ワカケホンセイインコへの対応で、まず見直したいのが人間による餌やりだ。かわいらしい姿を見て餌を与えたくなる人もいるが、野生化した外来種に継続的に餌を提供することは、地域への定着を助ける可能性がある。
日本鳥類保護連盟が餌台の自粛を呼びかける理由
日本鳥類保護連盟は、ワカケホンセイインコへの餌台の自粛を呼びかけている。
同連盟の調査では、民家などに設置された餌台の食べ物に、季節を問わず依存する行動が確認されている。餌を簡単に得られる環境は、個体数の増加を後押しする要因になり得る。
加えて、餌台で新しい食べ物を覚えた個体が、それまで利用していなかった食物にも関心を示すようになれば、農作物への被害につながる可能性もある。
そのため、野生のワカケホンセイインコをかわいがる目的で餌を与えるのではなく、餌台を撤去する、屋外に食べ物を放置しないといった対応が望ましい。
特定外来生物ではない?2026年の法的な位置づけ
ワカケホンセイインコをめぐる議論で誤解されやすいのが、外来種としての法的な分類だ。
2026年9月11日に改訂された環境省の「生態系被害防止外来種リスト」では、ワカケホンセイインコは防除検討外来種として掲載されている。定着段階は「定着初期/限定分布」に分類されている。
一方、外来生物法に基づく「特定外来生物」とは別の扱いだ。つまり、特定外来生物に指定されていないからといって、生態系への影響がないと評価されているわけではない。国の外来種対策において、注意を要する対象として整理されている。
捕獲や駆除は個人の判断で行えるのか
答えは、原則として自由には行えない。
環境省によると、鳥獣保護管理法では、野生鳥獣の捕獲や殺傷、鳥類の卵の採取は、狩猟による場合などを除き、原則禁止されている。被害防止や学術研究などの目的で捕獲する場合も、原則として環境大臣または都道府県知事などの許可が必要になる。
したがって、住宅に飛来する個体を住民が勝手に捕まえたり、巣や卵を処分したりすることは避けなければならない。被害が発生している場合は、自治体の環境担当部署や鳥獣保護管理の担当窓口に相談するのが適切だ。
ねぐらを追い払えば解決するわけではない
集団ねぐらに集まる個体を一度に追い払えば、問題が解決するように思えるかもしれない。しかし、ねぐらへの強い攪乱には別のリスクがある。
日本鳥類保護連盟の松永聡美氏による外来鳥類対策の解説では、ワカケホンセイインコは飛翔能力が高く、ねぐらで一斉に捕獲することは容易ではないと説明されている。加えて、追い払いや駆除によってねぐらが分散すると、別の場所に新しいねぐらが形成され、行動圏が広がる可能性がある。
その結果、従来は被害がなかった住宅地などに個体群が移動し、問題が別の地域へ移ることも考えられる。単純な追い払いだけでなく、個体数の継続調査、餌資源の管理、繁殖場所の競合状況の把握を組み合わせた対策が必要だ。
ワカケホンセイインコの管理は、鳥を排除することだけを目的にするのではなく、在来生物と住民の生活環境を守りながら、個体群の変化を長期的に管理する課題として考える必要がある。
【ワカケホンセイインコの分布地域は?】東京以外にも生息しているのか

ワカケホンセイインコは東京だけの問題ではない。過去には全国各地で野生個体が確認され、繁殖記録も残っている。
環境省が2026年9月に改訂した外来種リストでは、国内の分布記録として、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、岐阜、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、愛媛、佐賀、宮崎の18都府県が挙げられている。
ただし、この一覧は各地域における記録を示すもので、18都府県すべてに現在も安定した繁殖個体群が存在するという意味ではない。同リストの説明では、近年の確認地域は東京都の大田区・新宿区・南西部や神奈川県の一部に限られるとされている。
また、国立環境研究所の侵入生物データベースも、近年は関東以外ではほとんど見られない状況を紹介している。
このことから、2026年の東京近郊4500羽という報道は、全国各地に一斉に個体群が広がっているというより、関東の既存個体群の規模や都市生活への影響が大きな焦点になっていることを示している。
【よくある質問】ワカケホンセイインコ大量発生に関するFAQ
Q1:ワカケホンセイインコは2026年現在、日本に何羽いる?
A1:2026年11月の報道では、東京近郊に4500羽以上いるとされている。ただし、全国の確定総数ではない。日本鳥類保護連盟などの過去の調査では、2021年8月に2120羽という記録もある。調査範囲や季節、集計方法が異なるため、単純な増加率は算出できない。
Q2:ワカケホンセイインコの集団ねぐらは東京のどこにある?
A2:住宅地、公園、大学キャンパス、農耕地などにあるまとまった緑地が利用されている。具体的なねぐらの位置は、鳥への攪乱や生息域の拡大を防ぐ観点から、調査資料では公表されていない。
Q3:ワカケホンセイインコを見つけたら捕まえてもいい?
A3:許可なく捕獲・殺傷することは原則できない。鳥獣保護管理法による規制があるため、被害が発生している場合は自治体の担当窓口に相談する。餌を与えたり、自宅に連れ帰ったりせず、距離を保って観察するのが適切だ。
まとめ:4500羽超の背景にある都市環境と外来種管理の課題
2026年11月に報じられた東京近郊4500羽以上という数字は、ワカケホンセイインコが都市部で無視できない規模の個体群を形成していることを示す重要な情報だ。
その背景には、1960年代後半からのペットブーム、1970年に確認された野生化、都市公園や住宅地に残る大木、豊富な餌、樹洞を利用する繁殖生態、集団ねぐらを形成する習性がある。
一方、全国的に急増していると断定できるデータはなく、東京近郊の推計値と過去の調査結果を区別して理解することが欠かせない。
今後の注目点は、大きく3つある。
- 個体数の継続調査:ねぐらの分散や季節変動を考慮した調査によって、実際の個体数と増加傾向を把握する。
- 在来生態系への影響:ムクドリなどの樹洞性鳥類との営巣競争や、農作物・都市の緑地への影響を検証する。
- 住民と行政の連携:餌やりの自粛、騒音・フン害への対応、法令に沿った適切な個体群管理を進める。
ワカケホンセイインコは、もともと人間がペットとして日本に持ち込んだ鳥だ。その個体が野生化し、半世紀以上を経て都市の生態系や住民の暮らしに影響を及ぼしている。
大切なのは、鳥そのものを一方的に悪者にすることではない。人間の飼育・放逐に端を発した問題を、科学的な調査と適切な管理によって解決していくことだ。2026年以降、日本鳥類保護連盟や大学研究者によるモニタリングがどのような成果を示すのか、今後の動向が注目される。