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それにつけてもの意味や使い方とは?語源から例文・類語との違いまで徹底解説

高村 美里 高村 美里 • 更新: • 公開: • 読了約 10 分
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日常会話やコラム、ビジネスの雑談、さらには文芸作品に至るまで、日本語の文脈を滑らかにつなぐ接続表現として根強い存在感を放つ言葉が「それにつけても」です。何気なく使っているフレーズでありながら、いざ改まった文章で用いるとなると「正しい文脈で使えているだろうか」「目上の相手に失礼にならないか」と迷う場面も少なくありません。

言葉の成り立ちを紐解くと、平安・鎌倉期の古典文学にまで遡る深い歴史を持ち、前述の事柄を受けて後の感慨を深める独自の機能を持っています。本稿では、主要な国語辞典の記述や古典の用例を基盤に、「それにつけても」の正確な意味や語源、現代における実用的な例文、そして類似表現との使い分けを分かりやすく解き明かします。

「それにつけても」の辞書的定義と基本構造を読み解く

それにつけても

まずは国語辞典や語彙データベースにおける基本的な定義から確認していきましょう。漢字表記では「其につけても」と書かれ、文法的には指示代名詞「それ(其れ)」に、関係や付随を表す動詞「つく(付く)」の連用形「つけ」、接続助詞「て」、係助詞「も」が重なった複合的な接続表現です。

日本国語大辞典やコトバンクの解説によると、本表現は「あとの事柄を、前述の事柄と特に関連づけて導くとき」、あるいは「それによっていっそう」という強調のニュアンスを伴って用いられます。また、Weblio辞書などの用例解説でも指摘されている通り、「そのことと関連しても」「前の話題を踏まえた上で、なおさら」と、話の焦点を前後の連動性に置く働きを持ちます。

単なる「しかし(逆接)」や「だから(順接)」と異なり、前に提示された出来事や情景を一旦受け止めたうえで、話し手の感慨や思考を一段階深めるクッションの役割を果たすのが大きな特徴です。

古典・語源に見る「其につけて」「其につけても」の歴史的変遷

この表現の原点は非常に古く、日本の古典文学の世界で連綿と受け継がれてきた語彙です。類似の原形である「其につけて(それにつけて)」は、平安中期の長編物語『宇津保物語』の中にすでに見られます。

『宇津保物語』には「たとひ、人のはらから、なまわろくてもはべらんからに、それにつけてやおぼえのおとらん」という記述があり、前の事柄との関係から後の事柄が生ずる、すなわち「そのことに関連して」「それによって」という意味合いで機能していました。

さらに係助詞「も」が加わった「それにつけても」の初出実例としては、鎌倉時代中期の仏教文献である『親鸞聖人消息』(13世紀中頃)が代表的です。「世にくせごとのおこりさふらひしかば、それにつけても念仏をふかくたのみて……」と記されており、世の中に不穏な事態が起きたことを受けて、「だからこそ、それによっていっそう深く念仏を信じて」という、心の動きを強調する文脈で用いられています。

また、日本の中世・近世に栄えた連歌や俳諧の文化において、前の句に対して言葉や心を添える「つけ句(付句)」の精神とも親和性が高く、情景や出来事に心を重ねて新たな句を紡ぎ出す日本語固有の美意識が、このフレーズの根底に流れています。

プラスとマイナスの両方で働く文脈ニュアンスと実践例文

「それにつけても」の極めてユニークな点は、直前の状況が喜ばしい出来事(プラス)であっても、痛ましい出来事(マイナス)であっても、双方の文脈で機能するという柔軟性にあります。話し手の「いっそう募る思い」を媒介するため、感情のベクトルを選びません。

具体的なシチュエーションごとの用例を整理すると、以下のようになります。

1. 喜ばしい状況や感謝を深める場合(プラスの文脈)
「プロジェクトが予定より早く完了したと聞き、安堵した。それにつけても、過密日程のなか最後まで尽力してくれたチームメンバーには感謝が尽きない。」
ここでは、事態の好転を受けて、関係者への感謝というポジティブな感慨が「いっそう深まる」様子を伝えています。

2. 懸念、悔恨、同情などを深める場合(マイナスの文脈)
「連日の猛暑で農作物の生育不良が相次いでいる。それにつけても、被害を受けた生産者の方々の心労を思うと胸が痛む。」
客観的な悪状況を提示した後に、「だからこそ余計に」と心情的な痛惜の念を強調する展開です。

3. 話題を関連づけながら次の要点を導く場合(実務・日常の文脈)
「無事に新オフィスへの移転が完了しました。それにつけても、近隣住民の方々への挨拶回りは今週中に一度済ませておくべきでしょう。」
前述の事実を踏まえつつ、「その事柄に関連しても、忘れずにこれを行う必要がある」と注意喚起を促す使い方です。

