ミッフィーの鼻と口の正体については、日本のミッフィー情報サイト「dickbruna.jp」の公式ブログが、2013年3月19日に明確な答えを紹介しています。
記事のタイトルは「ミッフィーのお顔にあるバッテンは?」。その答えは、口だけでも鼻だけでもなく、両方を表現したものです。
答えは、口と鼻。
ミッフィーの顔にあるバッテンは、口だけではなく、口と鼻の両方を表しています。
公式ブログでは、実際のウサギの顔写真も掲載し、鼻と口の部分を見比べると、バッテンのように見えることを説明しています。つまり、ミッフィーの顔は、実際のウサギの特徴をそのまま細かく写し取ったものではなく、特徴的な部分を選び出して簡潔な線に置き換えたものなのです。
なぜ鼻と口を別々に描かなかったのか
理由は、ディック・ブルーナが大切にしていた「シンプルに描く」という考え方にあります。
鼻を小さな点、口を別の線として描けば、より写実的なウサギの顔に近づきます。しかし、ブルーナは鼻と口をまとめて一つの記号のように表現しました。
その結果、目は2つの黒い点、鼻と口は一つのバッテンという、極めて少ないパーツでウサギの顔が成立しています。
ここで大切なのは、「×」が単なる省略ではないことです。鼻と口という別々の身体的特徴を、一つの視覚表現にまとめたデザイン上の工夫なのです。
そのため、初めて公式解説を知った人がミッフィーの顔を見直すと、今まで口だと思っていた部分が、鼻と口の組み合わせとして見えてきます。
【ウサギの観察から誕生】ディック・ブルーナが鼻と口を×にした理由

ミッフィーの顔を理解するには、作者ディック・ブルーナがどのような経験からウサギを描くようになったのかを知る必要があります。
講談社のWEBげんきが2022年6月21日に掲載した解説では、ブルーナが子どもの頃から家の周囲にいた野生のウサギと遊び、その姿をよく観察していたことが紹介されています。
単にウサギらしいキャラクターを描こうとしたのではありません。実際の動物を観察しながら、ウサギとして認識できる特徴を、できる限りシンプルな形にまとめようとしていたのです。
実際のウサギの鼻と口はどうなっている?
ウサギの顔には、鼻の下から上唇にかけて特徴的な構造があります。
ウサギの上唇は縦に分かれており、左右に動かせる仕組みになっています。鼻の下にある唇の割れ目と、鼻周辺の線が組み合わさるため、正面から見るとアルファベットのYに似た形にも見えます。
うさぎ専門医の解説を掲載した雑誌『CREA』の記事でも、この顔の中央部分を「Yの字」として紹介しています。上部が鼻、下部が左右に分かれた上唇に当たります。
この構造を知ってからミッフィーの顔を見ると、ブルーナが鼻と口を一体化して描いた理由が理解しやすくなります。
写実的なウサギではなく、ブルーナ独自のウサギへ
興味深いのは、ブルーナ自身が、本物のウサギとは異なる形にしたいと考えていたことです。
講談社の記事では、ブルーナのインタビューブック『ミッフィーからの贈り物 ブルーナさんがはじめて語る人生と作品のひみつ』から、次の考えが紹介されています。
「うさぎとはわかるのだけど、本物のうさぎとはまったくちがう形にしたいと思いました。」
— ディック・ブルーナのインタビューより(講談社掲載記事からの抜粋)
この発想が、ミッフィーのデザインを理解するうえで重要です。
実際のウサギの特徴を観察することと、実物そっくりに描くことは同じではありません。ブルーナは観察した特徴を自分なりに整理し、独自のキャラクターとして再構成しました。
つまり、ミッフィーの「×」は、動物の身体的特徴とグラフィックデザインの発想が結び付いて生まれた表現なのです。
【両親と祖父母の違い】ミッフィーの口元に線が一本増える意味
ミッフィーの絵本を注意深く見ると、もう一つ不思議な点に気付きます。
ミッフィー本人の口元は「×」なのに、父親や母親、祖父母の口元には、横線が一本加わっているのです。そのため、大人の顔は「*」のような形に見えます。
これはキャラクターごとに適当に変えたものではありません。大人であることを示す、明確なデザイン上の意味があります。
