クマの出没が増える一方、現場で捕獲を担当できるハンターの確保は簡単ではありません。
問題の根本には、猟友会の会員数の減少、銃猟経験者の不足、会員の高齢化、活動費用と報酬の不均衡があります。
大日本猟友会の会員数から見る現状
大日本猟友会の令和6年度事業報告書によると、2024年度末の構成員数は合計100,561人でした。
内訳を見ると、第一種銃猟の構成員は56,577人です。
前年度と比べると、第一種銃猟の構成員は997人減少。一方、わな猟の構成員は545人増加しています。
この違いは重要です。わな猟の会員が増えても、銃猟によるクマ対応を担える人材が同じ割合で増えるわけではありません。
60歳以上が多いハンターの年齢構成
環境省が公表している年代別狩猟免許所持者数では、2021年度の免許所持者213,400人のうち、60歳以上は119,100人でした。
割合にすると約55.8%です。
また、2025年の国会審議でも、政府は2020年度の狩猟免許所持者に占める60歳以上の割合が約58.3%だったと説明しています。
高齢化は、単純に年齢だけの問題ではありません。
クマ対応では、現場まで移動する体力、長時間の警戒、捕獲設備の管理、捕獲後の処理など、身体的な負担を伴う作業が発生します。
地域によっては、経験豊富なベテランに活動が集中する構造もあります。
クマを銃猟できる経験者はさらに限られる
狩猟免許を持つ人が多くても、その全員が緊急時のクマ対応を担当できるわけではありません。
2025年3月25日の衆議院環境委員会では、政府参考人が全国の銃猟免許所持者は約9万人で、クマの銃猟経験者については把握している範囲で少なくとも約3,000人と説明しています。
この数字が示すのは、狩猟免許の保有者数と、実際にクマの捕獲を任せられる経験者数には大きな隔たりがあるということです。
クマの対応には、地域の地形や出没状況を理解し、安全管理を徹底できる経験者が必要です。
免許取得者を増やすだけでは、すぐに現場の人員不足を解消できません。
ハンター不足を深刻化させる4つの要因
1. 新規参入から実務経験を積むまで時間がかかる
狩猟免許を取得しても、すぐにクマの緊急対応を任されるわけではありません。知識や技能を習得し、地域で経験を積む必要があります。
2. 報酬と危険・拘束時間が釣り合わない
会社を休んで出動する人もいれば、休日や早朝に対応する人もいます。出動手当が低ければ、長期的に活動を続けることは難しくなります。
3. 地方で人員を確保しにくい
クマの生息地域では、人口減少や高齢化によって、捕獲に協力できる人そのものが減っている自治体もあります。
4. 捕獲以外の仕事も多い
見回り、設備管理、住民への情報提供、捕獲後の処理など、銃猟以外の業務も発生します。限られた会員に仕事が集中すると、組織全体の負担が大きくなります。
ガバメントハンターの採用と育成にも注目
こうした問題に対して、自治体が職員としてハンターを確保する「ガバメントハンター」の取り組みが進められています。
猟友会の会員に協力を依頼するだけでなく、自治体側にも専門的な知識を持つ人材を配置しようとするものです。
2025年11月の共同通信報道では、秋田市が公務員としてハンターを募集・採用する動きも紹介されました。
環境省のロードマップも、自治体職員の人員確保と、猟友会や認定鳥獣捕獲等事業者との連携を重視しています。
今後は、地域のベテランハンターに依存するのではなく、若手の育成、専門事業者の活用、自治体職員の配置を組み合わせることが課題です。
【プロの結論】熊猟友会任せの対策から地域全体の管理体制へ

2026年のクマ対策を考えるうえで、最も重要なのは、猟友会の活動を単なる駆除作業として捉えないことです。
クマの出没に対応するには、捕獲できる人材の確保だけでなく、住民への情報提供、生活圏への侵入防止、個体数の管理、行政の危機対応能力が必要になります。
今後の熊猟友会を評価する3つの判断基準
① 緊急時に対応できる人員が確保されているか
会員数だけでなく、実際に出動できる人数、クマ対応の経験、複数人での連携体制を確認する必要があります。
