山崎育三郎の舞台歴を語るうえで欠かせないのは、若き青年役から複雑な内面を抱える人物、さらには強烈な個性を持つ主人公まで、幅広い役柄を演じてきたことだ。
特に注目したい代表作は次の5作品である。
1.『レ・ミゼラブル』マリウス役
2007年、山崎育三郎はミュージカル『レ・ミゼラブル』の日本上演20周年記念公演でマリウス役に抜擢された。
その後も2009年、2011年、2013年と同作に出演。マリウスは、革命に身を投じる若者であり、コゼットとの恋愛を通して物語に青春と希望をもたらす人物だ。
マリウス役は、山崎がミュージカル俳優として広く知られるきっかけになった重要な役柄である。
若々しい感情表現に加え、恋愛や友情、革命への思いを歌で伝える力が求められる。後年の主演作につながるキャリアの出発点といえる。
2.『モーツァルト!』ヴォルフガング・モーツァルト役
山崎育三郎の代表作として、特に重要なのが『モーツァルト!』だ。
2010年に主演のヴォルフガング・モーツァルト役を務め、第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞した。
その後、2014年、2018年、2021年にも同役を演じている。
この作品で描かれるのは、音楽の才能に恵まれながらも、父親や社会との関係、自分自身の自由をめぐって葛藤するモーツァルトの人生だ。
単に明るく天才的な人物を演じるだけでは成立しない。奔放さ、孤独、反抗心、家族への愛情など、相反する感情を一人の人物の中に共存させる必要がある。
2010年の演劇賞受賞は、山崎の舞台俳優としての評価を考えるうえで大きな節目となった。
3.『ミス・サイゴン』クリス役
2012年には、世界的な人気を誇る『ミス・サイゴン』にクリス役で出演した。
クリスはベトナム戦争下のサイゴンでキムと出会い、愛情を育むアメリカ兵。戦争という大きな歴史のうねりに翻弄されながら、自分の選択と向き合う人物である。
『レ・ミゼラブル』のマリウスと同じく若い男性の恋愛を描く役柄だが、クリスには戦争による喪失や罪悪感という、より重いテーマが伴う。
山崎の出演歴を見ると、若い恋愛を描く作品から、社会や歴史を背景にした人間ドラマへと、演じる人物の幅が広がっていることが分かる。
4.『エリザベート』ルイジ・ルキーニ役・トート役
『エリザベート』は、山崎育三郎のキャリアにおいて特別な意味を持つ作品だ。
2015年から2019年にかけて演じたのは、皇后エリザベートを暗殺するルイジ・ルキーニ役。そして、その後は黄泉の帝王トート役へと挑戦の幅を広げた。
この役柄の変化については、後ほど詳しく解説する。
5.『ファインディング・ネバーランド』ジェームズ・バリ役
2023年に日本初演された『ファインディング・ネバーランド』では、山崎が主演のジェームズ・バリを務めた。
主人公は、『ピーター・パン』の作者として知られる劇作家J・M・バリ。
創作に行き詰まったバリが、ある家族との出会いを通じて想像力を取り戻し、名作『ピーター・パン』を生み出していく過程を描く。
戦いや恋愛を中心とした作品とは異なり、創作への情熱や子どもたちとの交流、人が夢を見ることの意味を描いた物語である。
2027年には山崎主演で再演されることが決定しており、彼の近年の代表作の一つとなっている。
【出演歴を年表で整理】2007年から2027年までの舞台キャリア

山崎育三郎のミュージカル出演歴は、2007年の『レ・ミゼラブル』から始まる。
所属事務所・研音やレーベルのユニバーサル ミュージックの公開プロフィールを中心に、主要な舞台作品を整理した。
出典:研音公式プロフィール、ユニバーサル ミュージック公式略歴、各作品の公式公演情報。主な作品を抜粋。
舞台俳優としての転換点は2010年の『モーツァルト!』
この年表から見えてくるのは、山崎が単に出演作品を増やしてきたわけではないということだ。
2007年のマリウス役で大作ミュージカルに参加し、2010年には『モーツァルト!』で主演を務めて演劇賞を受賞。その後も『ロミオ&ジュリエット』『ミス・サイゴン』など、主演級の役柄や重要な人物を演じてきた。
2013年には井上芳雄、浦井健治とともにミュージカル俳優ユニット「StarS」として活動を開始。日本武道館公演も実現させた。
この時期は、個人としての舞台実績だけでなく、ミュージカルというジャンルそのものの魅力を広く伝える活動にも力を入れ始めた時期だった。
さらに2014年にはStarSとして第5回岩谷時子賞の奨励賞を受賞している。
【エリザベートの真相】山崎育三郎はルキーニからトートへ
山崎育三郎の出演歴を調べると、特に混同されやすいのが『エリザベート』の役柄だ。
「山崎育三郎はトート役だったのか、それともルキーニ役だったのか」という疑問が生まれるのは、実際に両方の役を経験しているからである。
ルイジ・ルキーニはどんな役?