2020年6月10日のオリコンニュースでは、ブルーナ・ジャパンの広報担当者がこの違いについて説明しています。
「その横線1本は『しわ』を表しています。ブルーナさんにとって『しわ』は大人としての印だそうです。」
つまり、ミッフィーの両親や祖父母に加わる線は、ひげでも口ひげでもなく、年齢を示すしわなのです。
ミッフィー一家の口元を比較
この比較から分かるのは、ブルーナが顔のわずかな線の違いによって、キャラクターの年齢や立場を表現していたことです。
なぜ一本の線だけで大人に見えるのか
通常、キャラクターの年齢を描き分けるには、体格や顔の輪郭、髪型、目元など、複数の要素を変える方法があります。
しかし、ミッフィーの世界では、基本的な顔の構造を維持したまま、一本の線を追加することで大人らしさを表現しています。
この方法には、キャラクターの統一感を保ちながら、親子や世代の違いを視覚的に伝えられる利点があります。
子ども向けの絵本では、複雑な説明を加えなくても、登場人物の違いが直感的に伝わることが大切です。ミッフィー一家の口元は、その考え方を象徴するデザインといえます。
【ディック・ブルーナのデザイン哲学】ミッフィーの顔が変化してきた経緯
ミッフィーの「×」だけでなく、顔全体のデザインにもブルーナの考え方が反映されています。
オランダの公式ミッフィー情報サイトによると、ブルーナが初めてミッフィーを描いたのは1955年です。海辺の町エグモント・アーン・ゼーで休暇を過ごしていた際、庭を走り回るウサギを見たことがきっかけでした。長男シークに寝る前のお話としてウサギの物語を聞かせたことから、キャラクターが生まれました。
1955年から現在のミッフィーになるまで
誕生当初のミッフィーは、現在の姿とは少し異なっていました。
公式サイトによれば、初期のミッフィーは、耳が垂れたぬいぐるみのような姿でした。その後、絵本の判型やイラストの表現方法が変わり、1963年以降に現在よく知られている姿へと近づいていきます。
さらに1979年の『miffy's dream(うさこちゃんのゆめ)』以降は、耳や顔が少し丸みを帯び、全体のバランスも整えられました。2001年の『miffy the ghost(うさこちゃんおばけになる)』では頭と体の比率が少し変わり、幼い印象も強まりました。
ブルーナが追求した「LESS IS MORE」
ミッフィーの顔を語る際に欠かせないのが、ブルーナのデザイン哲学です。
公式ミッフィーサイトの人物紹介では、ブルーナの作品の特徴として、余計なものを取り除き、少ない要素で物語を伝える手法が紹介されています。
例えば、ミッフィーに涙を一滴加えるだけで、悲しんでいることが伝わります。目や口のわずかな変化でも、喜びや悲しみ、好奇心などを表現できます。
つまり、ミッフィーの顔は、表情を豊かにするために線を増やすのではなく、必要な線を厳選することで感情を伝える仕組みになっているのです。
2025年の公式ブログが明かした制作工程
2026年の現在、改めて注目したいのが、日本のミッフィー情報サイトが2025年12月16日に公開した「紙と、ブルーナさん」という記事です。
この公式ブログでは、ブルーナがどのような手順でミッフィーのイラストを制作していたのかが詳しく紹介されています。
制作工程は、鉛筆による下書きから始まります。トレーシングペーパーに形を描き、厚紙に線を移し、筆でゆっくりと輪郭を描いていきます。その後、透明なフィルムに線画を焼き付け、ブルーナカラーの色紙を切り分けて重ねることで作品を完成させます。
特に興味深いのは、公式ブログが紹介した次の3点です。
- ミッフィーを描くときは、必ず耳から描き始めていた。
- 耳の長さや目の位置、バッテンの角度が少し違うだけでも印象が変わる。
- 納得できるまで100枚以上描き直すこともあった。
シンプルな顔だからこそ、一本一本の線の位置や角度が重要だったことが分かります。
2025年のこの制作工程の紹介は、ミッフィーの「×」が単なる簡単な落書きではなく、緻密な調整を経て完成したデザインであることを示しています。
【絵本で検証】ミッフィーが口を開けている場面は存在する?
