『千と千尋の神隠し』のモデル地を調べると、必ずといっていいほど登場するのが台湾の九份(きゅうふん)です。
赤い提灯が連なる坂道、山の斜面に密集する古い建物、夜になると明かりがともる茶藝館。確かに映画の不思議な町を思い起こさせる風景が広がっています。
しかし、九份は『千と千尋の神隠し』の公式モデル地ではありません。
宮崎駿監督が台湾のモデル説を否定
この点を確認するうえで参考になるのが、台湾のテレビ局TVBSによる宮崎駿監督へのインタビューです。
インタビュアーから、映画の舞台は台湾の九份ではないのかと質問された宮崎監督は、明確に否定しています。
加えて、映画を制作すると、似た風景を持つ地域が自分たちこそモデルではないかと考えることがあると説明しました。
『となりのトトロ』についても、身近な風景を材料にしたにもかかわらず、九州など別の地域がモデルだと考えられたことを例に挙げています。
つまり、映画の風景と似ていることだけでは、実際のモデル地だとは判断できないということです。
なぜ九份がモデル地として広まったのか
九份が作品と結び付けられやすい理由は、視覚的な共通点にあります。
| 九份の特徴 | 映画を連想させる理由 |
|---|---|
| 赤い提灯 | 油屋周辺の幻想的な夜景 |
| 山の斜面に広がる街 | 不思議の町の立体的な景観 |
| 狭い石段や路地 | 千尋が歩く異世界の街並み |
| 古い茶藝館や建築 | 時代を超えたような雰囲気 |
九份はもともと金鉱業で栄えた山間の集落です。台湾の交通部観光署も、採金の歴史や山城としての景観を観光資源として紹介しています。
九份はジブリ作品の公式モデルではなくても、独自の歴史と景観を持つ魅力的な観光地です。
映画の聖地という肩書きに頼らなくても、訪れる価値は十分にあります。
【2026年版・聖地巡礼ガイド】訪問するならどこがおすすめ?

実際に現地を訪れるなら、映画との関係だけでなく、何を体験したいかによって行き先を決めるのがおすすめです。
目的別に選ぶおすすめスポット
公式資料を重視するなら:江戸東京たてもの園
子宝湯の建築や昭和の商店街の雰囲気を楽しみたい人におすすめ。映画との関係を確認しながら見学できます。
東京都小金井市/野外博物館
歴史ある湯屋を体験するなら:道後温泉本館
宮崎監督が取り入れたとされる温泉文化を実際に体験できます。歴史的建築と入浴を一緒に楽しみたい人向けです。
愛媛県松山市/温泉施設
赤い橋と幻想的な風景なら:積善館
映画の印象的な場面を思い起こさせる橋やトンネルが見どころ。温泉旅館でゆっくり過ごしたい人におすすめです。
群馬県中之条町/温泉旅館
木造建築の迫力を味わうなら:金具屋
斉月楼の複雑な外観や文化財としての歴史が魅力。昭和初期の旅館建築を深く知りたい人向けです。
長野県山ノ内町/温泉旅館
映画のような夜景を楽しむなら:銀山温泉
川沿いに並ぶ木造旅館とガス灯の景色が魅力。雪の季節には特に幻想的な風景が広がります。
山形県尾花沢市/温泉街
海外の幻想的な街並みなら:台湾・九份
作品の公式モデルではありませんが、提灯のある路地や山間の景観を楽しめます。台湾独自の歴史や食文化も魅力です。
台湾・新北市瑞芳区/歴史的観光地
2026年の訪問前に知っておきたい実用情報
特に公式参考地と人気の温泉宿について、訪問前に確認したいポイントをまとめます。
江戸東京たてもの園
- 4~9月:9時30分~17時30分
- 10~3月:9時30分~16時30分
- 休園日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
- 一般観覧料:400円
- 中学生以下:無料
2026年の公式案内では、オンラインの日付指定チケットと当日券が用意されています。子宝湯だけでなく、園内の歴史的な商店や住宅も見て回ると、映画の世界観をより深く味わえます。
道後温泉本館
2024年12月に保存修理工事が完了しています。2026年も営業しており、入浴コースによって料金や利用時間が異なります。訪問前には公式の営業時間・料金案内を確認しておくと安心です。
積善館・金具屋
どちらも実際に営業している温泉旅館です。館内すべてを自由に見学できる観光施設ではありません。
宿泊プラン、日帰り入浴の受付状況、館内見学の条件を事前に確認しましょう。特に金具屋の文化財巡りは宿泊者向けです。
銀山温泉
2026年は温泉街への車両進入に関する規制案内が出ています。冬季は積雪によって交通事情が変わるため、尾花沢市や温泉組合の最新案内を確認してください。
聖地巡礼で失敗しないための3つの判断基準
- 公式性を重視する人: ジブリ公式資料に記載された場所を優先する。
- 映画の場面を再現したような風景を求める人: 赤い橋、木造建築、夜景など、具体的な景観で選ぶ。
- 温泉旅行そのものを楽しみたい人: 作品との関係だけでなく、宿泊環境、入浴条件、交通アクセスを比較する。
聖地巡礼は、モデル地を探し当てることだけが目的ではありません。映画をきっかけに、その土地が持つ本来の歴史や文化に触れることにも大きな意味があります。
【千と千尋の神隠しの舞台】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:千と千尋の神隠しの公式モデル地は日本のどこですか?
