レーシック手術を受ければ、眼鏡やコンタクトレンズに頼らない生活が手に入る。その一方で、「手術後に視力が低下した」「夜になると光がにじんで見える」「ドライアイが治らない」といった不安を抱える人もいる。レーシックは確立された屈折矯正手術の一つだが、すべての人が希望どおりの見え方を得られるわけではない。術後に視力の問題や合併症が発生する可能性もある。
2026年現在、日本眼科学会の「屈折矯正手術のガイドライン(第8版)」をはじめ、米国食品医薬品局(FDA)や米国眼科学会(AAO)の情報からも、レーシックの安全性と注意すべきリスクを確認できる。ここでは、レーシック手術失敗の実態、術後の後遺症が起こる理由、角膜拡張症の危険性、再手術の条件と費用、ICLとの違い、信頼できる眼科の選び方まで整理する。
【実態を検証】レーシック手術失敗とは?成功率だけでは分からないリスクの真相

レーシック(LASIK)は、角膜の形状をレーザーで変化させ、近視・遠視・乱視を矯正する手術だ。角膜の表面にフラップと呼ばれる薄い蓋を作り、その下の角膜実質にレーザーを照射して屈折力を調整する。
手術時間が比較的短く、術後早期から視力の改善を期待できることが特徴だ。しかし、角膜を削る以上、手術前とまったく同じ状態に戻せるわけではない。
レーシックの失敗には複数の種類がある
一般的に「失敗」と表現される状態は、大きく分けて次のようなものがある。
- 屈折矯正の不具合:近視が残る低矯正や、遠視になる過矯正。
- 視力の質の低下:視力検査の数値は良くても、夜間の見え方やコントラスト感度が悪化する状態。
- 術後の慢性的な不調:ドライアイ、異物感、眼痛、光過敏などが続く状態。
- 角膜の構造的な問題:角膜拡張症や不正乱視など、角膜の形状に異常が生じる状態。
- 手術に伴う合併症:感染症、フラップの異常、角膜混濁など。
ここで見落とせないのが、裸眼視力と見え方の満足度は必ずしも一致しないことだ。
例えば、視力検査で1.0以上を記録していても、夜間の運転中に対向車のライトが大きくにじんだり、暗い場所で物の輪郭が分かりにくくなったりすれば、本人にとっては深刻な問題となる。
米国FDAが公表しているLASIKの生活の質に関する共同研究(LQOLCP)では、PROWL-1とPROWL-2という2つの調査が実施された。対象者はそれぞれ262人、312人で、術後の自覚症状や生活への影響を調べている。
同研究では、術前に視覚症状がなかった人のうち、術後3か月時点で新たな視覚症状を報告した割合は、調査によって43%、46%だった。一方、視覚症状によって日常生活に大きな支障を感じた人は、各症状について1%未満だった。また、視力に満足した参加者は95%を超えている。
加えて、術前にドライアイ症状がなかった人でも、術後3か月時点で約28%が何らかのドライアイ症状を報告した。
これらは米国で実施された研究であり、2026年の日本国内における失敗率を示す数値ではない。また、新たな症状の報告と重篤な合併症は同じ意味ではない。重要なのは、多くの人が満足する一方、新しい不調を経験する人も存在するという両面を理解することだ。
日本でも、国民生活センターが2013年12月4日にレーシック手術について注意喚起を行っている。当時、事故情報データバンクには、レーシックによって危害が発生したという情報が80件寄せられていた。
報告された症状には、過矯正による遠視、頭痛、吐き気、乱視、まぶしさ、ドライアイ、眼痛などが含まれていた。
ただし、この80件は当時の事故情報であり、全国の手術件数を分母とする発生率ではない。現在の日本におけるレーシックの失敗率を、この数字だけで判断することはできない。
つまり、レーシックの実態は「ほとんどの人が失敗する」というものでも、「絶対に安全」というものでもない。手術の成功を裸眼視力だけで評価せず、生活上の見え方や長期的な角膜の健康まで考える必要がある。
【症状別に解説】レーシック術後の後遺症と合併症は何が起こる?