「ミッフィーの口は鼻と一体化した×」という説明を知ると、次に気になるのが、ミッフィーは本当に口を開けることがあるのかという疑問です。
実は、あります。
2013年3月19日の公式ブログでは、ミッフィーの口が開いている絵本の場面も紹介されています。代表的なのが『うさこちゃんがっこうへいく』です。
『うさこちゃんがっこうへいく』では歌う姿が描かれる
この作品は、オランダ語の原題を『nijntje op school』といい、日本のミッフィー情報サイトの作品一覧では1984年の作品として掲載されています。
公式ブログが取り上げた場面では、ミッフィーが口を開けて歌っています。
「お口を開けて、歌ってる。るるるー」
— 日本のミッフィー情報サイト「みみよりブログ」
普段の「×」とは異なる口元が描かれているため、ミッフィーの表情表現を知るうえで興味深い場面です。
『うさこちゃんおばけになる』では驚いた表情も
もう一つ、公式ブログで紹介されているのが『うさこちゃんおばけになる』です。
こちらは2001年の作品で、ミッフィーがおばけに変装し、友達を驚かせる場面があります。
この場面では、驚いた友達たちの口が丸い形になっています。ここで注意したいのは、丸い口として紹介されているのはミッフィー本人ではなく、驚いた友達たちだという点です。
普段はシンプルな線で表情を描くブルーナですが、場面に応じて口の形を変えることで、驚きという感情を視覚的に表現しています。
口を開けた絵本を探すならこの2作品
『うさこちゃんがっこうへいく』
原題:nijntje op school/1984年
ミッフィーが学校で歌う場面があり、口を開けた表情を確認できる作品。今回の疑問を解決するなら、まず読みたい一冊です。
『うさこちゃんおばけになる』
原題:het spook nijntje/2001年
おばけに変装したミッフィーと、驚く友達たちの表情が見どころ。丸い口による感情表現にも注目できます。
いずれも日本のミッフィー情報サイトの作品一覧と、2013年の公式ブログで確認できる作品です。
【表情の描き方】ミッフィーは少ない線で喜怒哀楽を表現する
ミッフィーの顔の特徴は、鼻と口を一体化した「×」だけではありません。目の位置や口の形、涙など、限られたパーツを使って感情を伝えることにも大きな特徴があります。
基本は正面を向いた顔
ミッフィーは、基本的に読者の方を向いて描かれています。
オリコンニュースが2020年にブルーナ・ジャパンの広報担当者へ行った取材によれば、正面を向くデザインには、絵本を読み聞かせるときの子どもたちの目線が関係しています。
ブルーナは、絵本を読む子どもたちに対して、常にまっすぐ向き合うことを大切にしていました。その考え方が、正面を向いたミッフィーの姿に反映されています。
目と口の小さな変化が感情を伝える
ミッフィーの表情は、一見するといつも同じように見えます。しかし、絵本をよく見ると、目や口、涙などのわずかな違いによって感情が描き分けられています。
公式ミッフィーサイトの解説でも、涙を一滴加えるだけで悲しみが伝わり、目や口の小さな変化によって喜びや好奇心などが表現されると説明されています。
この仕組みは、子どもが絵を見ただけで登場人物の気持ちを理解できるという点でも優れています。
文字を読まなくても、表情と場面の組み合わせから物語を理解できる。ミッフィーの顔には、言葉に頼りすぎない絵本ならではの表現力が詰まっています。
【プロの結論】ミッフィーの「×」はシンプルさと感情表現を両立するデザイン
ミッフィーの鼻と口をめぐる疑問を整理すると、重要なのは次の3つです。
第一に、「×」は口だけではなく鼻と口の両方を表していること。 実際のウサギの顔を観察したブルーナが、その特徴を一つの記号にまとめました。
第二に、両親や祖父母の口元に加わる線は、年齢を示すしわであること。 一本の線を追加するだけで、子どもと大人の違いを表現しています。
第三に、「×」は固定された表情ではないこと。 歌う場面では口を開け、驚く場面では丸い口を使うなど、物語の展開に合わせて表現を変えています。
デザインを評価する際の要点は、線の少なさだけを見ることではありません。少ない線でどれだけ多くの情報を伝えられるか、という視点が重要です。
ミッフィーの顔は、見た目のかわいらしさと、子どもにも伝わる視覚的な分かりやすさを両立させたデザインなのです。
ミッフィーの鼻と口に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ミッフィーの顔の「×」は鼻ですか、口ですか?
