デロイト トーマツ グループが2026年8月26日に公表した「2026年度 国内消費者意識・購買行動調査」も、興味深い結果を示しています。
同調査は2026年4月下旬、全国の20~79歳の男女5,000人を対象に実施されました。今後、消費額を増やしたいものについて、「増やしたいものはない」と回答した人は43%。前年の47%からは4ポイント低下したものの、依然として最も多い回答でした。
一方、消費者が一律にお金を使わなくなったわけではありません。消費額を増やしたい項目では国内旅行が23%で最も高く、貯蓄・投資、食料品が続きました。衣料品や化粧品、外食では自分へのご褒美、旅行やコンサートでは思い出に残る体験や趣味の充実が支出理由の上位に挙がっています。
この結果から見えてくるのは、欲しいものがないというよりも、お金を使う対象を以前より慎重に選ぶ消費者の姿です。安いから買う、流行しているから買うという行動から、自分の満足度に結び付くものを選ぶ方向へと変化しています。
デロイトの調査では、節約と贅沢のメリハリをつける価値観が定着していることも報告されています。物欲が弱くなったように感じても、旅行や食事、生活の質を高める支出には関心がある人も少なくありません。
こうした傾向は、単純な消費離れという言葉だけでは説明できないものです。
【心理を徹底分析】欲しいものがない理由は?物欲がなくなる5つの原因

欲しいものがない心理を理解するには、「商品を欲しいと思わない状態」と「何かを楽しみにする気持ちそのものが弱くなっている状態」を区別する必要があります。
前者は価値観や生活環境の変化で自然に起こり得ます。後者は心身の疲労や健康状態が関係している可能性もあります。
1.節約志向が強まり、お金を使うことに慎重になっている
物価上昇や将来への不安があると、欲しいと思った商品があっても、購入する理由を考えるようになります。
「今買わなくても困らない」「貯金に回した方が安心」「値下がりするまで待ちたい」と考えることが増えれば、買い物への積極性は自然と低下します。
特に、家賃や住宅ローン、食費、光熱費などの固定的な支出が増えると、自由に使えるお金の範囲は狭くなります。物欲がなくなったように見えても、実際には購入を控える判断が習慣化している場合があります。
博報堂生活総研の2026年11月調査で、金銭的な理由による節約・我慢の回答が増えていることも、この背景と重なります。
2.すでに生活に必要なものがそろっている
生活必需品や趣味の道具、洋服、家電などが一通りそろっていれば、新しい商品を購入する必要性は低くなります。
以前は新しいスマートフォンや洋服を手に入れることが楽しみだった人も、現在の持ち物に不満がなければ買い替えたいとは思わなくなるものです。
これは必ずしも物事への関心が薄れたわけではありません。自分の生活に必要なものを把握し、満足できる状態になったという可能性があります。
むしろ、持ち物を増やすよりも、今あるものを長く使いたいという価値観に変化しているの可能性があります。
3.物よりも経験や時間に価値を感じるようになった
年齢や生活環境が変わると、お金を使いたい対象も変わります。
以前はブランド品や最新家電に関心があった人が、旅行、外食、趣味、家族や友人との時間を優先するようになることもあります。
例えば、次のような変化です。
- 洋服を買うより、旅行に出かけたい。
- 新しい家具を買うより、自宅でゆっくり過ごしたい。
- 高価なアクセサリーより、好きな人との食事を楽しみたい。
- 流行の商品を追いかけるより、自由な時間を増やしたい。
- 持ち物を増やすより、健康や睡眠にお金を使いたい。
これは物欲が消えたというより、満足感を得る方法が変化した状態です。
デロイトの2026年度調査でも、旅行やイベントなどでは、思い出に残る体験や趣味・余暇の充実が支出を増やしたい理由として挙げられています。
4.仕事や日常生活の疲れで、新しいことを考える余裕がない
仕事や家事、人間関係などに追われていると、買い物を楽しむための精神的な余裕がなくなることがあります。
欲しいものを探すには、商品を調べ、価格を比較し、購入するかどうかを判断する必要があります。疲れていると、こうした選択そのものが負担になりがちです。
特に、毎日忙しく過ごしている人は、休日に何かを買いに出かけるよりも、家で休むことを優先する場合があります。