レーシック後に発生する不調には、一時的な回復過程で起こるものと、長期化する可能性のあるものがある。
術後すぐに違和感があるからといって、必ずしも手術失敗とは限らない。一方で、症状が悪化したり、長期間改善しなかったりする場合には、医師による診察が必要になる。
1.レーシック術後のドライアイ
ドライアイは、レーシック後に注意したい代表的な症状の一つだ。
主な症状は以下のとおり。
- 目が乾く、しみる。
- 目の表面に砂が入ったような異物感がある。
- 長時間画面を見ると疲れる。
- 視界が一時的にかすむ。
- 瞬きをすると見え方が改善する。
原因の一つは、手術時に角膜の神経が影響を受けることだ。角膜の神経は、涙の分泌や瞬きに関係する反射に関与している。そのため、手術後に涙の分泌や眼表面の状態が変化し、乾燥症状が出る場合がある。
もともとドライアイがある人は、術後に症状が悪化する可能性もある。日本眼科学会のガイドラインでも、ドライアイはエキシマレーザー手術を慎重に検討すべき条件として挙げられている。
治療には人工涙液などの点眼、眼表面の炎症に対する治療、涙点プラグなどが用いられることがある。症状や検査結果によって治療方法は異なるため、自己判断で市販の目薬だけを使い続けるのは避けたい。
2.ハロー・グレア現象による夜間の見え方の変化
ハロー・グレア現象は、夜間や暗い場所で光源の周囲に輪が見えたり、光が広がってまぶしく感じたりする症状だ。
ハローは光の周囲に輪が見える現象、グレアは光が強く感じられたり、にじんだりする現象を指す。
特に問題となりやすいのが、夜間の運転だ。対向車のヘッドライトや街灯が大きく広がって見えると、道路や歩行者を認識しにくくなることがある。
原因には、瞳孔径、角膜の形状変化、矯正範囲と光学的な特性などが関係する。暗い場所で瞳孔が大きくなる人は、症状が強く出る可能性がある。
FDAも、瞳孔径が大きい人について、ハロー、グレア、光条、ゴースト像などのリスクを術前に評価するよう注意を促している。
術後早期に生じた症状は時間とともに軽減する場合があるが、長期化することもある。視力の数値が良好だからといって、夜間の視覚機能に問題がないとは限らない。
3.過矯正・低矯正とレーシック後の視力低下
過矯正は、近視を矯正する際に必要以上に角膜を削り、遠視側に度数がずれてしまう状態だ。反対に、低矯正は近視や乱視が十分に矯正されず、度数が残る状態を指す。
術後に視力が一度改善した後、再び見えにくくなるケースもある。
その背景には、近視の進行、屈折状態の変化、角膜形状の変化、加齢による老眼など、さまざまな要因が考えられる。
また、レーシックは老眼そのものを予防する手術ではない。遠くが見えるようになっても、年齢とともに近くが見えにくくなる可能性は残る。
視力が低下した場合は、単純に近視が戻ったと判断せず、角膜や水晶体、網膜なども含めた検査を受けることが大切だ。
4.角膜拡張症の症状とリスク
レーシック後の合併症の中でも、特に慎重な対応が必要なのが角膜拡張症だ。
角膜拡張症とは、角膜の強度が低下し、徐々に前方へ突出したり、形状が不規則になったりする状態を指す。円錐角膜に似た変化が生じることもある。
代表的な症状は次のとおり。
- 以前より近視が強くなる。
- 乱視が増加する。
- 眼鏡をかけても視力が十分に改善しない。
- 物が二重、三重に見える。
- 視界が徐々にゆがんで見える。
角膜拡張症は術後早期に発生する場合だけでなく、数か月から数年を経て発見されることもある。
主なリスク要因は、もともとの角膜形状の異常、円錐角膜の疑い、角膜の厚さ不足、過剰な角膜切除などだ。
