古文の読解や定期テスト、大学入試の古典文法で多くの学習者を悩ませるのが、「いみじう」を現代仮名遣いに直す問題です。知恵袋などのQ&Aサイトでも「『いみじゅう』と書くべきか、それとも『いみじう』のままなのか」という切実な疑問が長年投稿され続けています。
表記の正解に迷う背景には、文化庁が定める現代仮名遣いの長音表記ルールと、古典学習における出題基準の双方が絡み合っている実態があります。単なる機械的な暗記ではなく、形容詞「いみじ」のウ音便化の文法構造と、文脈に応じた意味の訳し分けを体系的に整理することで、古典の読解力は飛躍的に向上します。
【結論】「いみじう」の現代仮名遣いは「いみじゅう」と「いみじう」のどちらが正解か

結論から述べると、学校の定期テストや入試の設問で「歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直してすべてひらがなで書け」と指示された場合の標準的な正解は「いみじゅう」です。実際の読み方(発音)も同様に「いみじゅう」となります。
ネット上の議論などで「いみじう」のままでよいという見解が一部で見られるのは、昭和61年の文化庁内閣告示「現代仮名遣い」における特例や、古文の本文表記を尊重する編集方針と混同されているケースが多いためです。国語教育の現場では、「歴史的な発音・表記を現代の発音に即した仮名表記に改める」という出題意図が明確であるため、拗音と長音を反映させた「いみじゅう」と解答しなければ減点または不正解となるのが一般的です。
混乱を避けるためには、「古文の原本に書かれている文字が歴史的仮名遣いの『いみじう』であり、それを現代の発音通りに書き改めたものが『いみじゅう』である」と区別して認識することが不可欠です。
【仕組みを解剖】形容詞「いみじ」が「いみじう」へと変化するウ音便の法則
「いみじう」という形は、形容詞「いみじ」がそのまま変化なしに存在しているわけではありません。文法的には、シク活用形容詞「いみじ」の連用形である「いみじく」が音便変化を起こした姿です。
音便とは、言葉を滑らかに発音しやすくするために語中や語尾の音が変化する現象を指します。形容詞の連用形語尾「く」の「k」音が脱落し、「u(う)」に変化する現象をウ音便と呼びます。「いみじく(imijiku)」から「k」が脱落することで「いみじう(imijiu)」となり、平安時代中期以降の口頭語として広く定着しました。
古文読解において「いみじう〜(動詞・形容詞)」と続く場合、品詞としては形容詞「いみじ」の連用形ウ音便であり、直後の用言を修飾する副詞的な働きをしていると見分けることができます。
【ルール整理】歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す長音表記の基本原則
なぜ「いみじう」を現代仮名遣いに改めると「いみじゅう」になるのか、その背景には文化庁の内閣告示でも示されている「歴史的仮名遣い対照表」の長音表記ルールが存在します。
歴史的仮名遣いにおける母音の組み合わせ「i + u(イ段 + う)」は、現代の音韻では拗音長音である「ュー」へと変化します。この変化規則を正確に把握しておくと、他のウ音便語や長音表記の書き換え問題にも迷うことなく対応できるようになります。
| 歴史的仮名遣い(音の連続) | 現代仮名遣いの表記 | 読み方・発音 | 代表的な具体例 |
|---|---|---|---|
| いみじう(シ段+う) | いみじゅう | いみじゅう | 「いみじう侍り」→「いみじゅうはべり」 |
| 美しう(シ段+う) | うつくしゅう | うつくしゅう | 「美しうていたり」→「うつくしゅうていたり」 |
| ありがたう(タ段+う) | ありがとう | ありがとう(長音:ありがとお) | 「ありがたく」のウ音便 |
| やうやう(ヤ段+う) | ようよう | ようよう | 「次第に」を意味する副詞 |
| けふ(エ段+ふ) | きょう | きょう | 「今日」を意味する名詞 |
表に示した通り、「いみじ」の語幹末尾および連用形語尾に含まれるイ段音(じ)に「う」が接続することで、現代語では「じゅう」という1つの拗長音として表記・発音されます。この原則を理解していれば、丸暗記に頼ることなく直感的に正解を導き出すことが可能です。
【古文単語】「いみじ」の意味と文脈による3大訳し分けパターン
仮名遣いの書き換えと並んで頻出するのが、「いみじ(いみじう)」の意味の判別です。「いみじ」の語源は動詞「忌む(いむ)」にあり、本来は「神聖なものとしてタブー視する」「並々ならぬ力があって恐ろしい」といった原義を持っています。