この場合、必要なのは新しい買い物のきっかけではなく、休息や生活リズムの見直し可能性があります。
5.SNSや広告で多くの商品を見すぎて、欲しいものを決められない
インターネットには、洋服、コスメ、家電、インテリア、旅行商品など、膨大な選択肢があります。
選択肢が増えることは便利ですが、情報が多すぎると、何を選べばよいのか分からなくなることもあります。
比較しているうちに、どの商品にも決め手を感じなくなったり、購入後にもっと良い商品が見つかるのではないかと考えたりするためです。
また、SNSで紹介される人気商品を見ても、自分の生活に必要だと思えなければ、購入意欲にはつながりません。
他人の欲しいものと自分の欲しいものは違います。情報を追いかける時間を減らすことが、自分の好みを取り戻すきっかけになる場合もあります。
【年代別・比較表】欲しいものがない20代・30代と2026年の消費心理
欲しいものがないという悩みは、20代や30代にも見られます。ただし、年齢だけで物欲の強さを決めることはできません。
2026年度のデロイト調査では、今後消費額を増やしたいものについて「増やしたいものはない」と回答した割合は、20代で34%、30代で40%でした。全体の43%と比べると、若年層では比較的低い水準です。
ここで注意したいのは、この質問が「欲しい商品が一つもないか」ではなく、「今後、消費額を増やしたいものがあるか」を尋ねたものだという点です。欲しいものがない人の割合と、そのまま読み替えることはできません。
2026年の主要調査から見る消費意識の比較
| 調査・対象 | 主な結果 | 読み取れる消費心理 |
|---|---|---|
| 博報堂生活総研・2026年11月 | 消費意欲指数46.6点 | 消費意欲は前年並みで、物価高と節約意識が継続。 |
| 博報堂生活総研・2026年11月の自由回答 | 「欲しいものがない・意欲がない」は313件 | 前年同月の360件から減少。 |
| デロイト・全体 | 消費額を増やしたいものがない人は43% | 将来の支出拡大に慎重な姿勢が残る。 |
| デロイト・20代 | 同回答は34% | 全体と比較して消費に前向きな傾向。 |
| デロイト・30代 | 同回答は40% | 若年層でも支出対象を選ぶ姿勢が見られる。 |
| 博報堂生活定点・2026年 | 欲しいもののために生活を削る派49.2%、諦める派50.8% | 欲しいものと日常生活のバランスを重視する意識が拮抗。 |
博報堂生活総研の生活定点は1992年から隔年で続く意識調査です。2026年の結果では、欲しいもののために生活の何かを削る人と、生活を削るくらいなら欲しいものを諦める人が、ほぼ半数ずつに分かれました。
この数字は、欲しいものを手に入れることよりも、普段の暮らしとのバランスを大切にする人が一定数いることを示しています。なお、博報堂の月次調査、生活定点、デロイトの年次調査は、それぞれ質問内容や調査設計が異なるため、単純な順位付けには適しません。
欲しいものがない20代は何を重視している?
20代は、仕事や人間関係、住まい、趣味など、生活の基盤を作っている途中の人も多い年代です。
そのため、目立つ商品を購入することよりも、日々の生活を充実させることに関心が向く場合があります。
デロイトの2026年度調査では、20代の消費意向について、国内旅行や貯蓄・投資への意向が低下する一方、食料品への消費意向が高まったと報告されています。
これは、若い世代が必ずしも消費に消極的になっているわけではなく、日常生活に直結するものを重視している可能性を示しています。
20代で買いたいものが思いつかない場合は、流行の商品を探すよりも、毎日の生活で不便に感じていることや、時間を使いたい趣味を考えてみるとよいでしょう。
欲しいものがない30代は価値観の変化も関係する
30代は、仕事上の責任や生活環境の変化などによって、お金の使い方を見直す機会が増える年代です。
住居費や生活費、将来への備えなどを意識するようになり、衝動買いよりも長く使えるものを選ぶようになる人もいます。
一方で、自分の好みが明確になり、以前よりも購入する商品を厳選できるようになったとも考えられます。
欲しいものがない30代にとって、無理に新しい趣味や物欲を作る必要はありません。現在の暮らしで満足していることと、改善したいことを分けて考えることが大切です。
誕生日やプレゼントで欲しいものがないときは?
