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障害のある人は子どもを持てる?出産の権利と遺伝の確率、2026年最新の子育て支援制度を徹底解説

黒岩 雅也 黒岩 雅也 • 更新: • 公開: • 読了約 27 分
目次

障害のある人が子どもを持つことはできるのか。障害があると妊娠や出産を諦めなければならないのか、子どもにも障害が遺伝するのか、親になった後の育児をどう支えればよいのか。こうした疑問には、医学的な問題だけでなく、本人の意思や人権、福祉制度、地域の支援体制が深く関係している。

2026年現在、日本では障害のある人にも、他の人と平等に結婚し、家族を形成し、子どもを持つかどうかを決める権利が認められている。障害があることだけを理由に、妊娠・出産・子育てが一律に禁止されるわけではない。障害者権利条約第23条の内容を確認しながら、障害の遺伝に関する正しい知識、妊娠前から出産後まで利用できる公的支援、相談先を整理する。

【結論】障害のある人が子どもを持つことはできる?法律と人権から解説

障害者子供作る

障害があることだけで出産や子育ては禁止されない

障害のある人が子どもを持つことについて、最初に確認したいのが本人の権利である。

障害の種類や程度にかかわらず、障害があるという理由だけで、結婚や出産を諦めるよう求められるものではない。

妊娠や出産には個別の医学的な判断が必要になる場合がある。例えば、心臓や呼吸器に関係する疾患、筋力や身体機能に影響する病気、服薬中の薬剤などによって、妊娠中の健康管理や分娩方法を慎重に検討する必要がある。

しかし、それは個々の健康状態に応じた医療上の判断であり、障害者全体に共通する出産禁止の根拠ではない。

障害者権利条約第23条が保障する家族形成の権利

国際的な根拠となるのが、国連の「障害者の権利に関する条約」である。

日本は2014年1月に同条約を批准している。

特に第23条は「家庭及び家族の尊重」を定め、障害のある人が他の人と平等に家族を形成する権利を保障している。

具体的には、次の内容が盛り込まれている。

- 婚姻年齢に達した障害者が、双方の自由で完全な合意に基づいて結婚し、家族を形成する権利
- 子どもの数や出産間隔を自由かつ責任を持って決定する権利
- 生殖や家族計画について適切な情報や教育を受ける権利
- 生殖能力を他の人と平等に保持する権利
- 子どもの養育に必要な適切な援助を受ける権利

加えて、同条約は、子どもが親の障害を理由として親から分離されないことも定めている。

つまり、障害のある親であるという事実だけを理由に、親子関係を否定することは条約の趣旨に反する。

ただし、子どもの安全や最善の利益を守るための個別の判断まで否定されるわけではない。判断の対象となるのは、実際の養育状況や必要な支援であり、障害の有無だけではない。