A:鼻と口の両方です。作者ディック・ブルーナがウサギの顔を観察し、鼻から口にかけての特徴を一つのバッテンとして表現しました。2013年の日本の公式ブログでも明確に解説されています。
Q2:ミッフィーの両親の口が「*」のように見えるのはなぜ?
A:「×」に横線が一本追加されているためです。この線はしわを意味し、大人であることを表現しています。父親だけでなく母親や祖父母にも同様の表現が使われています。
Q3:ミッフィーが口を開けている絵本はありますか?
A:あります。代表例は『うさこちゃんがっこうへいく』です。公式ブログでは、ミッフィーが口を開けて歌っている場面が紹介されています。
Q4:ミッフィーの口元は、すべての絵本で「×」なのですか?
A:基本形は「×」ですが、歌う場面などでは口を開けた表現も登場します。物語の状況や感情に合わせて、口元が変化することがあります。
Q5:ミッフィーが誕生したのは何年ですか?
A:1955年です。オランダの公式ミッフィー情報サイトでは、ディック・ブルーナが1955年に初めてミッフィーを描いたと紹介しています。日本の公式情報サイトでは、6月21日が誕生日として紹介されています。
Q6:ミッフィーの顔はなぜいつも正面を向いているのですか?
A:絵本を読む子どもたちと正面から目を合わせ、まっすぐ向き合うためです。読み聞かせをする際の子どもたちの視線が、正面向きのデザインにつながったとブルーナ・ジャパンの広報担当者が説明しています。
まとめ:ミッフィーの「×」にはディック・ブルーナの観察力と美学が詰まっている
ミッフィーの鼻と口に描かれた「×」は、単なる口の記号ではありません。実際のウサギを観察したディック・ブルーナが、鼻と口の特徴を一つのシンプルな線にまとめたものです。
両親や祖父母の口元に一本の線が加わるのは、年齢を表すしわのため。加えて、『うさこちゃんがっこうへいく』では口を開けて歌う姿も描かれており、ミッフィーの表情は決して一種類ではありません。
1955年に誕生したミッフィーは、2026年に71周年を迎えました。作者のディック・ブルーナは2017年に89歳で亡くなり、新しいミッフィーの絵本は公式サイトによると2011年の作品が最後です。それでも、絵本やキャラクターのデザインは今も世界中で親しまれています。
次にミッフィーの絵本やグッズを目にしたときは、ぜひ顔の「×」をじっくり観察してみてください。鼻と口が一体化した線、両親の顔に加わったしわ、そして場面によって変わる表情。それぞれの小さな違いから、ブルーナがどれほど丁寧にキャラクターを描いていたのかが見えてきます。
たった二つの目と一本のバッテン。そのシンプルな顔こそが、ミッフィーが長く愛され続ける理由の一つなのです。
主な参考資料
- 日本のミッフィー情報サイト「ミッフィーのお顔にあるバッテンは?」(2013年3月19日)
- 日本のミッフィー情報サイト「紙と、ブルーナさん」(2025年12月16日)
- オリコンニュース「ミッフィーはなぜ口が『×』なのか…65周年でもなお愛される秘密」(2020年6月10日)
- 講談社 WEBげんき「6月21日はミッフィーの誕生日! ディック・ブルーナが込めた4つの秘密」(2022年6月21日)
- 公式ミッフィー情報サイト「About Miffy」「Biography」「His Books」
- 『CREA』うさぎ専門医によるウサギの顔の構造解説(2023年5月17日)