発症が疑われた場合には、角膜形状解析や角膜厚の測定を行い、進行性の変化がないか確認する。治療では、進行を抑えるための角膜クロスリンキングや、視力を補うためのハードコンタクトレンズなどが検討される。
重要なのは、視力が低下しているからといって、安易に追加のレーザー照射を行わないことだ。角膜拡張症が疑われる場合、追加の角膜切除は状態を悪化させるおそれがある。
5.感染症・フラップ異常などの合併症
レーシックでは、角膜にフラップを作製するため、その部分に関連した合併症も考えられる。
例えば、フラップの位置や接着に関する異常、角膜の感染症、炎症、上皮迷入などだ。頻度は高くないものの、適切な処置が必要になるケースがある。
特に術後早期の強い痛み、急激な視力低下、強い充血、光を極端にまぶしく感じる症状などは注意したい。
強い痛みや見え方の急激な悪化がある場合は、次回の定期検診を待たず、手術を受けた医療機関または眼科を速やかに受診することが必要だ。
【原因と比較】レーシック失敗を招く要因とICL・PRK・SMILEの違い
レーシックの術後トラブルは、必ずしも医師の技術だけで決まるものではない。患者自身の角膜の状態、近視の程度、術前検査の精度、術後の生活習慣など、複数の要素が関係する。
レーシック手術失敗の主な原因
最初に、術前の適応判断に問題があると、手術後の合併症リスクが高まる可能性がある。
例えば、角膜が薄い人や円錐角膜が疑われる人に対して、十分な評価をせずに角膜を削ることは危険だ。角膜の厚さだけでなく、角膜の前面・後面の形状や全体的な強度を考慮する必要がある。
日本眼科学会の2024年2月公表「屈折矯正手術のガイドライン(第8版)」では、屈折矯正手術の対象や禁忌、術前検査、術後管理などが整理されている。
同ガイドラインでは、レーシックなどのエキシマレーザー手術について、近視の矯正量は原則6Dを限度とし、医学的根拠がある場合には十分な説明と同意のもとで10Dまでを検討するという基準が示されている。矯正量だけでなく、術後に十分な角膜厚を残すことも求められている。
また、円錐角膜、円錐角膜疑い、活動性の炎症、創傷治癒に影響する重い全身疾患などは禁忌に挙げられている。ドライアイ、緑内障、角膜ヘルペスの既往などは慎重な判断が必要だ。
2026年時点で知っておきたい屈折矯正手術の比較
視力回復手術にはレーシック以外にも複数の方法がある。重要なのは、単純に新しい術式を選ぶのではなく、それぞれの手術が目にどのような影響を与えるかを理解することだ。
| 術式・関連技術 | 角膜・眼内への作用 | 主なメリット | 注意すべきリスク |
|---|---|---|---|
| レーシック(LASIK) | 角膜にフラップを作り、実質をレーザーで切除 | 術後早期から視力改善を期待できる | ドライアイ、ハロー・グレア、角膜拡張症、フラップ異常 |
| ICL | 眼内に専用レンズを挿入し、角膜を大きく削らない | 角膜を温存でき、レンズの取り出しや交換を検討できる | 眼圧上昇、白内障、角膜内皮障害、感染症、ハロー・グレア |
| PRK | 角膜表面の上皮を処理し、レーザーで角膜を矯正 | フラップを作らずに手術できる | 術後の痛み、回復までの時間、角膜混濁 |
| SMILE | 角膜内部に作製したレンチクルを小切開から取り出す | 大きなフラップを作製しない | 角膜拡張、視覚障害、角膜炎など |
日本眼科学会によると、SMILEは2023年3月22日に国内で承認された術式で、2024年のガイドライン第8版に追加された。
このように、2026年の屈折矯正手術はレーシックだけに限られない。角膜を削る手術、角膜表面を処理する手術、眼内レンズを挿入する手術では、それぞれリスクの種類が異なる。
レーシックとICLの安全性はどちらが高い?