ルイジ・ルキーニは、皇后エリザベートを暗殺した人物で、物語の狂言回しを担う重要な存在だ。
2015年公演で山崎が演じ、2016年の再演でも続投。2019年まで同役を演じてきた。
ルキーニの特徴は、物語を進行させながら、観客に対して皮肉や問いを投げかける点にある。
単純な悪役ではなく、物語全体を客観視するような立場でもあり、台詞のテンポや存在感、独特の人物像を作り上げる表現力が必要になる。
トート役への挑戦は2020年から始まった
山崎は2019年11月、2020年公演で初めてトート役を演じることが発表された。
しかし、2020年の公演は新型コロナウイルスの影響で全公演中止となり、予定されていた「山崎トート」は幻となった。
その後、2022年の公演で改めてトート役に起用され、帝国劇場の東京公演に出演。ここで初めて実際の舞台上でトートを演じることになった。
そして2025~2026年公演にも続投。北海道・大阪・福岡公演に出演し、2026年1月の博多座公演までトート役を務めた。
ルキーニとトートの違い
| 比較項目 | ルイジ・ルキーニ | トート |
|---|---|---|
| 立場 | 皇后暗殺者・狂言回し | 黄泉の帝王 |
| 物語上の役割 | 出来事を語り、物語を進行させる | エリザベートに死の世界から迫る |
| 人物像 | 皮肉屋で複雑な内面を持つ | 超越的で神秘的な存在 |
| 山崎の出演 | 2015~19年 | 2022年、2025~26年 |
この変化は、単なる配役変更ではない。
ルキーニは物語の外側から登場人物や歴史を見つめる存在。一方、トートは物語の中心でエリザベートの人生に深く関わる存在だ。
同じ作品で異なる役割を経験することによって、山崎の人物解釈や舞台表現の幅が広がったと考えられる。
したがって、「山崎育三郎はエリザベートでトートを演じた」という情報は正しい。ただし、最初からトートだったわけではなく、ルキーニを長年演じた後にトートへと移行した、という順番が正確だ。
【歌唱力の評判】山崎育三郎がミュージカルで支持される理由
山崎育三郎の魅力として頻繁に挙げられるのが、歌唱力と演技力の両立である。
ただし、歌が上手いという評価だけでは、彼が長年にわたり大作ミュージカルに起用されてきた理由を十分に説明できない。
注目すべきなのは、作品ごとに異なる音楽的要求に対応してきた点だ。
1.幅広い音域への対応力
特に分かりやすい例が、2024年の『トッツィー』である。
山崎は主人公マイケル・ドーシーと、彼が女装して演じるドロシー・マイケルズという二つの姿を演じた。
公式ファンクラブに掲載されたインタビューでは、本人がこの作品について、これまで出演した作品の中でも特に音域が広く、ドロシーの楽曲には女性のソプラノ音域が必要だったと説明している。
加えて、女性のキーを歌うために数年前からボイストレーニングを始め、オーディションでは英語の歌詞で挑んだという。
このエピソードからも、役柄に必要な技術を事前に磨き上げる姿勢がうかがえる。
2.歌だけでなく人物の感情を伝える表現力
ミュージカルでは、歌唱技術が高いだけでは観客の心を動かせない。
例えば『モーツァルト!』では、天才としての喜びと孤独を表現する必要がある。『ミス・サイゴン』では、戦争によって変化する人間関係や愛情を描かなければならない。
『ファインディング・ネバーランド』では、創作への情熱や夢を取り戻す過程が重要になる。
同じ歌唱力でも、作品によって求められる感情表現は異なる。
山崎の出演歴は、こうした異なるジャンルの役を継続的に担ってきたことを示している。
3.演劇賞が示す舞台俳優としての実績
2010年の第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞は、山崎のキャリアを語るうえで外せない実績だ。
受賞対象となったのは『モーツァルト!』での演技であり、歌唱力だけを評価する賞ではない。
そのため、歌唱技術と演技表現を切り分けず、舞台上での総合的な仕事として評価された実績と捉えるのが適切だ。
また、2016年にはカバーアルバム『1936~your songs~』で第58回日本レコード大賞の企画賞を受賞している。舞台以外の音楽活動にも評価の幅が広がっている。
代表作の中で、初めて観る人におすすめなのは?