自分の買い物なら問題なくても、誕生日やクリスマス、記念日などに「何が欲しい?」と聞かれると困る人もいます。
相手に気を遣わせたくない、必要なものは自分で購入している、欲しい商品が特にないなど、理由はさまざまです。
そんなときは、プレゼントを必ずしも形のある商品に限定する必要はありません。
- 体験型:旅行、映画、コンサート、レストランでの食事。
- 消耗品:普段使っている食品、飲み物、入浴用品。
- 実用品:日常生活で使うタオル、寝具、生活用品。
- 時間:一緒に過ごす休日や、ゆっくり食事をする時間。
- 選択の自由:商品券やギフトカードなど、自分で選べるもの。
どうしても思いつかないなら、「今は特にないから、一緒に食事に行けたらうれしい」と伝える方法もあります。
プレゼントは欲しいものを無理に指定するイベントではありません。贈る側と受け取る側の双方が気持ちよく過ごせることを優先しましょう。
【実践編】欲しいものが思いつかないときの対処法7選
欲しいものがない状態を無理に変える必要はありません。ただ、何か新しい楽しみを見つけたい、自分の好みを再確認したいという人は、次の方法を試してみてください。
1.欲しいものではなく、困っていることを探す
「何が欲しい?」と自分に問いかけても答えが出ないときは、質問を変えてみましょう。
例えば、「毎日の生活で面倒に感じることは何か」「もっと快適にしたいことは何か」と考えます。
朝の準備を楽にする家電、疲れにくい寝具、収納用品など、生活の不便を解消するものが見つかる可能性があります。
欲しい商品から探すのではなく、解決したい問題から考える方法です。
2.物ではなく体験に目を向ける
買いたいものがないなら、商品以外の楽しみを考えてみましょう。
行ってみたかった場所を訪れる、新しい料理を体験する、好きなアーティストのライブに行くなど、体験には形として残らなくても思い出になる価値があります。
デロイトの調査でも、旅行やイベント・コンサートでは、思い出に残る体験や趣味・余暇の充実が消費を増やしたい理由として挙がっています。
3.過去に夢中になったことを振り返る
現在は物欲がなくても、以前は好きだったものがある可能性があります。
学生時代に好きだった音楽、子どもの頃に楽しんだスポーツ、昔集めていた本や雑貨などを思い出してみましょう。
当時の趣味をそのまま再開する必要はありません。今の自分に合う形に変えてみるだけでも、新しい関心が生まれることがあります。
4.SNSやネットショッピングを見る時間を減らす
商品情報を見続けても、必ずしも欲しいものが見つかるとは限りません。
むしろ、他人の買い物や流行を見続けることで、自分が本当に必要としているものが分からなくなる場合があります。
一度、通販サイトの閲覧やSNSの商品紹介から距離を置いてみるのも一つの方法です。
情報を減らすことで、自分の生活に必要なものを落ち着いて考えられるようになります。
5.欲しいものリストを作り、すぐに買わない
何か気になる商品を見つけたら、すぐに購入せず、メモに残しておきます。
数日から数週間たっても欲しいと思うなら、購入を検討してもよいでしょう。反対に、時間がたつと興味がなくなるなら、今すぐ必要なものではなかったと判断できます。
購入を急がず、自分の気持ちを確認するための方法です。
6.自分が満足できるお金の使い方を整理する
お金を使う目的は人によって違います。
例えば、次のような項目から、自分が価値を感じるものを考えてみてください。
- 生活を便利にするもの
- 健康や睡眠を改善するもの
- 旅行や趣味などの体験
- 家族や友人との時間
- 学習やスキルアップ
- 将来の安心につながる貯蓄や投資
何にお金を使うと満足できるのかが分かれば、買いたいものがないことを必要以上に気にする必要もなくなります。
7.何も買わない期間を作ってみる
欲しいものがないときは、あえて買い物をしない期間を作るのも有効です。
買わない生活を続けることで、本当に必要なものと、何となく欲しいと思っていたものを区別しやすくなります。
その間に、家の中を整理したり、持っているものを使い直したりするのもおすすめです。
物を増やさなくても、暮らしの満足度を高める方法はあります。
【プロの結論】物欲がないことは問題ではない?見極めたい3つの判断基準
欲しいものがないという状態は、それだけで問題があるわけではありません。大切なのは、物欲がないことによって自分の生活や気持ちにどのような変化が起きているかです。
判断の要点は、大きく3つあります。
判断基準1.物欲だけがなく、日常生活は楽しめているか
買い物には興味がなくても、旅行や食事、映画、友人との会話、趣味などを楽しめているなら、価値観の変化や生活への満足が背景にある可能性があります。
この場合、無理に物欲を取り戻そうとする必要はありません。
物を買うことだけが楽しみではないため、今の生活に満足できているなら、その状態を大切にしてよいでしょう。
