「一日警察署長に就任しました」というニュースや、芸能人が警察官の制服姿で敬礼するイベントを見て、「実際に警察署を指揮するの?」「本物の警察署長と何が違うの?」と疑問に思った人も多いのと考えられます。
一日警察署長は、警察署長の職務を一日だけ代行する制度ではありません。警察の広報活動に協力し、交通事故や犯罪を防ぐために市民へ注意を呼びかける啓発活動の一環です。2026年には警視庁管内でウエンツ瑛士さんやマツコ・デラックスさんも就任し、それぞれ交通安全と特殊詐欺防止をテーマに活動しました。
この記事の重要ポイントまとめ

【制度の正体】一日警察署長は本当に警察署を指揮するのか?
一日警察署長は警察の広報活動に協力する役割
一日警察署長とは、警察署が実施する交通安全運動や地域安全活動などに際し、著名人や地域で活動する人物に署長役を委嘱する広報・啓発活動の呼称です。
2026年11月1日付のオリコンニュースは、警視庁への取材を通じて、一日警察署長の役割が大きく2つに分かれることを紹介しました。ひとつは交通安全、もうひとつは地域安全です。
警視庁の担当者は、著名人に依頼する理由について、各種広報活動の効果を高めるためと説明しています。
つまり、一日警察署長の中心的な仕事は、警察が伝えたい安全上のメッセージを市民に届けることです。警察官として捜査や警備の実務を担当するわけではありません。
本物の警察署長との違いは「職務上の権限」
一日警察署長と、警察組織に所属する正式な警察署長は、名称に共通点があっても立場が異なります。
正式な警察署長は、警察組織の指揮監督系統に属し、管轄警察署の運営や警察業務を統括する責任者です。一方、一日警察署長は、特定の広報イベントなどにおいて委嘱された役割を担います。
その違いは警察法第53条からも理解できます。同条は、警察署長が管轄区域内の警察事務を処理し、所属する警察職員を指揮監督することを定めています。
この法的な職務を担う正式な署長と、広報活動に協力する一日警察署長は、同じ立場ではありません。
制服を着て敬礼したり、イベント開始時に号令をかけたりしても、それによって警察官への指揮権や捜査権限が与えられるわけではないのです。
一日警察署長に逮捕権や捜査権はある?
一日警察署長という委嘱そのものによって、逮捕権、捜査指揮権、交通違反の取り締まり権限などが付与されることはありません。
実際の警察活動は、法律や警察組織の権限に基づいて警察官が担当します。一日警察署長は、警察官と一緒に安全を呼びかける立場です。
イベントで「出動!」と号令をかける演出があっても、それは広報イベントの進行上の演出であり、実際の警察活動に対する指揮命令とは区別されます。
「一日だけ本物の署長になる」という理解は正確ではなく、「一日警察署長という立場で警察の広報活動に参加する」と理解するのが適切です。
【仕事内容を解説】交通安全と地域安全、2つの役割とは?
一日警察署長の仕事内容は、委嘱する警察署や開催時期、キャンペーンの目的によって変わります。警視庁への取材で示された2つの役割を整理すると、活動の方向性が見えてきます。
1.交通安全を呼びかける活動
交通安全を目的とした一日警察署長は、交通事故を減らすための啓発活動に参加します。
代表的なテーマは次のとおりです。
- 自転車乗車時のヘルメット着用
- 交通ルールと道路標識の確認
- 歩行者や自転車利用者の事故防止
- 反射材の着用促進
- 自動車の安全運転や交通マナーの周知
特に、全国交通安全運動の時期には、地域住民が交通ルールを再確認する機会としてイベントが開催されます。
芸能人が交通安全クイズに参加したり、子どもたちと一緒に交通ルールを学んだりすることで、普段は警察の広報に関心を持たない人にも情報が届きやすくなります。
2.地域安全・特殊詐欺防止を呼びかける活動
もうひとつの柱が地域安全です。
こちらは交通事故ではなく、犯罪被害を未然に防ぐことが目的です。特に特殊詐欺、闇バイトに関連する犯罪、地域の防犯意識向上などが主なテーマになります。
活動例としては、以下が挙げられます。
- 電話やメールを使った特殊詐欺への注意喚起
- 警察官を装う詐欺への対策
- SNSを通じた闇バイト募集への注意
- 高齢者や若年層への防犯情報の周知
- 防犯アプリや警察への相談窓口の紹介
特殊詐欺は高齢者だけが狙われるものではありません。若い世代も、SNSや電話を利用した詐欺の被害に遭う可能性があります。
そのため、一日警察署長のトークショーや防犯イベントでは、幅広い年齢層に理解しやすい言葉で危険な手口を説明することが大切になります。