初めて山崎育三郎のミュージカルを観る場合、作品の好みによって選ぶとよい。
- 王道のミュージカルを楽しみたい人:『レ・ミゼラブル』
- 歌唱と人物描写をじっくり味わいたい人:『モーツァルト!』
- 壮大な人間ドラマを観たい人:『ミス・サイゴン』
- 華やかで幻想的な世界観が好きな人:『エリザベート』
- 夢や創作、家族の物語に興味がある人:『ファインディング・ネバーランド』
- コメディと変身をテーマにした作品が好きな人:『トッツィー』
なお、これらは公式の人気投票による順位ではない。作品のテーマや山崎の役柄を基準にした観劇ガイドである。
【2026年最新】山崎育三郎の現在の舞台活動と2027年の出演情報
2026年の山崎育三郎は、ミュージカル作品への出演だけでなく、コンサートやライブを通じて音楽活動を展開している。
特に重要なのは、2026年1月まで続いた『エリザベート』から、2027年の『ファインディング・ネバーランド』へとつながる活動の流れだ。
2026年の主な舞台・音楽活動
| 時期 | 活動 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | エリザベート | 博多座公演でトート役 |
| 2026年2月 | Concert for LEVAY | レベイの80歳を祝うコンサートに出演 |
| 2026年2月 | Josh Groban GEMS WORLD TOUR | ゲスト出演 |
| 2026年7月11日 | JAME MUSICAL CONCERT | LINE CUBE SHIBUYAで開催 |
| 2026年8~10月 | 19BOX ~STARMAN~ | 全国ライブツアー |
2026年7月11日の「GMO渋谷エンタメ祭 JAME MUSICAL CONCERT」では、古川雄大、濱田めぐみ、海乃美月、黒羽麻璃央らミュージカル界で活躍する出演者と共演した。
また、8月22日の埼玉公演から10月23日の東京国際フォーラム公演まで、ライブツアー「19BOX ~STARMAN~」を開催している。
このように、2026年は大作ミュージカルへの出演に加えて、ミュージカルコンサートやソロライブを中心とする活動も目立った。
次回作『ファインディング・ネバーランド』は2027年1月開幕
次の大きなミュージカル出演作として注目されるのが、2027年1月に開幕する『ファインディング・ネバーランド』だ。
山崎育三郎は主演のジェームズ・バリ役を続投する。
この作品は、2023年に日本で初演されたミュージカルの再演であり、2027年公演は新たなキャストとともに再び上演される。
東京公演の概要
- 公演期間:2027年1月8日~1月30日
- 会場:日生劇場
- 主演:山崎育三郎
- 役柄:ジェームズ・バリ
- 企画制作:ホリプロ
- 主催:フジテレビジョン、キョードー東京、ホリプロ
主な共演者
| 出演者 | 役柄 |
|---|---|
| 山崎育三郎 | ジェームズ・バリ |
| 濱田めぐみ | シルヴィア・デイヴィス |
| 橋本さとし | フック船長/チャールズ・フローマン |
| 夢咲ねね | メアリー・バリ |
| 杜けあき | デュ・モーリエ夫人 |
2027年2月には地方公演も予定されている。
- 2月5日~7日:宮城・東京エレクトロンホール宮城
- 2月11日~15日:大阪・梅田芸術劇場メインホール
- 2月19日~21日:愛知・愛知県芸術劇場
- 2月26日~28日:福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
これらの日程はホリプロステージの公式発表に基づく。
2027年版で注目したい3つのポイント
① 2023年の初演から続くジェームズ・バリ役
2023年の日本初演で山崎が演じた役を再び担当する。初演で作り上げた人物像をどのように深めるのかが見どころになる。
② 濱田めぐみとの共演
シルヴィア・デイヴィス役は濱田めぐみが続投する。作品の中心となるバリとシルヴィアの関係性を、二人がどのように表現するか注目したい。
③ 物語の中心にある『ピーター・パン』誕生の背景
本作は、劇作家J・M・バリがデイヴィス家の子どもたちと出会い、『ピーター・パン』を生み出していく実話に基づいた物語だ。
単に有名作品の誕生を再現するのではなく、想像力や創作の苦悩、夢を持ち続けることの意味を描いている。
2026年10月には公式から製作発表の開催も告知され、11月11日に山崎育三郎や濱田めぐみらが登壇する予定となっている。開幕に向けた準備も本格化している。
【よくある質問】山崎育三郎のミュージカルに関するFAQ
Q1:山崎育三郎のミュージカル代表作は何ですか?