A1:スタジオジブリの公式Q&Aでは、東京都小金井市の江戸東京たてもの園が「大いに参考にした場所」として掲載されています。また、2003年の公式ジブリ日誌では、道後温泉も作品に取り入れられたことが説明されています。ただし、映画全体を再現した単一のモデル地はありません。
Q2:油屋のモデルは道後温泉本館と積善館のどちらですか?
A2:両者は関係性が異なります。道後温泉本館は宮崎監督が取り入れた温泉の一つとして公式日誌に記載されています。一方、積善館は2008年の日本テレビ特番で油屋のイメージモデルの一つとして紹介されました。どちらか一方だけが油屋の唯一のモデルというわけではありません。
Q3:台湾の九份は千と千尋の神隠しのモデル地ですか?
A3:いいえ。宮崎駿監督は台湾メディアのインタビューで、九份をモデルとする説を否定しています。赤い提灯や坂道の景観は映画に似ていますが、公式に認められたモデル地ではありません。
まとめ:公式モデル地と似ている場所を区別して聖地巡礼を楽しもう
『千と千尋の神隠し』の舞台をめぐる情報を整理すると、映画の背景は特定の温泉街や旅館をそのまま描いたものではなく、日本各地の建築や温泉文化、宮崎駿監督の想像力が組み合わさって生まれたものだと分かります。
特に重要なのは、次の5つのポイントです。
- 江戸東京たてもの園の子宝湯は、公式に確認できる重要な参考地。
- 道後温泉本館は、宮崎監督が作品に取り入れた温泉の一つ。
- 四万温泉の積善館は、2008年のテレビ番組で油屋のイメージモデルの一つとして紹介された。
- 渋温泉の金具屋と銀山温泉は、作品を連想させる建築や景観を持つが、公式に特定のモデルとは認定されていない。
- 台湾の九份は、宮崎監督がモデル説を否定している。
【プロの結論】本当の聖地巡礼は「モデル探し」から「作品の背景を知る旅」へ
映画のモデル地をめぐる情報で見落とされがちなのは、建築の一部が参考にされたことと、建物全体がそのまま再現されたことの違いです。
江戸東京たてもの園の子宝湯を訪れれば、昔の銭湯が持っていた装飾や空間の魅力を知ることができます。道後温泉本館では歴史ある温泉文化に触れられ、積善館や金具屋では、時代を超えて残る木造旅館の建築美を堪能できます。
そして銀山温泉や九份では、映画の世界を連想させる景色とともに、それぞれの地域が歩んできた歴史を楽しめます。
「ここが油屋そのものだった」と決めつけるより、「この風景のどの部分が映画につながっているのか」と考えながら歩くこと。
それこそが、2026年に『千と千尋の神隠し』の聖地巡礼を楽しむうえで、最も豊かな旅のスタイルです。
主な参考資料:スタジオジブリ公式Q&A・2003年1月9日付ジブリ日誌、江戸東京たてもの園公式資料、道後温泉公式サイト、四万温泉積善館公式サイト、歴史の宿金具屋公式FAQ、文化庁国指定文化財等データベース、銀山温泉公式サイト、尾花沢市公式観光情報、台湾TVBSの宮崎駿監督インタビュー。