【2026年最新】ウエンツ瑛士・マツコら一日警察署長の就任事例
2026年は、警視庁管内でも著名人による一日警察署長の活動が相次ぎました。
特に注目されたのが、9月のウエンツ瑛士さんと10月のマツコ・デラックスさんです。両者の活動は、交通安全と地域安全という異なる目的を象徴する事例になりました。
ウエンツ瑛士が警視庁神田署の一日警察署長に就任
2026年9月13日、タレントのウエンツ瑛士さんが警視庁神田警察署の一日警察署長を務めました。
会場となったのは、東京都千代田区の日本大学経済学部7号館です。9月21日から始まる秋の全国交通安全運動を前に開催された「神田交通安全のつどい」に参加しました。
警視庁神田署の公式イベント案内によると、ウエンツさんは一日警察署長として交通安全宣言を行いました。
イベントでは道路標識や自転車の正しい走行方法などをクイズ形式で学ぶ企画も実施され、報道によると地元住民ら約200人が参加しました。
ウエンツさん自身も、道路標識や交通ルールについて改めて学び直す必要性を感じたと話しており、イベントは単なる制服姿のお披露目にとどまりませんでした。
マツコ・デラックスが渋谷署で特殊詐欺防止を呼びかける
2026年10月7日には、マツコ・デラックスさんが警視庁渋谷警察署の一日警察署長に就任しました。
会場は東京都渋谷区の東京ウィメンズプラザホール。全国地域安全運動に先駆けたキャンペーンで、特殊詐欺や闇バイトなどの犯罪被害防止がテーマでした。
マツコさんは警察官の制服姿で登場し、警察署員とともに防犯トークショーに参加しました。
TBS NEWS DIGなどの報道によると、マツコさんが一日警察署長を務めたのは今回が初めてです。
特殊詐欺については、著名人を装った偽メールが自身にも届いた経験に触れ、相手が誰なのか分からない連絡には慎重に対応するよう呼びかけました。
このイベントが開催された背景には、深刻な被害状況もあります。
警視庁の2026年9月末の発表では、東京都内の特殊詐欺被害は認知件数5,624件、被害総額は約543億6,000万円に達していました。いずれも暫定値です。
マツコさんのように幅広い世代に知られる人物が防犯を呼びかけることには、警察の注意喚起をニュースや日常会話に広げる効果が期待されます。
2026年の主な就任事例・歴代芸能人一覧
以下は、2026年の警視庁管内の事例と、過去に一日警察署長を務めた著名人を整理したものです。
| 時期 | 人物・警察署 | 主な活動・テーマ |
|---|---|---|
| 2026年9月12日 | 井端弘和・日野署 | 交通安全 |
| 2026年9月13日 | ウエンツ瑛士・神田署 | 交通安全、交通ルールの啓発 |
| 2026年10月7日 | マツコ・デラックス・渋谷署 | 地域安全、特殊詐欺防止 |
| 2026年10月17日 | 庄司智春・蒲田署 | 地域安全、詐欺被害防止 |
| 2026年10月 | ヒャダイン | 一日警察署長として活動 |
| 2026年10月 | 上谷沙弥 | 一日警察署長として防犯啓発 |
| 2026年11月14日(予定) | 高城れに・立川署 | 防災クイズ、地域参加型イベント |
| 2026年11月17日(予定) | ななまがり・葛飾署 | 暴力団排除、闇バイト防止 |
※2026年11月5日時点。11月の2件は警視庁の公式イベント案内に掲載された開催予定です。10月の就任者は、オリコンニュースが10月30日に確認した管内8人のうち、報道で名前が確認できる人物を掲載しています。
過去の就任者としては、次のような著名人も知られています。
- 舘ひろし
- 松平健
- 黒谷友香
- 中村静香
- 広瀬アリス
- 田村真子
- 本田紗来
これらの人物の就任事例は、オリコンニュースの過去の報道でも紹介されています。
注目したいのは、就任する人物の職業が俳優やタレントだけに限定されていないことです。元プロ野球選手、プロレスラー、音楽家、お笑い芸人など、さまざまな分野で活動する人物が起用されています。
また、11月14日に予定されている立川署のイベントでは、高城れにさんが防災クイズなどに参加する予定です。17日の葛飾署のイベントでは、ななまがりによる闇バイト防止演劇やトークショーが予定されています。
つまり、一日警察署長の企画は交通安全や特殊詐欺対策だけに固定されず、地域で取り組むべき課題に応じて内容が組み立てられています。
