2026年の記録的な高温を理解するには、地上の気温だけでなく、日本列島を取り巻く上空の大気の流れを見る必要があります。
気象庁が2026年9月1日に公表した「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会」の分析では、偏西風の大きな蛇行と、チベット高気圧を含む背の高い高気圧の張り出しが、西日本を中心とする高温の重要な要因として挙げられました。
原因1:偏西風が平年より北側を流れた
偏西風は、主に中緯度の上空を西から東へ吹く強い風です。
この風の流れる位置が北側に偏ると、日本付近の大気の流れや気圧配置が変化します。
2026年夏は、日本付近で偏西風が平年より北側を流れやすくなり、北日本や西日本を中心に暖かい空気に覆われる日が多くなりました。
特に西日本では、偏西風の北への蛇行によって上空の高気圧が張り出し、高温が続きやすい環境が形成されました。
原因2:チベット高気圧と太平洋高気圧が重なった
2026年の猛暑を考えるうえで重要なのが、チベット高気圧と太平洋高気圧の関係です。
チベット高気圧は、上空の対流圏上層に広がる高気圧です。一方、太平洋高気圧は、日本の夏の天候に大きく関係する下層の高気圧です。
この2つの高気圧が日本付近に張り出すと、上空から地上付近まで高気圧に覆われる状態になりやすくなります。
2026年7月下旬から8月初めの西日本では、次のような仕組みで気温が上昇しました。
1. 偏西風が北側に蛇行し、上空のチベット高気圧が西日本付近に張り出す。
2. 太平洋高気圧も日本付近に張り出し、背の高い高気圧に覆われる。
3. 下降気流が強まり、空気が下降する際に圧縮されて温度が上がる。
4. 晴天による強い日射と、太平洋高気圧の縁を回る暖かい空気の流入が重なる。
このような複数の条件が重なり、地上の気温が極端に高くなりました。
原因3:地球温暖化による気温の底上げ
もう一つ無視できないのが、地球温暖化の影響です。
気象庁の異常気象分析検討会では、2026年7月中旬から8月上旬にかけての西日本の高温について、イベント・アトリビューション解析を実施しました。
その結果、地球温暖化がなかったと仮定すると、この期間の西日本の高温はほぼ発生し得なかったことが示されました。
これは、偏西風や高気圧といった自然の大気現象だけではなく、地球温暖化による大気全体の気温上昇も高温の発生に寄与したことを意味します。
つまり、2026年の猛暑は、自然の気圧配置と長期的な気候変動が重なって発生した現象です。
エルニーニョ現象と2026年の夏の関係
2026年は春からエルニーニョ現象が発生しているとみられ、気象庁の分析によると、7月の太平洋赤道域東部の海面水温は基準値より+2.5℃となりました。
これは1997年と並び、7月として過去最大の高温偏差です。
気象庁は、夏の台風発生数が多かった背景の一つとして、偏東風波動の活動が活発だったことを挙げ、その背景に顕著なエルニーニョ現象があったと分析しています。
ただし、エルニーニョだけを2026年の猛暑の原因とすることはできません。高温については偏西風の蛇行、高気圧の張り出し、地球温暖化などを総合的に見る必要があります。
【2025年と2026年を比較】全国平均は下がっても酷暑日は増えた

2026年の夏を正しく評価するには、記録的な猛暑となった2025年との比較が欠かせません。
2025年は日本の夏の平均気温が平年差+2.36℃となり、1898年の統計開始以降で最高を記録しました。
一方、2026年は+1.02℃で歴代5位です。全国平均だけを比べれば、2026年は前年より暑さが和らいだことになります。
しかし、極端な高温の発生状況には違いがありました。
2025年と2026年の主な気温データ
| 比較項目 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 夏の平均気温の平年差 | +2.36℃ | +1.02℃ |
| 夏の平均気温ランキング | 1位 | 5位 |
| 7月の平均気温偏差 | +2.89℃ | +1.66℃ |
| 8月の平均気温偏差 | +1.84℃ | +0.95℃ |
| 猛暑日の延べ地点数 | 9,385 | 約7,500 |
| 酷暑日の延べ地点数 | 30 | 36 |
出典:気象庁、日本気象協会の公表資料。猛暑日・酷暑日の延べ地点数は各年の夏の集計。