出典:外務省「障害者の権利に関する条約」第23条。

厚生労働省も障害者の結婚・出産・子育て支援を推進

国内でも、厚生労働省とこども家庭庁は障害者の希望を踏まえた結婚、出産、子育ての支援を進めている。

大きな節目となったのが、2024年6月5日付の「障害者の希望を踏まえた結婚、出産、子育てに係る支援の推進について」という通知である。

この通知では、障害者本人がどのような生活を望むのかを尊重し、障害福祉、母子保健、児童福祉などの関係機関が連携して支援する方向性が示された。

また、支援の取組事例集や、利用可能な制度・関係機関を整理した資料も公表されている。

ここで重要なのは、出産を単独の医療問題として扱わず、妊娠前の相談から出産後の生活、子どもの成長までを一続きの支援として考えている点だ。

【遺伝の真実】障害は子どもに遺伝する?確率は一律ではない

障害のある人が子どもを持つことを考える際、特に不安になりやすいのが遺伝の問題である。

「親に障害があると、子どもにも同じ障害が生じるのではないか」という疑問は多い。

しかし、障害にはさまざまな原因があり、すべてが遺伝によって生じるわけではない。

障害の原因によって遺伝する可能性は異なる

障害の原因は、大きく分けると次のように整理できる。

1.遺伝的な要因が関係する障害

遺伝子や染色体の変化が原因となる疾患がある。

親から子どもに遺伝する可能性があるものもあれば、受精や発生の過程で新たに生じる変化が原因となるものもある。

また、同じ疾患名でも遺伝形式や遺伝子の状態によって、子どもに伝わる可能性は異なる。

2.出生前後の要因が関係する障害

妊娠中の健康状態や出産時の状況、新生児期の病気などが発達や身体機能に影響する場合がある。

こうしたケースでは、親が同じ状態であるからといって、子どもにも同じ障害が生じるとは限らない。

3.事故や病気など後天的な要因による障害

交通事故や病気、脳血管疾患などによって、出生後に障害が生じる場合もある。

こうした障害は、必ずしも遺伝と関係するものではない。

したがって、「障害者の子どもは障害者になる確率が高い」と一律に判断することはできない。

遺伝する確率を調べるには何が必要?

遺伝の可能性を具体的に検討するには、次のような情報が役立つ。

- 障害や疾患の正式な診断名
- 発症した時期や現在の症状
- 遺伝学的検査を受けたことがあるか
- 血縁者に同じ疾患や似た症状があるか
- パートナー側の家族歴
- これまでの妊娠・出産歴

これらの情報を基に、医師や遺伝医療の専門家が個別の可能性を評価する。

例えば、遺伝形式が明らかになっている疾患では、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝などの仕組みによって、子どもに伝わる確率を検討できる。

ただし、こうした遺伝形式の一般的な確率を、すべての障害に当てはめることはできない。

また、遺伝的な変化が子どもに伝わることと、実際に症状が現れること、症状の程度が同じになることは、それぞれ別の問題である。

遺伝カウンセリングとは?検査を受けずに相談することもできる

遺伝に関する不安がある場合は、遺伝カウンセリングを利用する方法がある。

遺伝カウンセリングでは、遺伝性疾患の仕組みや家族への影響、検査の選択肢、医学的な限界などについて専門家から説明を受けられる。

単に遺伝子検査を受けるための窓口ではない。

検査を受けるかどうかも含め、本人やパートナーが十分な情報を得て、自分たちで考えられるよう支援することが目的となる。

日本医学会のガイドラインでも、遺伝学的検査では医学的な情報だけでなく、心理的・社会的な影響を含めた説明や支援が重視されている。

遺伝カウンセリングの費用はいくら?

費用は医療機関や相談内容、保険適用の条件によって異なる。

日本認定遺伝カウンセラー協会の案内では、保険適用の条件を満たす場合、遺伝カウンセリング加算は1,000点で、3割負担なら3,000円となる。

一方、保険適用の条件に当てはまらない自由診療の場合、1回5,000~10,000円台の施設が多いとされている。

相談・診療の種類 費用の目安 注意点
保険適用の遺伝カウンセリング加算 3割負担で3,000円 対象検査や医師・医療機関の施設基準などの条件がある
自由診療の遺伝カウンセリング 5,000~10,000円台 医療機関ごとに料金が異なる
遺伝学的検査 検査内容によって異なる カウンセリング費用とは別料金の場合がある

※2025年1月時点の日本認定遺伝カウンセラー協会の案内を基にした目安。2026年の受診時には医療機関へ最新料金を確認したい。

大切なのは、遺伝カウンセリングを受けたからといって、必ず検査を受けなければならないわけではないことだ。

検査を受けること自体が目的ではなく、自分たちに必要な情報を得て、納得できる判断につなげることが重要になる。

【子育ての実態】障害のある親はどのように育児している?

障害のある人が親になることは、権利として認められている。

一方で、実際に子育てを始めると、日常生活の中でさまざまな課題が生じる。

特に、身体障害と知的障害、精神障害では必要な支援が異なるため、一律の育児モデルでは対応できない。

身体障害のある親が直面しやすい育児の課題

身体障害のある親の場合、身体機能や移動能力に応じた環境整備が重要になる。

例えば、次のような場面で支援が必要になることがある。

- 赤ちゃんを抱き上げる、寝かせる
- 沐浴や着替えをする
- ベビーカーで外出する
- 保育園への送迎をする
- 子どもの通院に付き添う
- 買い物や洗濯、食事の準備をする