ICLは、虹彩と水晶体の間に専用のレンズを挿入する手術だ。レーシックのように角膜実質を大きく切除しないため、角膜の厚さが十分でない人や、近視が強い人にとって選択肢になる場合がある。
日本眼科学会による有水晶体眼内レンズの解説でも、ICLは国内の視力回復手術の重要な選択肢として紹介されている。
ただし、レンズを取り出せることと、手術前の目に完全に戻せることは同じではない。眼内に器具を入れる以上、眼圧上昇、白内障、角膜内皮細胞障害、感染性眼内炎、網膜剥離などのリスクがある。
加えて、ICLでもハロー・グレアが起こる可能性がある。夜間の見え方を重視する人は、レーシックとICLの双方について、術後の視覚症状を具体的に確認しておきたい。
レーシックは角膜に関するリスク、ICLは眼内手術に関するリスクを中心に比較することが大切だ。どちらか一方がすべての人にとって安全という結論にはならない。
【術後の対処法】レーシック失敗が疑われるときの検査・治療と再手術の可否
手術後に見え方が悪くなったと感じた場合、最初に行うべきことは原因の特定だ。
視力の低下があっても、必ずしも角膜の削りすぎや手術の失敗とは限らない。ドライアイ、屈折度数の変化、角膜の形状異常、水晶体の濁りなど、原因によって必要な治療は大きく異なる。
レーシック術後に受けるべき検査
眼科では、症状に応じて次のような検査が行われる。
- 視力検査:裸眼視力と矯正視力を調べる。
- 屈折検査:近視、遠視、乱視の程度を確認する。
- 細隙灯顕微鏡検査:角膜やフラップ、眼表面の異常を確認する。
- 角膜形状解析:角膜の前面・後面の形状を調べる。
- 角膜厚測定:角膜がどの程度残っているかを確認する。
- 涙液検査:涙の量や眼表面の状態を評価する。
- 眼圧測定・眼底検査:緑内障や網膜などの異常を調べる。
特に、以前は問題なく見えていたのに、徐々に近視や乱視が進んでいる場合は、角膜拡張症の可能性も考慮する必要がある。
日本眼科学会のガイドラインでは、術後翌日に細隙灯顕微鏡による検査を行い、その後も必要な経過観察を続けることを求めている。原則として、個々の検査パラメータが安定するとされる術後6か月まで観察し、その後も長期的に状態を確認することが望ましいとされる。
症状別に異なる術後治療
レーシック後の不調は、原因に合わせた治療が必要だ。
ドライアイの場合は、人工涙液や眼表面の炎症に対する点眼治療などを検討する。症状が強い場合には涙点プラグなどの処置が選択肢になる。
過矯正・低矯正の場合は、眼鏡やコンタクトレンズによる補正、視力が安定した後の追加矯正などを検討する。ただし、追加矯正が医学的に可能かどうかは別途判断しなければならない。
角膜拡張症の場合は、角膜の進行性変化を確認したうえで、角膜クロスリンキングや特殊なコンタクトレンズなどを検討する。角膜クロスリンキングは角膜の強度を高め、進行を抑えることを目的とした治療であり、元の角膜形状を完全に回復させるものではない。
感染症やフラップ異常の場合は、状態に応じて抗菌薬などの薬物治療や専門的な処置が必要になることがある。
レーシック再手術は可能?受けられないケースもある
「一度レーシックに失敗したら、もう視力を戻せないのか」という疑問を持つ人は少なくない。
実際には、追加矯正が可能なケースもある。ただし、再手術は初回手術より慎重な判断が求められる。
代表的な対象は、角膜の状態が良好で、視力や屈折度数が安定している低矯正などだ。
再手術を検討する際には、少なくとも次の条件を確認する必要がある。
- 術後の屈折度数が安定していること。
- 追加で角膜を削っても十分な角膜厚を確保できること。
- 角膜拡張症などの異常が認められないこと。
- 追加矯正によって改善する可能性があること。
- 新たな合併症のリスクを理解していること。
