懸賞金の獲得本数は、勝ち星だけで決まるわけではない。同じ10勝を挙げた力士でも、どの番付にいて、どの相手と対戦し、どれだけ企業の懸賞が設定された取組に出場したかによって、獲得本数には大きな差が生まれる。
1. 番付が上がるほど懸賞を獲得する機会が増える
横綱や大関は、注目度の高い取組を組まれる機会が多い。特に結びの一番や優勝争いに直結する対戦には、多くの企業が懸賞を申し込む傾向がある。
一方、前頭下位の力士は、勝ち越しや二桁勝利を達成しても、懸賞の付かない取組で勝つことがある。つまり、勝利数が同じでも懸賞の獲得本数が同じになるとは限らない。
2. 人気力士や注目カードに企業の懸賞が集中する
懸賞は企業や団体が特定の取組に提供する広告協賛の性格を持つ。企業にとっては、注目度の高い一番で自社の懸賞旗を掲示することが宣伝機会になる。
2026年9月場所の千秋楽では、霧島と琴櫻の一番に58本、大の里と安青錦の一番に55本の懸賞が設定された。こうした人気カードでは、1勝によって複数の懸賞をまとめて獲得する可能性がある。
大の里の698本も、こうした企業の支持と土俵上での勝利が重なった結果だ。懸賞本数は、力士の競技成績だけでなく、広告市場における人気を映す数字でもある。
3. 休場や不戦勝では懸賞を獲得できない
休場はランキングに直接影響する。出場しなければ懸賞が設定された取組に参加できず、獲得本数を増やす機会そのものがなくなる。
また、対戦相手の休場による不戦勝では、通常の取組で勝った場合の懸賞金は受け取れない。その一番に予定されていた懸賞は、別の取組に移されるか、取り消しになる。
大の里は2026年3月場所で4敗11休、5月場所は全休だった。それでも年間1,541本でトップに立ったのは、出場した1月、7月、9月の各場所で大量の懸賞を獲得したためだ。休場の影響を受けながら年間首位を守った点にも、2026年の記録の特徴がある。
【集計方法を検証】月刊『相撲』のデータと歴代最多記録の見方

懸賞金ランキングを比較する際には、数字がどの資料から集計されたものなのかも重要になる。場所別と年間累計では集計方法が異なり、すべての力士の本数を完全に把握できるとは限らない。
月刊『相撲』を使った年間累計の集計方法
年間ランキングの基礎となるのは、月刊『相撲』に掲載される日本相撲協会広報部発表の累計本数だ。各号には年初からの懸賞獲得累計が掲載されるため、前号との差を計算することで、場所ごとの獲得本数を割り出せる。
ただし、集計には注意点もある。雑誌に掲載される対象は基本的に発売時点の幕内力士であり、十両に在位していた場所の懸賞本数が個別に確認できないケースがある。十両を挟んで幕内に戻った場合、複数場所の合計として記録されることもある。
また、十両に陥落した力士や引退した力士は、その後の号に掲載されなくなる場合がある。そのため、年間累計は掲載資料で確認できる範囲の数字として読む必要がある。相撲レファレンスの番付・成績記録も照合に使われている。
2026年の年間ランキングはまだ確定していない
2026年11月5日時点で確認できる年間累計の上位は、9月場所終了までの数字だ。日本相撲協会の年間日程によると、11月場所は11月8日から22日まで福岡国際センターで開催される。
したがって、大の里1,541本、霧島1,373本、熱海富士1,163本という順位は、2026年の最終年間ランキングではなく、11月場所前の最新集計として扱うのが正確だ。11月場所での獲得分によって順位が変わる可能性がある。
白鵬の545本と大の里の698本は何が違う?
歴代記録を比較する際に欠かせないのが、2015年1月場所の白鵬だ。当時の白鵬は15戦全勝で545本を獲得した。2025年9月場所には大の里が519本を獲得し、白鵬の記録に迫った。
そして2026年9月場所、大の里は698本を獲得。白鵬の545本を153本上回り、従来の記録を更新した。
加えて、当時と現在では懸賞金の単価も違う。白鵬の記録時は1本6万2,000円、現在は7万円だ。歴代の懸賞金を金額で比べる場合には、獲得本数だけでなく、その時代の単価も考慮しなければならない。
【よくある質問】大相撲懸賞金ランキングに関するFAQ
Q1:2026年9月場所の懸賞金ランキング1位は誰ですか?
A1:横綱・大の里です。698本を獲得し、力士側の配分額は4,188万円でした。2位は安青錦の365本、3位は霧島の259本です。
Q2:2026年の年間懸賞金ランキング1位は誰ですか?
A2:9月場所終了までの累計では大の里が1,541本で1位です。2位は霧島の1,373本、3位は熱海富士の1,163本。11月場所の成績は含まれていません。
Q3:懸賞金は1本いくらで、力士はいくら受け取れますか?
A3:懸賞1本は7万円です。協会の事務経費1万円を差し引いた6万円が勝った力士側の取り分です。2025年5月場所以降、土俵上の現金は1万円、本人名義口座への振込分は5万円になっています。
Q4:歴代最多の1場所懸賞金獲得本数は何本ですか?
A4:2026年9月場所に大の里が記録した698本です。それまで知られていた大きな記録は、2015年1月場所に白鵬が獲得した545本でした。
Q5:懸賞金は勝ち越しや優勝をすれば必ずもらえますか?
A5:いいえ。懸賞金は懸賞が設定された取組で勝った力士に支払われます。優勝や勝ち越しそのものに対して自動的に支給される賞金ではありません。不戦勝も通常の懸賞獲得の対象にはなりません。
まとめ:2026年の大相撲懸賞金ランキングから分かること
2026年の大相撲懸賞金ランキングは、大の里の圧倒的な記録が中心となった。9月場所の698本は白鵬の545本を超える新記録であり、年間累計でも1,541本を獲得してトップに立っている。
年間ランキングでは霧島が1,373本、熱海富士が1,163本で続き、9月場所単独では安青錦が365本で2位に入った。それぞれの数字を比較することで、1場所の爆発力と年間を通じた安定感という異なる評価軸が見えてくる。
懸賞金を正しく理解するためには、次の3つを区別することが大切だ。
- 1場所ランキング:その場所で最も多く懸賞を獲得した力士を知る指標。
- 年間累計ランキング:複数場所を通じた継続的な獲得実績を比較する指標。
- 懸賞金の配分額:1本7万円のうち、力士側に配分される6万円と実際の現金受取額を区別する指標。
今後の注目は、11月場所で年間ランキングがどう動くかだ。大の里が首位を守るのか、霧島が逆転に迫るのか、熱海富士が上位を維持するのか。安青錦をはじめとする若い実力者の懸賞獲得本数にも注目したい。
懸賞金ランキングは、土俵上の強さだけでは測れない力士の人気、企業からの支持、そして大相撲の興行としての魅力を映すもう一つの成績表なのである。
主な参照資料: 日本相撲協会公式サイト、日刊スポーツ、月刊『相撲』掲載データをもとにした懸賞金集計、スポーツナビ。