視覚障害がある場合には、子どもの様子を把握するための音声機器や触覚を活用した工夫が考えられる。

聴覚障害がある場合には、保育園や学校との連絡に手話、文字情報、音声認識などを利用する方法がある。

車いすを使用する親の場合は、ベビーベッドや家具の配置、移動経路、抱っこの方法などを生活環境に合わせて調整することが役立つ。

大切なのは、親ができないことだけに注目するのではなく、環境や道具、人的支援によってできることを増やす視点である。

知的障害のある親に必要な子育て支援

知的障害のある人の場合、育児に関する情報の理解や、複数の作業を同時に進めることに支援が必要となる場合がある。

例えば、授乳やミルクの準備、薬の管理、子どもの体調変化への対応などである。

この場合、単に説明するだけではなく、実際の育児場面に合わせた支援が有効になる。

- 写真やイラストを使った育児手順書
- ミルクの量や授乳時間を記録する表
- 服薬や通院のスケジュール管理
- 子どもの体調変化を判断するための具体的な説明
- 困ったときに連絡する相手を明確にする
- 定期的な訪問や相談の機会を設ける

本人が理解しやすい方法で情報を伝え、繰り返し練習できる環境を整えることが重要だ。

本人の意思を確認せず、周囲がすべてを決めてしまうことは適切な支援とはいえない。

厚生労働省の調査に見る支援現場の課題

実態を考えるうえで参考になるのが、厚生労働省の関連調査である。

令和6年度の調査研究報告書では、知的障害者の恋愛、結婚、出産、子育てに関する支援の課題が整理されている。

支援機関側の回答61件を対象とした調査では、結婚・出産・子育てに関する課題として、次の結果が示された。

- 経済的な自立に向けた見通しが立たない:60.7%
- 子育てを支える見守り・相談機関が乏しい:52.5%
- 問題が深刻になってから表面化し、支援が難しくなる:44.3%
- 利用できる子育て支援サービスが乏しい:44.3%

この数字から読み取れるのは、妊娠や出産そのものよりも、出産後の生活を継続的に支える体制に課題があるという点だ。

ただし、この結果は全国の障害者本人を対象にした出産率の調査ではない。支援機関側の回答に基づくものであり、障害のある親全体の実態をそのまま表す数字ではない。

実際の支援事例では複数の関係者が協力

厚生労働省の令和5年度調査報告書には、障害のある夫婦や子育て中の家庭への支援事例が掲載されている。

ある事例では、グループホームで生活する女性が出産した後、子どもが長期間保育器に入っていたため、実家の母親と施設の世話人が協力して母乳を病院に届けていた。

産婦人科への受診同行や、育児用品の買い物、子どもの進路選択に関する学校との面談なども支援の対象になっていた。

また、子どもの入浴方法など、本人が初めて経験する育児について、施設職員が一緒に考えながら支援した事例も報告されている。

これは、親だけに育児の責任を負わせるのではなく、本人、家族、福祉事業所、医療機関などが役割を分担することで、子育てを継続できる可能性を示している。

もちろん、これは個別の事例であり、すべての家庭が同じ支援を受けられるわけではない。

【2026年最新】障害のある人が利用できる出産・子育て支援制度

障害のある人の妊娠・出産・育児を支える制度は、一つの窓口だけで完結するものではない。

厚生労働省が示している支援体制は、大きく障害福祉、母子保健、児童福祉の3つに分かれている。

2026年11月時点で確認できる主な制度を、利用する時期ごとに整理する。

1.居宅介護・重度訪問介護による育児支援

身体障害などによって家事や育児が難しい場合、障害者総合支援法に基づく居宅介護や重度訪問介護を検討できる。

厚生労働省は2021年7月12日付の事務連絡で、これらのサービスに含まれる育児支援の取扱いを明確にしている。

対象となるのは、次の条件をすべて満たす場合である。

1. 親が障害によって家事や子どもの付き添いを行うことが難しい。
2. 子どもが一人では対応できない。
3. 他の家族などから支援を受けられない。

具体的には、次のような支援が例示されている。

- 沐浴や授乳
- 乳児の健康状態を把握するための補助
- 子どもの発達を促すための支援
- 保育園や学校との連絡に関する援助
- 子ども分の掃除、洗濯、調理
- 子どもの通院への付き添い
- 保育園への送迎