2025年は広範囲で猛暑、2026年は局地的な酷暑が目立った
2025年は、全国的に高温が続きました。
気象庁によると、北日本の夏の平均気温は平年差+3.4℃、東日本は+2.3℃、西日本は+1.7℃でした。いずれも1946年の統計開始以降で夏として最高となっています。
加えて、全国153の気象台などのうち132地点で夏の平均気温が歴代1位を記録しました。
それに対して2026年は、北日本と西日本の平年差が+1.2℃、東日本が+0.8℃という地域差のある結果でした。
一方、40℃以上の酷暑日は2025年の延べ30地点から2026年の延べ36地点へ増加しています。
この違いから読み取れるのは、猛暑の評価には複数の指標が必要だということです。
- 全国平均気温を見ると、2025年の方が暑かった。
- 猛暑日の延べ地点数も、2025年の方が多かった。
- 40℃以上の酷暑日の延べ地点数は、2026年の方が多かった。
つまり、2025年は広範囲に高温が続いた夏、2026年は全国平均の上昇幅が縮小した一方で、局地的な極端な高温が目立った夏と整理できます。
【プロの結論】夏の平均気温だけで猛暑の危険度を判断しない
2026年のデータから得られる重要な教訓は、全国平均気温の順位と、実際に生活する地域の暑さは必ずしも一致しないという点です。
例えば、全国平均が前年より低くても、自分の住む地域で40℃を超える日が発生する可能性はあります。
暑さの状況を正しく把握するには、次の3つの指標を使い分ける必要があります。
① 平年差:長期的な気温の変化や、その年の夏全体の特徴を把握する。
② 猛暑日・酷暑日の日数:生活圏で危険な高温がどの程度繰り返されたかを確認する。
③ 地域別の気温:全国平均では見えない、住んでいる地域の暑さを把握する。
特に、農業、屋外作業、通学、スポーツ、介護など、暑さの影響を受けやすい生活環境では、全国ランキングよりも地域ごとの最高気温や熱中症警戒情報を優先することが大切です。
【よくある質問】2026年夏の気温に関するFAQ
Q1:2026年の夏の平均気温は過去最高だった?
A1:過去最高ではありません。平年差+1.02℃で、1898年の統計開始以降5番目の高さでした。最高記録は2025年の+2.36℃です。
Q2:2026年7月と8月はどちらが暑かった?
A2:全国平均の平年差では7月の方が高温でした。7月は+1.66℃で歴代4位、8月は+0.95℃で歴代7位です。ただし、8月下旬の西日本では平年差+2.5℃となり、同時期として過去最高を記録しました。
Q3:2026年に40℃以上を記録した場所はどこ?
A3:静岡県浜松市佐久間、愛知県豊田市、岐阜県多治見市、三重県桑名市、大分県日田市、福岡県久留米市などです。夏全体では全国22地点で、延べ36地点の酷暑日が観測されました。
Q4:2026年の猛暑の主な原因は何?
A4:偏西風が平年より北側を流れやすかったこと、チベット高気圧と太平洋高気圧の張り出し、地球温暖化による大気全体の気温上昇などが重なったことです。
Q5:2025年と2026年はどちらが暑かった?
A5:全国平均気温では2025年の方が高温でした。しかし、40℃以上の酷暑日の延べ地点数は2026年が36地点、2025年が30地点で、2026年の方が多くなっています。
まとめ:2026年夏は歴代5位、局地的な40℃超えにも警戒が必要
2026年の日本の夏は、全国平均気温の平年差が+1.02℃となり、1898年以降で歴代5位の高温を記録しました。
7月は+1.66℃で歴代4位、8月は+0.95℃で歴代7位。北日本と西日本では平年差+1.2℃となり、特に西日本は1946年以降で3番目に高い夏でした。
また、40℃以上を記録した地点は22地点、延べ36地点に達し、2010年以降で最多となりました。
2025年と比較すると、全国平均の暑さは弱まった一方、局地的な酷暑の発生は増えています。偏西風の北偏、チベット高気圧と太平洋高気圧の影響、地球温暖化など、複数の要因が重なった結果です。
2026年の猛暑を理解するうえで大切なのは、全国平均の順位だけでなく、地域差と極端な高温の発生状況を併せて見ることです。
今後も気象庁の季節統計や地域別の観測データを確認し、暑さの長期的な変化と日々の熱中症リスクを分けて捉える必要があります。2026年の記録は、日本の夏の気温を考えるうえで重要な節目となりました。