住吉会の規模を調べる際、特に注意したいのが「構成員数」と「準構成員等を含む勢力」の違いだ。
警察庁の2026年4月公表資料では、2025年末時点の住吉会について、次の数字が掲載されている。
- 構成員:約2,100人
- 準構成員等:約1,100人
- 勢力合計:約3,100人
つまり、検索結果で見かける約2,100人という数字は、準構成員等を含む組織全体の勢力とは異なる。
準構成員等は、正式な構成員とは区別されるものの、暴力団と関係を持つ周辺者などを含む統計上の区分である。両者を混同すると、組織規模を正しく理解できない。
住吉会の構成員数と勢力の推移
警察庁の長期統計を見ると、住吉会の構成員数は減少傾向にある。
| 年末 | 構成員 | 準構成員等を含む勢力 |
|---|---|---|
| 2016年 | 約3,100人 | 約6,600人 |
| 2017年 | 約2,900人 | 約5,800人 |
| 2018年 | 約2,800人 | 約4,900人 |
| 2019年 | 約2,800人 | 約4,500人 |
| 2020年 | 約2,600人 | 約4,200人 |
| 2021年 | 約2,500人 | 約4,000人 |
| 2022年 | 約2,400人 | 約3,800人 |
| 2023年 | 約2,200人 | 約3,500人 |
| 2024年 | 約2,100人 | 約3,200人 |
| 2025年 | 約2,100人 | 約3,100人 |
出典:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」。各数値は概数。
2016年末と2025年末を比較すると、構成員数は約3,100人から約2,100人へ減少している。準構成員等を含む勢力も約6,600人から約3,100人となった。
ただし、構成員数の減少だけで組織の影響力や犯罪活動の実態をすべて判断することはできない。警察庁も、暴力団の潜在化を含む組織犯罪情勢を課題として扱っている。
東京都内の住吉会の勢力は約1,410人
東京都都民安全総合対策本部が公表する2025年末の統計では、都内の暴力団勢力は合計約3,020人。そのうち、住吉会は約1,410人とされている。
東京都内では、住吉会が最も大きな勢力を持つ団体として掲載されている。
| 統計項目 | 2025年末の数値 |
|---|---|
| 東京都内の暴力団勢力全体 | 約3,020人 |
| 都内の住吉会勢力 | 約1,410人 |
| 六代目山口組 | 約400人 |
| 極東会 | 約320人 |
| 稲川会 | 約130人 |
ここでも、警察庁の全国統計にある約2,100人と東京都の約1,410人を単純比較してはいけない。
前者は全国の住吉会の正式な構成員数、後者は東京都内における構成員及び準構成員等を含む勢力の概数である。対象地域と集計区分が異なるためだ。
住吉会の勢力範囲は1都1道14県
警察庁の2026年指定暴力団一覧表によると、住吉会の勢力範囲は1都1道14県とされている。
この数字は、東京都と北海道に加えて14県に及ぶという公的な勢力範囲の表示だ。
ただし、これは各地域に同じ規模の組織や構成員が存在することを意味しない。都道府県単位の勢力範囲と、地域別の構成員数は別の指標である。
住吉会の現在の規模を理解するには、全国の構成員数、準構成員等を含む勢力、東京都内の勢力、勢力範囲をそれぞれ分けて見る必要がある。
【暴力団事務所使用差止請求制度】住民を守る仕組みと2024年の司法判断

2024年の住吉会本部事務所の使用差し止めで重要な役割を果たしたのが、公益財団法人「暴力団追放運動推進都民センター」、通称・暴追都民センターだ。
この仕組みは、暴力団事務所の周辺住民が単独で訴訟を起こすことの心理的・実務的な負担を軽減するために設けられている。
暴追都民センターの役割
暴追都民センターは、2013年2月28日に国家公安委員会から「適格都道府県センター」として認定された。
これにより、指定暴力団等の事務所周辺に住む人、勤務する人、学校に通う人などから委託を受け、センター自身が原告となって事務所の使用差し止めを求めることが可能になった。
制度の基本的な流れは次のとおり。
1. 周辺住民などが暴追都民センターに相談する。
2. センターが弁護士などの専門家の意見を踏まえて委託を検討する。
3. 委託契約を結び、必要な法的手続きを進める。
4. 裁判所に事務所使用差し止めを請求する。
5. 裁判所が提出された資料や主張を審理し、判断する。
重要なのは、センター自身が暴力団事務所を閉鎖する権限を持っているわけではないことだ。最終的な司法判断は裁判所が行う。
暴力団対策法第32条の4が法的根拠
この制度の法的根拠は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)第32条の4にある。
同条は、適格都道府県センターが周辺住民などから委託を受け、暴力団事務所の使用や付随する行為の差し止め請求に関する裁判上・裁判外の行為を行えることを定めている。
制度の特徴は、住民自身が前面に立って訴訟を進める負担を軽減できる点にある。
暴力団事務所の周辺では、住民が報復への不安などから声を上げにくい場合もある。こうした事情を踏まえ、法律が適格団体による代理的な請求を認めている。
2024年の住吉会の事例で何が認められたのか
今回の住吉会の事例では、周辺住民約40人がセンターに委託した。
東京地裁は2024年6月28日に仮処分を決定し、7月18日にその内容が現地で公示された。
この司法判断の意味は、単に住民の反対意見が紹介されたということではない。住民側が主張した平穏な生活を営む権利への侵害について、裁判所が法的な判断を示した点にある。
また、毎日新聞の報道では、暴追都民センター側が仮処分に違反した場合の間接強制についても申し立てたことが伝えられている。
ただし、申し立てと裁判所による認容は別の手続きである。申し立てられた制裁金が、そのまま確定した支払命令になったと理解するのは正確ではない。
【誤解を検証】住吉会本部事務所をめぐる4つの疑問
インターネット上で本部所在地や構成員数を調べると、異なる時期の情報が同時に表示されることがある。
特に、2023年の移転報道と2025年の所在地変更、2024年の仮処分決定は混同されやすい。
誤解1:住吉会の本部は現在も新宿区にある?