【なぜ芸能人が選ばれる?】一日警察署長の委嘱理由と広報効果
警察が重視するのは知名度と情報発信力
芸能人が一日警察署長に起用される最大の理由は、警察の広報活動を多くの人に届けるためです。
警視庁への取材を掲載したオリコンニュースでは、担当者が著名人への依頼について、広報効果を高める目的があると説明しています。
警察が公式に発信する交通安全情報や防犯情報は、必要な情報であっても、普段から警察のウェブサイトや広報資料を確認している人にしか届かない場合があります。
一方、人気タレントや俳優がイベントに登場すれば、芸能ニュースとして取り上げられ、テレビやインターネットを通じて普段とは異なる層にも情報が広がります。
芸能人の知名度を、安全啓発の入口として活用する仕組みです。
委嘱する人物とキャンペーン内容の相性
起用される人物は、必ずしも全国的な知名度だけで選ばれるわけではありません。
地域との関係性、ファン層、イベントのテーマ、参加者の年齢層なども、広報活動を考えるうえで重要な要素になります。
例えば、子どもや若者が参加する交通安全イベントでは、若い世代にも親しみやすいタレントやスポーツ選手が参加することで、交通ルールを学ぶきっかけをつくれます。
防犯イベントでは、幅広い年齢層に知られる人物が登場することで、家族間や地域内で詐欺対策について話し合うきっかけにもなります。
ただし、個々の著名人に対する委嘱理由や選定基準がすべて公表されているわけではありません。警視庁が説明している基本的な目的は広報効果の向上であり、人物ごとの起用理由は各イベントの事情によって異なります。
マツコ・デラックスの起用が注目された理由
マツコさんの2026年10月の就任は、地域安全の啓発と芸能ニュースとしての話題性が重なった事例です。
毎日新聞の報道によると、渋谷署が7月上旬に所属事務所へ依頼のメールを送り、約2週間後に快諾の返事を受けたとのことです。
また、マツコさんにとって一日警察署長は初めての経験でした。
警察署側にとっては、防犯というやや堅いテーマを、親しみやすいトークイベントとして届ける機会になりました。
一方、マツコさんの知名度によってイベントそのものが報道され、参加者以外にも特殊詐欺防止の情報が伝わりました。
こうした広報効果こそ、芸能人を起用する意義です。
【イベント当日は何をする?】委嘱式から啓発活動までの流れ
一日警察署長のイベントは、単に制服を着て写真撮影をするだけではありません。
警察署ごとに内容は異なりますが、代表的な進行には次のようなものがあります。
委嘱式と制服姿での登場
イベントの冒頭では、警察署長などから委嘱状やたすきが渡されることがあります。
制服や制帽を着用して登場することで、イベントのテーマを視覚的にも伝えます。
ここでの制服着用は広報活動上の演出であり、警察官として採用されたことを意味するものではありません。
トークショー・交通安全教室・防犯クイズ
委嘱式の後には、キャンペーンのテーマに合わせた企画が行われます。
交通安全なら道路標識や自転車のルール、防犯なら特殊詐欺の手口や不審な連絡への対処法などが中心です。
ウエンツさんが参加した神田署のイベントでは、交通ルールに関するクイズが行われました。
マツコさんが参加した渋谷署のイベントでは、警察署員による解説を交えた防犯トークショーが実施されました。
啓発グッズ配布や地域住民との交流
イベントによっては、反射材や防犯グッズなどの配布、警察車両の展示、子ども向け制服体験なども行われます。
2026年10月7日の渋谷署のイベントでは、防犯グッズの配布も予定されていました。
11月14日の立川署のイベントでは、高城れにさんが参加する防災企画のほか、警察・消防などによる車両展示や子ども向け制服試着、各種体験が予定されています。
このように、イベントは地域住民が警察の活動を身近に感じる機会にもなっています。
一日警察署長のイベントを見極めるポイント
一日警察署長のニュースを読むときは、次の3点を確認すると、その活動の意味が分かりやすくなります。
1. どこの警察署が委嘱したのか。 警視庁なのか、各道府県警なのか、具体的な警察署名まで確認する。
2. 何を目的にしたイベントなのか。 交通事故防止、特殊詐欺対策、暴力団排除、防災など、テーマを確認する。
3. どのような啓発活動を行ったのか。 トークショー、交通安全教室、防犯クイズなど、実際の内容を見る。
特に重要なのは、制服姿の話題性だけでイベントを評価しないことです。
本来の目的は、地域の安全につながる情報を届けることにあります。