ここで重要なのは、子ども自身を障害福祉サービスの利用者にするという考え方ではなく、障害のある親が保護者として行う養育を支えるという制度上の位置付けである。

利用には市区町村による支給決定や個別の状況確認が必要になる。

2.こども家庭センターで妊娠前後の相談をする

妊娠を考えている段階から相談できる窓口が、こども家庭センターである。

こども家庭センターは、市区町村の母子保健機能と児童福祉機能を一体化し、妊娠から子育てまで継続的に支援する役割を担う。

相談できる内容には、次のようなものがある。

- 妊娠や出産に関する不安
- 健康管理や妊婦健診についての相談
- 産後の生活設計
- 家事や育児に必要な支援の確認
- 保育所や子育てサービスの利用
- 障害福祉サービスとの連携

2026年2月には、こども家庭センターのガイドラインが改正された。

同ガイドラインでは、妊産婦や子育て家庭の状況を継続的に把握し、必要なサービスを組み合わせてサポートプランを作成する役割が示されている。

障害のある人の場合も、障害福祉の担当者と母子保健の担当者が連携して支援内容を調整することが重要になる。

3.産後ケア事業で出産後の負担を軽減する

出産直後は、身体の回復と新生児の世話が同時に必要になる。

障害のある人に限らず、産後の母親や家族を支える制度として産後ケア事業がある。

主な支援内容は、次のとおり。

- 母親の身体的・精神的な回復を支えるケア
- 授乳や育児に関する相談
- 赤ちゃんの健康状態の確認
- 育児方法の指導や助言
- 宿泊型、通所型、訪問型などのケア

障害のある人は、利用前に必要な介助や設備、コミュニケーション方法について自治体や施設に相談しておくとよい。

利用条件や料金、利用可能な施設は自治体によって異なる。

なお、こども家庭庁は2026年3月に産前・産後サポート事業と産後ケア事業のガイドラインを改定している。

4.子育て世帯訪問支援事業で家事・育児をサポート

子育て世帯訪問支援事業は、家事や育児に不安や負担を抱える家庭を訪問し、生活を支える制度である。

訪問支援員が家庭を訪れ、悩みを聞きながら家事や子育てを支援する。

障害のある親にとっては、次のような場面で利用を検討できる。

- 育児と家事の両立が難しい
- 外出や買い物に支援が必要
- 子どもの世話について相談したい
- 育児の負担が大きく、孤立している
- 家庭内の生活環境を整えたい

この事業は障害者だけを対象にした専用制度ではないが、障害の有無にかかわらず、支援が必要な家庭が対象となり得る。

2026年度の実施要綱は2026年4月8日付で掲載され、こども家庭庁は同年10月にも実施状況の公表資料を更新している。

利用の可否や支援内容は自治体の実施状況、家庭の事情によって異なる。

5.一時預かり・子育て短期支援事業を利用する

育児を一人で抱え込まないためには、子どもを一時的に預けられる制度も知っておきたい。

一時預かり事業では、保育所や認定こども園などで乳幼児を一時的に預かる。

保護者の育児負担を軽減したい場合や、家庭で一時的に保育を行うことが難しい場合に利用を検討できる。

また、子育て短期支援事業では、保護者の疾病や育児疲れなどによって家庭での養育が一時的に難しい場合、児童養護施設や里親などを通じて必要な支援を受けられる仕組みがある。

いずれも利用条件や料金、受け入れ先は自治体によって異なる。

2026年の子育て支援制度・相談先一覧

制度・相談先 主な支援内容 利用を相談する時期
居宅介護・重度訪問介護 家事、授乳、沐浴、通院付き添いなど 妊娠前・出産後
こども家庭センター 妊娠・出産・育児の相談と支援調整 妊娠前から
妊婦健康診査・産前産後サポート 妊娠中の健康管理、相談 妊娠中
産後ケア事業 母親の回復、授乳、育児相談 出産後
子育て世帯訪問支援事業 訪問による家事・育児支援 妊娠中・子育て中
一時預かり事業 乳幼児の一時的な保育 子育て中
子育て短期支援事業 一時的な養育の支援・レスパイト 子育て中

