が得られるとまでは証明されていない。

2024年発表の大学生45人を対象とした研究

大人の物への愛着とストレス反応については、2024年12月29日に学術誌『Healthcare』に掲載された研究も参考になる。

台湾などの研究者によるこの研究では、18〜22歳の大学生45人を対象に、愛着対象となる物と感情調整の関係を調査した。

実験では、ストレスを経験した後に、愛着対象に触れられるグループと、持っていても触れられないグループなどを比較した。

その結果、愛着対象に触れられるグループでは、回復段階における心拍変動の指標であるSDNNが高かった。一方、自己申告による感情調整能力にはグループ間の差が確認されなかった。

この研究は、触覚的な接触がストレスからの生理的な回復に関係する可能性を示している。

ただし、対象は大学生であり、ぬいぐるみを抱いて眠る実験でもない。睡眠への直接的な効果を証明した研究ではない点には注意が必要だ。

ぬいぐるみへの愛着と依存はどう違う?

ぬいぐるみを大切にしていることと、ぬいぐるみに依存していることは同じではない。

2021年の『Current Opinion in Psychology』に掲載された物への愛着に関するレビューでは、成人にも正常な範囲の物への愛着が存在することが説明されている。

お気に入りの服や思い出の品を大切にすることと同様に、ぬいぐるみに特別な感情を抱くこと自体は、直ちに心理的な問題を意味しない。

判断するときは、ぬいぐるみの存在そのものより、日常生活への影響を見ることが大切だ。

状態 判断の目安
寝るときだけ抱く 自然な愛着の範囲
疲れたときに抱く 気持ちを落ち着かせる習慣
外出先にも持っていく 本人の生活に支障がなければ問題とは限らない
ないと強い不安を感じる 不安の程度や生活への影響を確認
人間関係や仕事に支障が出る 心理的な負担について専門家に相談する選択肢がある

特に、ぬいぐるみがないと眠れないことだけで、依存症や精神疾患と判断することはできない。

一方、強い不安によって生活が制限されているなら、ぬいぐるみを無理に手放すのではなく、不安の背景を考えることが大切だ。

【よくないって本当?】子どもの年齢別に考える睡眠時のぬいぐるみ使用

「ぬいぐるみを抱いて寝るのはよくない」という意見には、心理面と安全面の話が混在している。

大人が自分のベッドでぬいぐるみを抱いて眠ることと、赤ちゃんの寝床にぬいぐるみを置くことは、まったく別の問題だ。

1歳未満の赤ちゃんは寝床にぬいぐるみを置かない

重要な安全上の注意

こども家庭庁は、1歳未満の赤ちゃんの安全な睡眠環境について、寝床にぬいぐるみやタオルなどを置かないよう呼びかけている。

柔らかい物が顔を覆うと、鼻や口が塞がれて窒息する危険があるためだ。

2026年2月13日にも、こども家庭庁は乳幼児の就寝中の窒息事故について注意喚起を行っている。

基本となる対策は次のとおりだ。

- 1歳になるまでは、寝かせるときはあお向けにする
- 硬めで平坦な寝具を使用する
- 寝床にぬいぐるみやタオルを置かない
- 掛け布団の代わりにスリーパーなどで温度を調整する
- 赤ちゃん専用の寝床を使用する

これは、ぬいぐるみが心理的に悪いからではなく、乳児の身体的な安全を守るための対策である。

2. 幼児期は安心できる習慣と安全性を両立する

幼児期になると、特定のぬいぐるみを持ち歩いたり、寝る前に抱きしめたりする行動が見られることがある。

先述の96人を対象とした研究も、40〜47か月の幼児が睡眠時に毛布やぬいぐるみを利用する実態を調べたものだ。

子どもにとってお気に入りのぬいぐるみは、気持ちを切り替えるきっかけになることがある。

ただし、年齢が上がればすべて安全というわけではない。大きすぎる物、部品が外れやすい物、ひもが付いた物などは避け、寝返りや身体の動きを妨げないようにする。

3. 大人は寝姿勢と衛生面に気を付ける

大人の場合、ぬいぐるみを抱いて寝ること自体に一律の禁止事項はない。

ただし、次のような使い方には注意したい。

- 大きすぎて寝返りを妨げる
- 顔の近くに置き、呼吸を妨げる
- 汗や皮脂が付いたまま長期間洗わない
- 湿った状態でベッドに置き続ける
- アレルギー症状が出ているのに使い続ける