そこから「人間の通常の尺度を超えている」というニュアンスに発展し、文脈に応じて以下の3つのパターンに訳し分ける必要があります。
① 程度の甚だしさ(非常に・たいそう):
前後に善悪のニュアンスが含まれず、単に程度が普通ではない状態を指す場合です。「いみじう寒き日に(非常に寒い日に)」のように、後の語句を客観的に強調する副詞的表現として機能します。
② プラスの文脈(素晴らしい・見事だ・立派だ):
好ましい事態に対して使われる場合、最上級の賛辞を表します。「いみじき絵師(見事な絵師)」「いみじう興あり(たいそう趣がある)」といった文脈では、肯定的な意味合いで訳出します。
③ マイナスの文脈(ひどい・大変だ・恐ろしい):
望ましくない災難や悲哀に対して使われる場合、苦痛や困惑を表します。「いみじき目を見たり(ひどい目に遭った)」「いみじう泣く(ひどく泣く)」のように、深刻な状況を描写する際に用いられます。
現代語「いみじくも」との意味の違いと注意点
古文の「いみじ」を学ぶ上で、現代日本語の慣用句である「いみじくも」との混同には十分な注意が必要です。
現代語の「いみじくも」は、主に「適切にも」「巧みなことに」「図らずも言い当てて」という意味合いで使用されます。「彼がいみじくも指摘した通り」という文脈では、誰かの発言が見事に的を射ていることを称賛する表現となります。
一方、古文の「いみじく」は前述の通り「非常に」「甚だしく」という程度の強調か、あるいは「素晴らしく」「ひどく」という極端な状態を指す語です。古文の文章中に「いみじく」が登場した際に、現代語の語感に引きずられて「適切に」と訳してしまうと文脈が大きく破綻するため、時代による語義の変遷を正しく認識しておく必要があります。
【プロの結論】古典文法における音便の見分け方と得点直結の思考法
古文読解において音便を見落とさないための実践的なアプローチは、「不自然に短縮された音や伸びた音を見つけたら、元の基本形に復元する」という思考習慣を持つことです。
特に形容詞のウ音便は、後ろに丁寧の補助動詞「侍り」「候ふ」や、助動詞「けり」などが続く際によく発生します。「いみじう侍り」というフレーズに出会った際は、まず「語尾が『う』になっているためウ音便である」と見抜き、元の形である連用形「いみじく」を復元します。そこから終止形「いみじ」へと遡ることで、単語帳で覚えた本来の語義を正確に呼び起こすことができます。
歴史的仮名遣いから現代仮名遣いへの変換ルールと、用言の活用・音便の仕組みは表裏一体の関係にあります。記号的な書き換え作業として処理するのではなく、言語が発音の効率化を図る中で辿った変化のプロセスとして理解することが、最も確実で忘れにくい学習法となります。
【いみじう現代仮名遣い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:テストで「いみじう」と書いたら×になりますか?
A1:学校の定期テストや高校・大学入試において「現代仮名遣いに直せ」と指示されている場合、「いみじう」と記述すると減点または不正解(×)とされる可能性が極めて高いです。問題の趣旨は歴史的仮名遣いを現代の発音表記に改めることにあるため、必ず「いみじゅう」と解答してください。
Q2:「いみじう」の品詞分解はどうなりますか?
A2:シク活用形容詞「いみじ」の連用形「いみじく」がウ音便化したものです。1語の形容詞連用形として扱われ、直後の動詞や形容詞などを修飾する働きを持っています。
Q3:なぜ「いみじく」ではなく「いみじう」と音便化するのですか?
A3:日常的な発話において「いみじく」の「く(ku)」を繰り返し発音するよりも、子音の「k」を落として母音を繋げた「いみじう(imijiu)」とする方が発音の負担が少なかったためです。中世以降の日本語において、形容詞連用形のウ音便化は広く一般化した現象です。
まとめ:音の法則をマスターして古典の読解力を盤石にする
古文における「いみじう」の現代仮名遣いは「いみじゅう」であり、読み方も同様に「いみじゅう」となります。これはシク活用形容詞「いみじ」の連用形「いみじく」がウ音便化した形態であり、イ段に「う」が連なることで拗長音へと変化するという音韻法則に基づいています。
文脈によって「はなはだしい」「素晴らしい」「ひどい」と柔軟に訳し分ける力と、現代語「いみじくも」との差異を明確に整理しておくことで、仮名遣い問題だけでなく長文読解の設問でも安定した得点力を発揮できるようになります。音便の仕組みを体系的に捉え、日々の古文読解に役立ててください。