判断基準2.以前好きだったことにも興味がなくなっていないか
注意したいのは、買い物だけでなく、以前好きだった趣味や人との交流、食事、外出などにも興味を持てなくなっている場合です。
厚生労働省の情報によると、うつ病では、これまで楽しめていたことに興味や喜びを感じなくなることや、疲れやすさ、意欲の低下、睡眠や食欲の変化などが現れることがあります。
厚生労働省の若者向けメンタルヘルス情報では、憂うつな気分や興味・喜びの喪失など、一定の症状が2週間以上続く場合には専門家への相談が勧められています。
もちろん、欲しいものがないという理由だけで、うつ病と判断することはできません。ただし、何をしても楽しくない、慢性的に疲れている、眠れない、日常生活に支障が出ているといった変化が重なっているなら、心療内科や精神科、かかりつけ医などに相談することを検討してください。
特に、自分を傷つけたい気持ちや死にたい気持ちがある場合は、我慢せず、すぐに身近な人や医療機関などに助けを求めてください。
判断基準3.欲しいものがないことに焦りを感じていないか
誕生日やクリスマスに欲しいものがないと、周囲と比べて自分はつまらない人間なのではないかと感じることがあります。
しかし、物欲の強さと人生の充実度は別のものです。
高価なものを買うことが好きな人もいれば、必要最低限の持ち物で快適に暮らしたい人もいます。どちらが正しいということではありません。
大切なのは、周囲の消費スタイルに合わせるのではなく、自分が納得できるお金の使い方を選ぶことです。
2026年の消費動向からも、消費者が一律に買い物をやめているのではなく、物価高や将来不安を踏まえながら、満足度の高い支出を選んでいる姿が見えてきます。
【よくある質問】欲しいものがないことに関するFAQ
Q1:欲しいものがないのはおかしいことですか?
いいえ、おかしいことではありません。生活に必要なものがそろっていたり、物よりも体験や時間に価値を感じていたりすると、物欲が弱くなることがあります。日常生活を楽しめているなら、無理に欲しいものを探す必要はありません。
Q2:物欲がなくなったのは年齢のせいですか?
年齢だけが原因とは限りません。生活環境、経済状況、価値観、仕事の忙しさなど、さまざまな要因が関係します。20代や30代でも、購入する商品を厳選したり、体験や貯蓄を優先したりする人はいます。
Q3:誕生日に欲しいものがない場合、何をリクエストすればよいですか?
無理に商品を指定する必要はありません。食事や旅行などの体験、日常的に使う消耗品、商品券などを候補にできます。特に希望がなければ、一緒に過ごす時間をプレゼントにしてもらう方法もあります。
Q4:欲しいものが思いつかないときはどうすればよいですか?
商品を探すのではなく、生活で不便に感じていることや、やってみたい体験を考えてみましょう。過去に好きだった趣味を振り返ったり、SNSや通販サイトから少し距離を置いたりすることもおすすめです。
Q5:欲しいものがないのは、うつ病のサインですか?
欲しいものがないという状態だけでは判断できません。ただし、以前好きだったことにも興味がなくなり、憂うつ感、疲労、睡眠や食欲の変化などが続く場合は、心身の不調が関係している可能性があります。症状が続いたり生活に支障が出たりする場合は、医療機関に相談してください。
まとめ:欲しいものがない自分を否定せず、本当に大切な価値を見つけよう
欲しいものがない理由には、節約志向、価値観の変化、生活への満足、仕事や日常生活の疲労など、さまざまな要因があります。
2026年の博報堂生活総研の消費意欲指数は11月に46.6点となり、デロイトの国内消費者意識・購買行動調査では、今後消費額を増やしたいものがない人が全体の43%を占めました。一方で、旅行や食事、趣味、生活の質を高める支出には関心が向けられています。
この動きから分かるのは、物を買うこと自体が目的ではなく、自分にとって価値のあるものを選ぶ意識が強まっているということです。
欲しいものがないなら、無理に探す必要はありません。今の暮らしに満足しているのか、疲れていて余裕がないのか、それとも物以外に楽しみを見つけているのかを考えてみましょう。
本当に大切なのは、欲しいものをたくさん持つことではなく、自分が心地よく暮らせる選択をすることです。 買わないことも、体験にお金を使うことも、将来のために貯蓄することも、自分で納得して選んだなら立派な消費のあり方です。
物欲がない今の自分を否定せず、自分にとっての「欲しい」をゆっくり見つけていきましょう。
主な参考資料
- 博報堂生活総合研究所「来月の消費予報・2026年11月」(2026年10月30日発表)
- デロイト トーマツ グループ「2026年度 国内消費者意識・購買行動調査」(2026年8月26日発表)
- 博報堂生活総研「生活定点1992-2026」
- 厚生労働省「こころもメンテしよう」「こころの耳」