FDAは、視力が安定するまで通常3~6か月程度かかる可能性があると説明している。また、追加矯正を行う場合には、少なくとも3か月以上離れた2回の診察で測定値が安定していることを確認するよう示している。
ここで重要なのは、再手術によって遠方視力が改善しても、ハローやグレアなどの症状が改善するとは限らないという点だ。FDAも、追加矯正によって光のにじみなどが改善する可能性は低いと説明している。
角膜拡張症や角膜の厚さ不足がある場合には、再手術そのものが適さないこともある。視力が悪いからといって、角膜をさらに削れば解決するわけではない。
再手術の費用はいくら?保証制度の確認ポイント
レーシックの再手術費用には、全国共通の一律料金があるわけではない。自由診療として提供されるため、医療機関の料金体系や初回契約の保証内容によって異なる。
保証期間内の追加照射を無料とするクリニックもあれば、保証期間終了後や保証対象外の症状について別途費用が発生する施設もある。
特に確認したいのは次の項目だ。
- 保証期間は何年間か。
- 再手術は何回まで無料なのか。
- 近視の戻りだけでなく、過矯正も対象になるのか。
- 他院で受けた手術の修正に対応しているか。
- 術後検査や薬代は保証に含まれるのか。
- 角膜厚不足などで再手術ができない場合の扱いはどうなるか。
「再手術無料」という広告だけで判断するのは避けたい。医学的に再手術が可能と診断された場合に限って保証が適用されるケースもあるためだ。
初回手術の契約書、検査結果、術後の診療記録などは大切に保管しておこう。別の医療機関で診察を受ける場合にも役立つ。
【失敗を防ぐ方法】眼科専門医・クリニックの選び方と口コミの正しい見方
レーシックの安全性を考えるうえで、手術前の医療機関選びは非常に重要だ。
広告に掲載された手術実績や料金だけでは、個々の患者に対する適応判断の質までは分からない。重要なのは、手術を受けない方がよいと判断した場合に、その理由をきちんと説明できる医療機関かどうかだ。
1.日本眼科学会認定の眼科専門医が執刀するか
日本眼科学会の2024年版ガイドラインでは、屈折矯正手術の術者について、日本眼科学会認定の眼科専門医であり、角膜・水晶体を含む前眼部の生理や疾患、眼光学に精通していることを必須条件としている。
加えて、日本眼科学会が指定する屈折矯正手術講習会と、医療機器メーカーが実施する講習会の両方を受講することが必要とされている。
そのため、クリニックの知名度だけでなく、実際に執刀する医師の専門性や経験を確認したい。
2.術前検査が十分に行われているか
術前検査が短時間で終わり、十分な説明もなく手術日を決めるような施設には注意したい。
日本眼科学会のガイドラインでは、視力・屈折検査、角膜曲率、角膜形状、角膜厚、涙液、眼底、眼圧、瞳孔径など、複数の検査を挙げている。
特に角膜形状解析と角膜厚測定は、角膜拡張症などのリスクを評価するうえで重要だ。
検査結果を患者本人に示し、なぜ手術が可能なのか、どの程度の角膜を残せるのかを説明してくれる医療機関を選びたい。
3.リスクや術後の対応について具体的に説明するか
信頼できる医療機関は、メリットだけでなく、合併症や手術の限界についても説明する。
特に、次のような質問に具体的に答えられるか確認したい。
- 自分の角膜厚と角膜形状で本当に手術が可能なのか。
- ドライアイや夜間の光のにじみが起こる可能性はどの程度か。
- 視力が希望どおりにならなかった場合はどうするのか。
- 角膜拡張症が発生した場合に対応できるのか。
- 術後の検査はいつまで、どのように行うのか。
- 夜間や休日に異常が起きた場合の連絡先はあるのか。
また、手術を急がせたり、当日契約を強く勧めたりする施設にも注意が必要だ。
FDAも、料金だけで医療機関を選ばず、複数の医師や施設を比較すること、医学的な成功を保証する広告をうのみにしないことを推奨している。
4.レーシックの評判や口コミはどう判断する?
