年明けのビジネスシーンで真っ先に飛び交う「本年もよろしくお願いいたします」という挨拶。仕事始めのメールや取引先への訪問で何気なく使っているフレーズですが、「1月何日まで使ってよいのか」「今年と本年はどう使い分けるべきか」「より丁寧な言い換え表現はあるのか」など、細かい作法に迷うビジネスパーソンは少なくありません。
新年の挨拶は相手との信頼関係を継続・強化するための大切な節目です。本稿では、松の内の考え方や送信時期の目安、相手の役職に応じた敬語表現の選び方、年賀状との重複ルールに至るまで、実務ですぐに役立つビジネスマナーを分かりやすく紐解きます。
「本年もよろしくお願いいたします」の本来の意味と成り立ち

「本年もよろしくお願いいたします」は、年が明けた際に相手との良好な関係が今後も継続することを願い、変わらぬ支援や協力を仰ぐための定型表現です。言葉を細かく分解すると、それぞれの要素に明確な役割があります。
冒頭の「本年」は、現在進行しているその年を指す改まった語彙です。続く「よろしく」は、物事を頼む際に「適切に取り計らってほしい」という意図を添える言葉であり、末尾の「お願いいたします」は動詞「頼む(願う)」に謙譲の「お~いたす」と丁寧語「ます」を組み合わせた敬語表現です。同僚から社外の担当者まで幅広く通用する標準的な挨拶として定着しています。
「今年」と「本年」の違いと敬語マナーにおける使い分け
日常の会話では「今年もよろしくお願いします」と口にすることが多い一方、ビジネス文書や公式メールでは「本年」を使うのが鉄則とされています。この2つの言葉にはどのような差があるのでしょうか。
「今年(ことし)」は和語(大和言葉)に由来し、親しみやすく口頭でのコミュニケーションに適しています。社内の気心の知れた同僚や後輩に対して口頭で挨拶する際は、「今年もよろしく」で何ら不自然ではありません。一方の「本年(ほんねん)」は漢語であり、改まった公の場や文書に適したフォーマルな響きを持ちます。クライアント宛てのメールや上司への年頭挨拶では、くだけた印象を避けるためにも「本年」を選択するのがビジネスマナーの基本です。
ビジネスメールではいつまで使える?1月中旬までの送信時期の目安
年始の挨拶メールを送る際、最も多くの人が頭を悩ませるのが「いつまでこのフレーズを使ってよいのか」というタイムリミットの問題です。判断の軸となるのは、日本の伝統的な年中行事の基準である松の内(まつのうち)です。
松の内とは門松を飾っておく期間を指し、関東を中心とした東日本では1月7日まで、関西をはじめとする一部地域では1月15日までとする地域差があります。ビジネス実務においては、原則として仕事始めから松の内が明ける頃までに連絡を入れるのがスマートです。
ただし、相手企業の長期休暇や担当者の出張、業務スケジュールの都合により、新年初のコンタクトが1月第2週〜第3週にずれ込むケースも珍しくありません。ビジネスにおける実務ルールとしては、その年になって初めて連絡を取り合う相手であれば、1月中旬(1月15日前後)までは「本年もよろしくお願いいたします」を冒頭に添えても失礼にはあたりません。1月20日を過ぎるような下旬になった場合は、新年の挨拶を省き、通常の「平素は大変お世話になっております」から本題に入るのが自然です。
【一覧比較】相手やシーンで選ぶ新年の挨拶表現
挨拶を送る相手との距離感や役職によって、選ぶべきフレーズの敬意の度合いは異なります。状況に合わせた最適な表現を以下の対照表にまとめました。
| 使用フレーズ | 敬意の度合い | 主な対象・シチュエーション | 特徴・使い分けのポイント |
|---|---|---|---|
| 今年もよろしくね / よろしくお願いします | 基本・親近感 | 社内の同僚、後輩、気心の知れた間柄 | 口頭でのやり取りや社内チャットツール向き。改まった社外メールには不向き。 |
| 本年もよろしくお願いいたします | 標準(ビジネス標準) | 一般の取引先、社内メンバー全般 | 汎用性が最も高く、ビジネスメールの冒頭挨拶として幅広く使える定番の形。 |
| 本年もどうぞよろしくお願いいたします | 丁寧 | 社外の取引先、他部署の担当者 | 副詞「どうぞ」を添えることで、懇願のニュアンスと丁寧な心遣いが柔らかく伝わる。 |
| 本年もよろしくお願い申し上げます | 極めて丁寧 | 役員、上司、重要な顧客、目上の取引先 | 「言います」の謙譲語「申し上げる」を用いた高水準の敬語。格調高い印象を与える。 |
| 本年も何卒よろしくお願い申し上げます | 最上級の改まった表現 | 最重要クライアント、VIP、改まった公式書面 | 「何卒(なにとぞ)」を加えることで、強い敬意と継続的な関係構築への熱意を伝える。 |
表からも分かる通り、「本年もよろしくお願いいたします」と「本年もどうぞよろしくお願いいたします」の最大の違いは、副詞「どうぞ」の有無です。「どうぞ」を挟むことで相手に対する配慮や願いの深さを柔らかく補強できるため、より好印象を与えたい社外メールに適しています。
上司・取引先への年頭メール実践例文
実務でそのまま活用できるメールの文面を用途別に紹介します。相手との関係性に合わせて語尾や導入部分を調整してください。
【例文1:直属の上司へ送る仕事始めのメール】
件名:新年のご挨拶(営業部・氏名)
本文:
○○部長
改めまして、新年あけましておめでとうございます。営業部の佐藤です。
昨年中は温かいご指導を賜り、誠にありがとうございました。
本年もチームの目標達成に向け、一つひとつの案件に全力で取り組んでまいります。
本年もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
本日の初会合にて、改めてご挨拶申し上げます。
【例文2:取引先へ送る年頭の挨拶メール】
件名:新年のご挨拶【株式会社○○・氏名】
本文:
○○株式会社
営業部 ○○様
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
株式会社○○の鈴木でございます。
旧年中は格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。
弊社は本日より通常営業を開始いたしました。
本年もより一層のサービス向上に努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
貴社の益々のご発展と、皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
本年も変わらぬお引き立てのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
【例文3:取引先から届いた新春メールへの返信】
件名:Re: 新年のご挨拶【株式会社○○・氏名】
本文:
○○株式会社
営業部 ○○様
丁寧な年頭のご挨拶をいただき、誠にありがとうございます。
株式会社○○の鈴木でございます。
旧年中は多大なるご支援をいただき、深く感謝申し上げます。
本年も○○様のお役に立てるよう、尽力してまいる所存です。
こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
寒さ厳しき折、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
やりがちな間違い!「謹賀新年」との重複や重複表現の罠
年頭の挨拶状やビジネスメールでは、言葉の意味が重なる「重言(じゅうげん)」やマナー違反が起きやすいポイントがいくつか存在します。
年賀状や年頭の挨拶状でよく見られる「謹賀新年」は、それ単体で「謹んで新年のお慶びを申し上げます」という賀詞を含んでいます。そのため、その直後に「新年あけましておめでとうございます」と続けると、同じ意味を二重に繰り返すことになります。「謹賀新年」の後に文章を続ける場合は、「旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします」と続けるのが正しい作法です。
また、「新年あけましておめでとうございます」という言い回しも、「新年(年が明けたこと)」と「あけまして」の意味が重複していると指摘されることがあります。ビジネス文書の正確性を重んじる場合は、「あけましておめでとうございます」または「新春のお慶びを申し上げます」と表記する方が堅実です。
【本年もよろしくお願いいたします】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:1月20日を過ぎてから新年初のメールを送る場合、新年の挨拶は書くべきですか?
A1:1月下旬に入ってからの業務連絡では、新年の挨拶を無理に入れる必要はありません。通常の「平素は大変お世話になっております」から始めるのが自然です。どうしても年頭の挨拶に一言触れたい場合は、「ご挨拶が遅れましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします」と添える程度に留めるのがスマートです。
Q2:「本年もよろしくお願いいたします」と「本年もよろしくお願い申し上げます」はどちらを使うべきですか?
A2:同僚や一般的な取引先宛てであれば「お願いいたします」で十分丁寧ですが、目上の上司や役員、重要な顧客に対しては謙譲語である「お願い申し上げます」を使用する方が敬意が明確に伝わります。迷った際は「お願い申し上げます」を選んでおけば間違いありません。
Q3:年賀状を出していない相手から年賀状が届いた場合、メールで「本年もよろしく」と返信しても失礼になりませんか?
A3:原則として、年賀状への返信は年賀はがき、あるいは松の内を過ぎたあとの寒中見舞い(はがき)で返すのが正式なマナーです。ただし、日頃からメールで頻繁にやり取りしている取引先であれば、取り急ぎメールで年頭の御礼と挨拶を伝え、追って書面を送る、またはメールのみで誠意を込めて返信しても差し支えないケースが増えています。
まとめ:新年の挨拶は「相手目線の敬度と時期」が決め手
「本年もよろしくお願いいたします」という言葉は、新年の始まりに双方が気持ちよくビジネスを進めるための重要なコミュニケーションツールです。使う時期は松の内を目安にしつつ、業務上の初回連絡であれば1月中旬まで柔軟に活用できます。
メールを作成する際は、「今年」と「本年」のフォーマル度の違いを意識し、相手の立場に合わせて「どうぞ」や「申し上げます」を適切に組み合わせてみてください。節度ある時期と正しい敬語マナーを押さえることが、新しい1年の円滑な業務遂行と強固な信頼関係構築につながります。