A1:代表作として特に知られるのは『レ・ミゼラブル』『モーツァルト!』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『ファインディング・ネバーランド』などです。作品によってマリウス、ヴォルフガング、クリス、トート、ジェームズ・バリなどを演じています。
Q2:山崎育三郎は『エリザベート』でトート役を演じましたか?
A2:演じています。2015年から2019年まではルイジ・ルキーニ役を務め、2020年公演でトート役に初挑戦する予定でしたが公演中止に。実際にトート役を演じたのは2022年公演で、2025~2026年公演にも出演しました。
Q3:山崎育三郎は『レ・ミゼラブル』で何役でしたか?
A3:マリウス役です。2007年の日本上演20周年記念公演で抜擢され、2009年、2011年、2013年にも出演しました。
Q4:山崎育三郎は『モーツァルト!』で何役でしたか?
A4:主人公のヴォルフガング・モーツァルト役です。2010年の出演で第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞。その後も2014年、2018年、2021年に同役を務めています。
Q5:山崎育三郎の次のミュージカル出演作は何ですか?
A5:2027年1月開幕の『ファインディング・ネバーランド』です。山崎はジェームズ・バリ役で主演し、東京の日生劇場を皮切りに宮城、大阪、愛知、福岡でも公演が予定されています。
Q6:山崎育三郎の歌唱力が評価される理由は何ですか?
A6:幅広い音域への対応力、歌を通じた感情表現、役柄に応じた歌唱の使い分けが挙げられます。『トッツィー』では女性のソプラノ音域に対応するため、事前にボイストレーニングにも取り組んでいました。
まとめ:山崎育三郎のミュージカル歴は挑戦と進化の積み重ね
山崎育三郎のミュージカル出演歴を振り返ると、2007年の『レ・ミゼラブル』でマリウス役に抜擢されたことが、その後のキャリアの大きな出発点となっている。
2010年の『モーツァルト!』では主演として演劇賞を受賞。『ミス・サイゴン』や『エリザベート』などの大作を経験し、ルイジ・ルキーニからトートへの役柄の変化も実現した。
さらに『トッツィー』では男女二つの人物を演じ分け、『昭和元禄落語心中』では日本の伝統芸能を題材にした作品に挑戦。出演作の幅は着実に広がっている。
2026年はコンサートや全国ツアーで活動し、2027年1月には『ファインディング・ネバーランド』でジェームズ・バリ役を再び演じる。
【プロの結論】
山崎育三郎の舞台キャリアを理解するうえで大切なのは、出演作品の数だけでなく、役柄の変化に注目することだ。
- マリウスやクリスでは、若者の純粋な愛情や葛藤。
- モーツァルトでは、天才の才能と孤独。
- ルキーニやトートでは、作品を象徴する強烈な存在感。
- ジェームズ・バリでは、創作への情熱と夢を取り戻す物語。
それぞれ異なる表現が求められる役柄を経験してきたことこそ、山崎育三郎のミュージカル俳優としての大きな強みである。
これから初めて舞台を観る人は『ファインディング・ネバーランド』を入口にするのもよい。過去の代表作を知っている人なら、2027年の再演でジェームズ・バリという人物がどのように進化するのかにも注目したい。
今後も舞台と音楽の両方で、どのような新しい顔を見せてくれるのか期待が高まる。