【徹底比較】「それにつけても」と類似する接続表現の違い

文章作成やスピーチで表現の幅を広げるためには、近しい意味を持つ類語との機能差を正しく把握しておく必要があります。特に「それにしても」「それにしてもなお」「それに引き換え」などとは混同されやすいため、その違いを表にまとめました。

表現 中心となるニュアンス・機能 前後の論理関係 適した使用場面
それにつけても 前の事柄を契機として、いっそう感慨や関連性が募る 関連・感慨の強調(順接・展開) エッセイ、所感、情景描写、丁寧な連絡文
それにしても 前の事柄を認めつつも、想定を超えて際立っている 譲歩・逆接寄り(驚き・呆れ) 日常会話、批評、意外な結果へのリアクション
それに引き換え 前の事柄と後の事柄の極端な違いを対比する 明確な対比(好対照) 分析レポート、人物評、状況の比較論述
それにつけて そのことと関連して事柄が生じる(客観的) 関連・因果(「も」の強調がない) 古典的表現、簡潔な事実の接続
いずれにしても これまでの条件や経過に関わらず、結論を提示する 総括・条件の切り捨て ビジネスの意思決定、議論のまとめ

最大の違いは情緒的な深まりにあります。「それにしても」が「それはそうとしても、それにしても暑い(想定外への驚き)」のように軽い転換や驚きを表すのに対し、「それにつけても」は「前の出来事を胸に反芻し、しみじみと思い至る」という内面的な重みを含んでいる点に大きな差異があります。

ビジネス実務や公的文書で活用する際のポイントと注意点

「それにつけても」は非常に洗練された日本語ですが、ビジネスの実務文書や公的アナウンスで使用する際には、いくつかの留意点が存在します。

最初に、この語は情緒や所感を伴いやすい表現であるため、事実の伝達のみを目的とする箇条書きの業務連絡や、冷徹な論理展開が求められる契約書などには向きません。一方で、社内報の巻頭言、退職や異動の挨拶文、取引先への時候の挨拶を交えたお礼状など、「心を通わせる文章」においては非常に品格の高いトーンを演出できます。

また、口頭のビジネスミーティングで乱用すると、やや文語的で大仰な印象を与えるリスクがあります。会話では「その点に関連しましても」「その件を受けましても」といった現代的な敬語表現に置き換えるか、あるいはスピーチのここ一番という結びの場面に絞って活用するのが、大人の語彙力としてスマートな判断基準となります。

【それにつけても】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:「それにつけても」は目上の人に対して使っても失礼になりませんか?
A1:文法的に失礼な言葉ではありません。手紙や改まったメールの中で「それにつけても、皆様のご温情には心より感謝申し上げます」といった形で、前述の事柄に絡めて感謝や配慮を述べる文脈であれば、敬意を込めた格調高い表現として問題なく使用できます。ただし、日常の軽いチャットや業務指示ではやや堅苦しく感じられることがあります。

Q2:「それにしても」と「それにつけても」は同じ意味で置き換えられますか?
A2:完全に同じではありません。「それにしても」は「それにしても今日は暑い」のように予想を超えた事態への驚きや軽い転換でよく使われますが、「それにつけても」は「前述の出来事を受けて、なおさら〜だと感慨が湧く」という結びつきの強さを持っています。単なる話題転換として「それにつけても」を使うと文脈が不自然になる場合があります。

Q3:小説や歌詞でよく見かけるのはなぜですか?
A3:古典や連歌の「つけ句」にルーツを持つ表現であり、情景と感情を結びつける強い余情(ニュアンス)を持っているためです。出来事の描写から登場人物の内面心理へスムーズにカメラを切り替える文学的効果が高く、文芸作品で好まれる傾向があります。

まとめ:言葉の奥行きを理解し文脈に合わせた表現選びを

「それにつけても」は、単に文章を物理的につなぐためのツールではなく、前述した情景や事態を心の中で受け止め、その重みに応じた感慨や判断を導き出すための豊かな日本語表現です。

古くは平安・鎌倉の古典にまで遡る確かな語源を持ち、プラス・マイナスの双方で感情を深める独特の機能を備えています。ビジネスの実務連絡では簡潔な表現を選びつつ、挨拶状やコラム、スピーチなど人の心に訴えかける場面ではこの言葉の持つ情緒を活かすといったように、文脈に応じた適切な使い分けを意識することで、より厚みのあるコミュニケーションが実現できるはずです。

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デジタルマーケター 高村 美里
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暮らし・レシピのテーマを担当。公的機関の資料やメーカー公式の表示を参照し、手順は再現できる形で整理します。

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