【プロの結論】一日警察署長の本当の価値は知名度を安全につなげること
一日警察署長の活動を考えるうえで、重要なのは「誰が署長になったか」だけではありません。
その人物が参加することで、どのような安全情報が、誰に向けて届けられたのかという点です。
警察の広報活動には、情報を正確に発信することと、その情報を必要とする人に届けることの両方が大切です。
警察官が専門的な知識を説明するだけでは、普段から防犯や交通安全に関心を持たない人には届きにくいことがあります。
そこで著名人の知名度や発信力を活用し、ニュースやイベントを通じて市民との接点を増やすのが一日警察署長の仕組みです。
2026年の事例を見ても、その効果を期待する理由が分かります。
ウエンツ瑛士さんの神田署での活動は、交通ルールの再確認を促す機会になりました。マツコ・デラックスさんの渋谷署での活動は、特殊詐欺や闇バイトへの注意を広く呼びかける機会になりました。
また、高城れにさんやななまがりの11月のイベント予定からも、地域の課題に合わせて起用する人物や企画が変わることが読み取れます。
一日警察署長は、警察の権限を芸能人に一時的に与える制度ではありません。著名人の発信力と警察の専門知識を組み合わせ、市民の行動を変えるきっかけをつくる広報活動なのです。
【一日警察署長】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:一日警察署長は本当に警察署長になるのですか?
A: いいえ。警察署長の職務を正式に代行するわけではありません。広報イベントなどで警察署から委嘱され、交通安全や地域安全を呼びかける役割です。
Q2:一日警察署長には逮捕権や警察官への指揮権がありますか?
A: ありません。一日警察署長の委嘱によって逮捕権や捜査指揮権が与えられることはありません。実際の警察活動は、正式な権限を持つ警察官が担当します。
Q3:なぜ芸能人や有名人が一日警察署長に選ばれるのですか?
A: 主な理由は広報効果です。知名度や発信力を生かして、交通安全や防犯の情報を幅広い世代に届けるためです。
Q4:一日警察署長の仕事内容は何ですか?
A: 交通安全教室、防犯トークショー、交通ルールのクイズ、特殊詐欺防止の呼びかけ、啓発グッズの配布などです。委嘱の目的やイベントによって異なります。
Q5:ウエンツ瑛士はいつ一日警察署長を務めましたか?
A: 2026年9月13日、警視庁神田署の一日警察署長を務めました。秋の全国交通安全運動を前に、道路標識や自転車の交通ルールについて啓発活動を行いました。
Q6:マツコ・デラックスは一日警察署長を務めたことがありますか?
A: はい。2026年10月7日に警視庁渋谷署の一日警察署長を初めて務めました。特殊詐欺や闇バイトなどの犯罪被害防止をテーマに、防犯トークショーに参加しました。
Q7:一日警察署長は芸能人以外でもなれますか?
A: 芸能人だけに限定された役割ではありません。スポーツ選手や地域で活動する著名人なども起用されています。警察署が実施する広報活動の目的に応じて委嘱されます。
まとめ:一日警察署長は警察の広報を担う特別な役割
一日警察署長は、本物の警察署長の仕事を一日だけ代行する制度ではなく、警察の交通安全・地域安全活動を支援する広報上の役割です。
2026年には、ウエンツ瑛士さんが神田署で交通安全を呼びかけ、マツコ・デラックスさんが渋谷署で特殊詐欺防止を訴えました。
過去には舘ひろしさん、松平健さん、広瀬アリスさん、本田紗来さんなども就任しており、芸能人や著名人が地域の安全啓発に参加する取り組みは幅広く行われています。
一日警察署長のニュースを見たときは、制服姿や知名度だけでなく、どのような地域課題を解決するためのイベントなのかにも注目してみてください。
一日警察署長の本当の役割は、警察の権限を持つことではなく、知名度を生かして一人でも多くの人に安全を考えるきっかけを届けることです。
主な取材・確認資料
- オリコンニュース「一日警察署長の役割は?警視庁に聞いた」(2026年11月1日)
- 警視庁・神田警察署「令和8年 神田交通安全のつどい」
- 警視庁・渋谷警察署「全国地域安全運動キャンペーン」
- 警視庁・葛飾警察署「暴力団等排除キャンペーン」
- 警視庁・立川警察署「立川パートナーシップフェスタ2026」
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- 東京都都民安全総合対策本部・令和8年特殊詐欺認知状況