② 報酬と活動経費が適切に確保されているか
捕獲報奨金だけでなく、出動手当、待機時間、移動費、装備費、捕獲後の作業まで考慮した制度が必要です。
③ 猟友会以外の組織とも協力できるか
自治体職員、警察、認定鳥獣捕獲等事業者、都道府県などが連携し、地域内だけで対応できない場合には広域で支援できる体制が大切です。
クマ対策は捕獲だけで解決するものではない
環境省の2026年ロードマップには、クマの個体数管理だけでなく、ゾーニング管理、放任果樹などの誘引物対策、生息環境の保全・整備も盛り込まれています。
ゾーニング管理とは、地域を人の生活圏、緩衝地帯、クマの生息域などに区分し、それぞれに適した対策を進める考え方です。
例えば、人の生活圏ではクマを誘引する要因を取り除き、侵入防止柵などを整備する一方、森林では生息環境の管理を進めます。
こうした取り組みが機能すれば、クマと人間が接触する機会を減らし、猟友会が緊急出動しなければならない状況そのものを抑えることにつながります。
熊猟友会の活動を持続させることと、クマが人の生活圏に現れない環境をつくること。この2つを同時に進めることが、これからの地域の安全を守る基本になります。
【熊猟友会に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:熊猟友会とは何ですか?
熊猟友会とは、クマの出没時に警戒、追い払い、捕獲、駆除などに協力する猟友会の会員や地域組織を指す呼び方です。全国組織の大日本猟友会を中心に、都道府県猟友会や市町村単位の支部があります。
Q2:猟友会のハンターはクマを駆除するといくらもらえますか?
全国共通の報酬額はありません。自治体によって、出動1回ごとの手当、日当、時給、1頭ごとの捕獲報奨金などが設定されています。2025年の報道事例では、捕獲1頭につき5万円を支給する自治体や、緊急銃猟で1人3万円を設定する自治体もありました。
Q3:猟友会の会員なら誰でもクマを銃猟できますか?
いいえ。会員の狩猟免許の種類や銃の所持許可、経験、委託内容、法令上の要件などによって異なります。猟友会に加入しているだけで、クマの銃猟が認められるわけではありません。
Q4:緊急銃猟制度とは何ですか?
2025年9月1日に施行された鳥獣保護管理法の改正によって設けられた制度です。クマなどが人の日常生活圏に侵入し、人命への危険が差し迫っている場合など、一定の条件を満たせば市町村長が捕獲者に銃猟を委託できます。
Q5:指定管理鳥獣と認定鳥獣捕獲等事業者は同じですか?
違います。指定管理鳥獣は国が集中的な管理の対象として指定する鳥獣の区分です。一方、認定鳥獣捕獲等事業者は、安全管理体制や専門技能などについて都道府県知事の認定を受けた法人を指します。
Q6:2026年のクマ被害対策は今後どう変わりますか?
2026年3月27日に決定されたロードマップに基づき、2030年度までに自治体の緊急対応体制、人材、捕獲設備、ゾーニング管理などの整備が進められます。猟友会に加えて、ガバメントハンターや専門事業者を活用する方向です。
まとめ:2026年の熊猟友会は地域の安全を支える重要な存在
熊猟友会は、クマの出没時に専門的な捕獲技術を提供し、地域住民の安全を守るうえで欠かせない存在です。しかし、活動の実態を見ると、捕獲だけでなく警戒、見回り、設備管理、捕獲後の処理など、多くの仕事を担っています。
2026年は、緊急銃猟制度の本格運用に加え、環境省のクマ被害対策ロードマップによって、自治体の人材確保や専門事業者との連携が進む転換期です。
一方、猟友会の高齢化やハンター不足、自治体間の報酬格差は依然として大きな課題です。危険な活動を一部の経験者の善意に頼り続けるのではなく、適正な報酬、安全管理、後継者育成を組み合わせた仕組みが必要です。
今後の焦点は、クマを捕獲する能力だけでなく、自治体が緊急時に確実に動ける体制を整え、人とクマの生活圏を適切に分けられるかどうかにあります。2030年度に向けた国と自治体の取り組みが、地域の安全をどこまで実現できるかが注目されます。