インターネット上には、レーシックを受けて満足した人の口コミもあれば、術後の不調を訴える人の体験談もある。
ただし、口コミは個人の体験であり、すべての患者に同じ結果が生じるわけではない。
評価を読む際には、次のポイントを確認したい。
- 手術直後の感想だけでなく、半年後や数年後の経過が書かれているか。
- 視力だけでなく、ドライアイや夜間の見え方についても触れているか。
- 術後の検査や医師の対応について具体的な説明があるか。
- 広告やキャンペーンと独立した第三者の評価か。
- 否定的な意見に対して、医療機関がどのように対応しているか。
良い口コミが多いから安全、悪い口コミがあるから失敗するという単純な判断はできない。
また、国民生活センターが2013年に公表した注意喚起では、レーシックを受けるきっかけとなった情報の約4割が、医療機関のウェブサイトやインターネット広告だったとされている。当時から、広告情報の一部に法令上の問題があるおそれも指摘されていた。
口コミや広告は医療機関を比較する材料の一つにとどめ、最終的には検査結果と医師の説明を基準に判断することが重要だ。
5.手術を受けない選択肢も比較する
レーシックは、すべての近視の人が受けなければならない手術ではない。
日本白内障屈折矯正手術学会も、眼鏡やコンタクトレンズで問題なく生活できている場合には、必ずしも手術を受ける必要はないと説明している。
眼鏡やコンタクトレンズで十分な視力が得られ、生活上の不便も少ないなら、手術を急ぐ理由はない。
特に、夜間運転が多い人、ドライアイが強い人、角膜の状態に不安がある人、わずかな見え方の変化も避けたい人は、慎重に検討したい。
一方、近視や乱視が安定しており、眼鏡やコンタクトレンズの装用に大きな不便を感じている人は、専門医の検査を受けて屈折矯正手術を検討する余地がある。
【プロの結論】2026年のレーシック手術は安全?受けるべき人・避けるべき人
2026年時点で、レーシックは長年の臨床経験と技術の進歩を背景に行われている屈折矯正手術だ。しかし、技術が進歩したことと、合併症が完全になくなったことは別問題である。
日本眼科学会のガイドライン第8版は2024年2月に公表され、SMILEを含む屈折矯正手術の適応や術後管理について示している。現在も、角膜の状態を十分に評価し、適切な症例を選択するという基本は変わらない。
レーシックを検討しやすい人
- 18歳以上で、近視・遠視・乱視の度数が安定している人。
- 角膜の厚さや形状が手術に適している人。
- 重度のドライアイなど、重大なリスク要因がない人。
- 術後に眼鏡が必要になる可能性も理解している人。
- 定期検診を継続できる人。
レーシックを慎重に考えるべき人
- 角膜が薄い、または円錐角膜が疑われる人。
- 重度のドライアイがある人。
- 近視の度数が強く、必要な角膜切除量が多い人。
- 緑内障や角膜疾患などの眼の病気がある人。
- 夜間の視覚機能を非常に重視する人。
- 術後の定期検診や長期的な管理が難しい人。
このうち、円錐角膜や円錐角膜疑いなどは日本眼科学会のガイドラインで禁忌として扱われている。該当する場合は、手術を受けない判断も含めて専門医に相談する必要がある。
手術前に確認したい5つの判断基準
レーシックを受けるか迷っている人は、次の5項目を確認しておきたい。
- 角膜の安全性:角膜の厚さだけでなく、前面・後面の形状に問題がないか。
- 術後の見え方:裸眼視力だけでなく、夜間視力やコントラスト感度への影響を理解しているか。
- 代替手段:ICL、PRK、SMILE、眼鏡などと比較したか。
- 医師と医療機関:執刀医の専門性、検査内容、合併症への対応体制を確認したか。
- 長期的な管理:術後の検診や将来の視力変化に対応できる体制があるか。
プロの視点から重視したいのは、手術によってどれだけ視力が上がるかだけでなく、術後の生活でどのような見え方を維持できるかという点だ。
視力検査の数値が良くても、乾燥や光のにじみが続けば、本人にとって満足できる結果とは限らない。反対に、少し近視が残っていても、眼鏡を適宜使いながら快適に生活できているなら、十分に納得できる結果と考えられる。
手術の成功を単純な視力の数値だけで判断せず、患者自身が何を重視するのかを明確にすることが、後悔を防ぐための基本になる。
【よくある質問】レーシック手術失敗に関するFAQ
Q1:レーシック手術の失敗率は何%ですか?
A1:日本国内のレーシック全体について、統一された条件で算出した失敗率を示す数字は、この資料からは確認できません。米国FDAのPROWL研究では、95%超が術後の視力に満足した一方、術後に新しい視覚症状を報告した人もいました。軽い症状の発生率と、日常生活に深刻な支障を来す合併症の発生率は区別して考える必要があります。
Q2:レーシック後のドライアイは一生治らないのでしょうか?