寝心地を損なわず、清潔に保てるサイズと素材を選ぶことがポイントだ。

【衛生対策】ぬいぐるみのダニ対策と正しい洗濯方法

毎晩抱きしめるぬいぐるみは、寝具と同じように衛生管理を意識したい。

特に気になるのが、ダニ、ホコリ、皮脂、汗などの蓄積だ。

名古屋市のダニ対策に関する公式情報では、ダニが増えやすい場所として寝具やぬいぐるみなどの布製品が挙げられている。

ダニが増えやすい環境は、高温多湿で、フケやアカなどの餌があり、隠れる場所があることだ。

ぬいぐるみのダニ対策5つ

① 定期的に表面のホコリを取り除く

洋服ブラシなどで毛並みに沿ってブラッシングし、表面のホコリを落とす。

② 洗えるものは洗濯する

洗濯表示を確認し、水洗い可能なものは適切な方法で洗う。水洗いはダニアレルゲンを取り除くためにも役立つ。

③ 洗えないものは掃除機を使う

名古屋市は、水洗いできないぬいぐるみについて、掃除機の隙間ノズルを使った掃除を案内している。

④ 風通しのよい場所で乾燥させる

湿気を残さないようにする。洗濯後は内部の詰め物まで十分に乾かす。

⑤ 寝室の湿度にも気を配る

換気や除湿を行い、寝具やぬいぐるみが湿ったままにならないようにする。

ぬいぐるみの正しい洗濯方法


手洗いができる場合

中性洗剤を使用し、優しく押し洗いする方法が基本。毛並みや形を崩さないようにする。



洗濯機で洗える場合

洗濯ネットに入れ、おしゃれ着コースや手洗いコースなどを利用する。製品の洗濯表示を優先する。



乾燥させる場合

形を整えて、風通しのよい日陰で十分に乾かす。内部に湿気を残さないことが大切。

ライオン株式会社の洗濯マイスターによる案内では、家庭で洗う場合の手順として、洗濯表示の確認、洗濯ネットの使用、タオルに包んだ短時間の脱水、風通しのよい場所での陰干しなどが紹介されている。

洗濯するときに気を付けたいポイント

1. 洗濯表示を確認する: 水洗い不可の製品は無理に洗わない。
2. 付属品を外す: リボンや取り外せるパーツは外しておく。
3. 強く絞らない: 型崩れや中綿の偏りを防ぐ。
4. すすぎを十分に行う: 洗剤が残らないようにする。
5. 完全に乾燥させる: 内部の湿気や生乾き臭を防ぐ。

特に注意したいのは、音声装置や電池などが入ったぬいぐるみだ。水に浸すと故障する可能性があるため、製品の説明書に従って手入れする必要がある。

洗濯できない場合は、表面を固く絞った布で拭き、十分に乾燥させる方法もある。

なお、熱湯や強い薬剤による自己流の消毒は、素材や接着部分を傷める可能性がある。ダニ対策と製品の保護を両立させることが大切だ。

【ぬいぐるみを抱いて寝る】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:大人になってもぬいぐるみを抱いて寝るのはおかしい?

A1:おかしくない。ぬいぐるみへの愛着は大人にも見られる自然な心理現象であり、安心感や思い出、触覚的な心地よさを求めている場合がある。日常生活に支障がなければ、無理にやめる必要はない。

Q2:ぬいぐるみを抱いて寝るとストレスが軽減される?

A2:抱きしめることで安心感を得たり、気持ちを落ち着かせたりする人はいる。成人の愛着対象への接触とストレス反応を調べた研究もある。ただし、ぬいぐるみを抱くことで睡眠の質やストレスが必ず改善するという科学的な結論は出ていない。

Q3:子どもがぬいぐるみなしでは寝られない場合、取り上げるべき?

A3:無理に取り上げる必要はない。幼児にとって、ぬいぐるみは不安を和らげるための安心材料になることがある。ただし、1歳未満の赤ちゃんの寝床には置かないこと。年齢や身体の発達に合わせて安全性を優先しよう。

【プロの結論】ぬいぐるみを抱いて寝る習慣は安心感と安全性のバランスが大切

ぬいぐるみを抱いて寝る行為には、心理的な安心感、触覚的な心地よさ、思い出への愛着など、さまざまな意味がある。大人が続けていても、それだけで幼稚さや精神的な問題を示すわけではない。

特に重要なのは、2023年の日本人幼児96人を対象とした研究で、睡眠補助アイテムの使用自体と睡眠問題との独自の関連性が確認されなかったことだ。この結果は、ぬいぐるみを使う習慣を必要以上に否定しなくてもよいことを考える材料になる。

一方、研究対象は幼児であり、乳児の安全性を保証するものではない。1歳未満の赤ちゃんの寝床にはぬいぐるみを置かず、大人や年長児の場合も衛生管理と寝姿勢に配慮したい。

判断基準はシンプルだ。自分にとって心地よく、日常生活に支障がなく、安全かつ清潔に使えているなら、ぬいぐるみを抱いて眠る習慣を大切にしてよい。

ぬいぐるみは、誰かに評価されるためのものではない。忙しい一日の終わりに、自分が安心して休むための小さな存在として、上手に付き合っていくことが大切だ。

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トレンドリサーチャー 新城 灯里
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