出典:厚生労働省「障害者の出産・子育てに関する主な施策・関係機関」、こども家庭庁の2026年度事業資料。

【失敗しない準備】障害のある人が妊娠・出産・子育てを考える際の相談手順

制度が存在していても、必要なときに適切な窓口につながらなければ十分に活用できない。

特に障害福祉と母子保健の担当部署が別々になっている自治体では、本人が複数の窓口に相談しなければならない場合もある。

そのため、妊娠前から相談先を整理しておくことが大切だ。

ステップ1:かかりつけ医や産婦人科に相談する

まずは現在の健康状態を把握する。

持病や服薬がある場合、妊娠に伴う健康上の注意点や薬剤の変更が必要かを確認する。

障害の種類によっては、産婦人科だけでなく、循環器内科、神経内科、精神科、リハビリテーション科などとの連携が必要になる場合もある。

ステップ2:遺伝の不安があれば専門家に相談する

親の障害が遺伝するか心配な場合は、遺伝カウンセリングを検討する。

診断名や検査結果、家族歴などを整理しておくと相談が進めやすい。

遺伝の可能性を知ることと、子どもを持つかどうかを決めることは別の問題である。

医学的情報を得たうえで、本人とパートナーが納得できる選択をすることが重要になる。

ステップ3:市区町村の障害福祉窓口に相談する

居宅介護や重度訪問介護など、現在利用しているサービスを育児にも活用できるか確認する。

特に、子どもが生まれた後に必要となる支援について、具体的に説明することが役立つ。

例えば、「赤ちゃんを抱き上げるのが難しい」「通院時に付き添いが必要」「保育園への送迎が難しい」など、日常生活で困る場面を整理しておく。

ステップ4:こども家庭センターと支援計画を作る

障害福祉の担当者だけでなく、母子保健や児童福祉の担当者とも相談する。

必要に応じて、保健師、相談支援専門員、医療機関、訪問支援員などが連携する体制を整える。

妊娠中だけでなく、出産直後、乳幼児期、保育園・学校への入園や進学など、生活の変化に合わせて支援内容を見直すことも大切だ。

ステップ5:緊急時の支援先を決めておく

子育てでは、突然の発熱や体調不良、災害、親の入院など、予想できない出来事が起こる。

そのため、次のような項目を事前に確認しておきたい。

- 緊急時に子どもを預けられる場所
- 夜間や休日に相談できる医療機関
- 親が入院したときの養育支援
- 家族や支援者との連絡方法
- 一時預かりや短期支援の利用条件

支援体制は、親が元気なときだけでなく、支援が必要になったときにも機能することが重要である。

【プロの結論】子どもを持つ判断で本当に確認すべきこと

障害のある人が子どもを持つかどうかを考える際、判断基準を「障害があるか、ないか」だけに置くべきではない。

重要なのは、本人の希望、医学的な状況、生活環境、利用できる支援を総合的に確認することである。

具体的には、次の4点が判断の軸になる。

第一に、本人の意思が尊重されているか。

家族や支援者が不安を感じていても、本人の希望を最初から否定するのではなく、必要な情報を分かりやすく提供することが求められる。

第二に、医療面のリスクを具体的に把握できているか。

障害の診断名だけで判断せず、妊娠や出産によって健康状態がどのように変化する可能性があるのか、専門医と確認する。

第三に、日常的な育児支援を確保できるか。

授乳や入浴、通院、送迎、家事など、自分で行うことと他者の助けが必要なことを整理する。

第四に、継続的な相談先があるか。

出産直後だけでなく、子どもが成長した後も支援を受けられる体制を考える。

障害のある親が育児をするうえで、すべてを一人でこなす必要はない。家族、医療、福祉、保育、地域社会が役割を分担することが、本人と子どもの生活を守ることにつながる。

【よくある質問】障害のある人が子どもを持つことに関するFAQ

Q1:障害者は法律上、子どもを作ることを認められていますか?