2023年11月の東京都公安委員会による公示では、新宿区への移転が確認されている。
しかし、警察庁の2026年公表資料では、2025年6月に東京都港区の施設が新たな主たる事務所として公示されたと記載されている。
そのため、2023年の情報を2026年の現状として扱うのは適切ではない。
誤解2:2024年の仮処分で住吉会そのものが活動できなくなった?
そうではない。
仮処分の対象は、新宿区内の特定のマンションの2部屋だった。事務所としての使用や会合、構成員らの立ち入りなどを禁止する判断であり、組織全体の解散命令ではない。
誤解3:構成員数約2,100人が住吉会の全勢力?
これも正確ではない。
約2,100人は正式な構成員数であり、準構成員等を含めると、警察庁の2025年末統計では約3,100人となる。
統計を見る際は、どの区分を集計した数字なのかを確認する必要がある。
誤解4:本部所在地が公示されれば実際の活動状況も分かる?
主たる事務所の所在地が公示されても、施設内部の利用状況や組織活動の詳細まで明らかになるわけではない。
行政資料で確認できる所在地情報と、報道による施設利用の情報、裁判所が判断した使用制限の範囲は、分けて理解する必要がある。
【よくある質問】住吉会本部事務所に関するFAQ
Q1:住吉会本部事務所は2026年現在どこにある?
A1:警察庁が2026年に公表した指定暴力団一覧表では、東京都港区が主たる事務所の所在地として記載されている。2025年6月に東京都公安委員会が新宿区の施設に代わる港区の施設を公示したことも確認できる。
Q2:住吉会本部はなぜ新宿区から移転した?
A2:2024年、周辺住民約40人が暴追都民センターに委託し、東京地裁に使用差し止めの仮処分を申し立てた。同年6月28日に仮処分が決定され、7月18日に公示された。その後、2025年6月に港区の施設が主たる事務所として公示されている。
Q3:住吉会の構成員数は2026年現在何人?
A3:2026年公表の警察庁資料に掲載された2025年末の数字では、正式な構成員は約2,100人。準構成員等を含めた勢力は約3,100人となっている。
Q4:住吉会は指定暴力団なの?
A4:指定暴力団である。東京都公安委員会は2025年6月17日、住吉会を12回目の指定とした。2026年の警察庁資料にも指定暴力団として掲載されている。
Q5:住吉会の代表者は誰?
A5:警察庁の2026年指定暴力団一覧表では、小川修氏が代表する者として記載されている。
Q6:2024年の使用差し止めは本部全体に適用された?
A6:対象は新宿区内のマンションにあった特定の2部屋であり、住吉会全体を解散させたり、全国の関連施設を一律に使用禁止にしたりする決定ではない。
まとめ:住吉会本部事務所の現在を判断する3つのポイント
2026年現在の住吉会本部事務所を理解するうえで、最も重要なのは、2023年から2025年までの所在地変更と、2024年の司法判断を時系列で整理することだ。
警察庁の2026年公表資料から確認できる主な情報は次のとおり。
- 主たる事務所: 東京都港区
- 代表する者: 小川修氏
- 構成員数: 約2,100人
- 準構成員等を含む勢力: 約3,100人
- 勢力範囲: 1都1道14県
- 指定状況: 東京都公安委員会による指定が継続
2023年11月には赤坂から新宿への移転が公示され、2024年には東京地裁が新宿区内の施設の使用差し止めを決定した。そして2025年6月、東京都港区の施設が新たな主たる事務所として公示された。
この一連の動きは、暴力団事務所の所在地が単なる組織内部の問題ではなく、地域住民の生活環境や暴力団排除政策、民事司法とも深く関係していることを示している。
今後の動向を確認する際には、古い所在地を掲載した記事だけに頼らず、警察庁の組織犯罪情勢、東京都公安委員会の公示、東京都の暴力団排除に関する公表情報を照合することが重要だ。
住吉会の本部所在地を正確に理解するための基準は、過去の移転報道ではなく、最新の公的な指定情報にある。