A2:必ずしも一生続くわけではありません。術後の回復とともに改善するケースもありますが、症状が長期化することもあります。人工涙液などの点眼治療や、眼表面の状態に合わせた専門的な治療が必要になる場合があります。
Q3:レーシック後のハロー・グレアはいつまで続きますか?
A3:術後早期に発生し、時間とともに軽減するケースがあります。一方、数か月以上続いたり、長期化したりする場合もあります。視力の安定には通常3~6か月程度かかることがありますが、症状が強い場合や悪化する場合は早めに診察を受けてください。
Q4:レーシックに失敗した場合、再手術で元に戻せますか?
A4:低矯正などで追加矯正が可能な場合はありますが、レーシックは角膜を削る手術のため、完全に手術前の状態に戻すことはできません。角膜厚や角膜形状、視力の安定性などを検査し、医学的に再手術が可能か判断する必要があります。
Q5:レーシック後に視力が低下したら、すぐに再手術を受けるべきですか?
A5:すぐに再手術を受けるべきではありません。まず視力低下の原因を調べる必要があります。ドライアイ、近視の進行、角膜拡張症など、原因によって治療が異なります。視力が安定する前の追加矯正は慎重に判断されます。
Q6:レーシックとICLなら、どちらが安全ですか?
A6:一概には比較できません。レーシックは角膜を削るため角膜拡張症やドライアイなどに注意が必要です。ICLは角膜を温存できますが、眼内手術であるため白内障、眼圧上昇、感染症などのリスクがあります。角膜や眼内の状態を検査したうえで選ぶ必要があります。
Q7:レーシックを受けた後、何年も経過してから視力が低下することはありますか?
A7:あります。近視の進行、加齢による老眼、水晶体の変化、角膜拡張症など、さまざまな原因が考えられます。術後何年経過していても、見え方に変化が生じた場合は眼科で検査を受けることが大切です。
まとめ:レーシック手術失敗を防ぐには術前検査と長期的な視力管理が重要
レーシックは、多くの人に視力改善をもたらしてきた屈折矯正手術だが、ドライアイ、ハロー・グレア、過矯正、低矯正、角膜拡張症などのリスクが存在する。術後の見え方に不具合が生じた場合も、原因を特定せずに再手術を検討することは適切ではない。
2026年時点では、レーシックだけでなくICLやPRK、SMILEなど複数の選択肢がある。それぞれにメリットと合併症のリスクがあるため、術式の人気や料金、口コミだけで判断するのは避けたい。
特に重要なのは、角膜形状や角膜厚、涙液の状態などを十分に検査し、日本眼科学会認定の眼科専門医による適切な適応判断を受けることだ。術後も定期的な検査を続け、視力の変化や異常を早期に発見できる体制を整えておきたい。
眼鏡やコンタクトレンズで問題なく生活できているなら、無理に手術を選ぶ必要はない。視力回復というメリットだけでなく、将来にわたる目の健康と生活の質を考え、自分にとって本当に納得できる選択をすることが、レーシックで後悔しないための最も重要な判断基準となる。
主な参考資料:
- 公益財団法人日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン(第8版)」2024年2月。
- 公益財団法人日本眼科学会「LASIK」一般向け疾患解説。
- 公益財団法人日本眼科学会「有水晶体眼内レンズ」一般向け疾患解説。
- 米国食品医薬品局(FDA)「LASIK Quality of Life Collaboration Project」「What Are the Risks and How Can I Find the Right Doctor for Me?」
- 米国食品医薬品局(FDA)「What Should I Expect Before, During, and After Surgery?」
- JAMA Ophthalmology「Symptoms and Satisfaction of Patients in the Patient-Reported Outcomes With Laser In Situ Keratomileusis (PROWL) Studies」2016年。
- 独立行政法人国民生活センター「レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を十分受けましょう!」2013年12月4日。
- 日本白内障屈折矯正手術学会「屈折矯正手術について」。