A1:認められている。障害者権利条約第23条は、障害のある人が他の人と平等に家族を形成し、子どもの数や出産間隔を決定する権利を保障している。障害があるという理由だけで出産を一律に禁止する制度はない。

Q2:障害のある親から子どもに障害は必ず遺伝しますか?

A2:必ず遺伝するわけではない。障害には遺伝的な要因によるものだけでなく、事故や病気、出生前後の要因など、さまざまな原因がある。具体的な遺伝の可能性は、診断名や原因、家族歴などによって異なる。

Q3:知的障害があっても妊娠・出産・子育てはできますか?

A3:知的障害があることだけで妊娠・出産・子育てが禁止されるわけではない。本人の意思を尊重しながら、理解しやすい情報提供や、育児手順の確認、訪問支援などを組み合わせることが考えられる。

Q4:障害者が子育てに使える公的支援はありますか?

A4:ある。居宅介護や重度訪問介護による育児支援、こども家庭センターでの相談、産後ケア、子育て世帯訪問支援事業、一時預かりなどが利用候補となる。利用条件は自治体や個別の状況によって異なる。

Q5:障害者の出産費用や育児費用を国が全額負担してくれますか?

A5:障害があることだけを理由に、出産や育児の費用がすべて無料になる全国一律の制度があるわけではない。一般の妊産婦向け給付や自治体の助成、障害福祉サービスなどを組み合わせて利用することになる。

Q6:遺伝カウンセリングはどこで受けられますか?

A6:遺伝カウンセリングを実施する大学病院や総合病院などで相談できる。臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが在籍する施設を探し、予約方法や費用、紹介状の必要性を事前に確認するとよい。

Q7:障害のある親が子育てに困ったとき、最初にどこへ相談すればよいですか?

A7:妊娠や子育て全般については市区町村のこども家庭センター、生活や介助については障害福祉担当窓口や相談支援事業所が相談先となる。両方の窓口に相談し、連携してもらう方法もある。

まとめ:障害のある人の出産と子育ては社会全体で支える課題

障害のある人が子どもを持つことは、法律や国際条約によって保障されている家族形成の権利に関わる問題である。

障害があるからといって、妊娠や出産、子育てを一律に諦める必要はない。

一方、医学的なリスクや育児上の困難が生じる可能性は、障害の種類や本人の健康状態、生活環境によって異なる。遺伝についても、障害という言葉だけで確率を判断することはできず、必要に応じて専門家の評価を受けることが大切だ。

2026年には、厚生労働省やこども家庭庁による支援体制の整備が進み、居宅介護、産後ケア、こども家庭センター、訪問支援、一時預かりなど、活用できる仕組みが整理されている。

ただし、制度が存在することと、すべての地域で十分な支援を受けられることは同じではない。自治体によってサービスの実施状況や受け入れ体制には違いがある。

これから求められるのは、障害のある人の出産や子育てを特別な問題として遠ざけるのではなく、本人の意思を尊重しながら、必要な医療・福祉・保育サービスを切れ目なく提供する仕組みである。

子どもを持つかどうかを決めるのは本人であり、その選択を支える環境を整えることが、社会に求められている。


主な参考資料
- 外務省「障害者の権利に関する条約」第23条
- 厚生労働省「障害者の希望を踏まえた結婚、出産、子育てに係る支援の推進について」(2024年6月5日)
- 厚生労働省「障害者の出産・子育てに関する主な施策・関係機関」
- 厚生労働省「障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる『育児支援』の取扱いについて」(2021年7月12日)
- 厚生労働省「障害者が希望する地域生活を送るための意思決定支援等の取組に関する調査研究」(2024年3月)
- 厚生労働省「知的障害者の恋愛、結婚等に係る情報提供、相談支援等に関する調査研究」(2025年3月)
- こども家庭庁「こども家庭センターガイドライン」(2026年2月改正)
- こども家庭庁「産前・産後サポート事業及び産後ケア事業ガイドライン」(2026年3月)
- 日本認定遺伝カウンセラー協会「遺伝学的検査・遺伝カウンセリングの費用」

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黒岩 雅也

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