独立国家共同体(CIS)は、1991年のソ連崩壊を背景に誕生した、旧ソ連諸国による国際的な協力枠組みである。ロシア、ベラルーシ、カザフスタンなどが参加し、政治、経済、安全保障、文化、人道分野での連携を進めてきた。2026年は設立から35周年に当たり、CISの役割や加盟国の関係が改めて注目されている。
2026年11月現在、正式加盟国は9か国。トルクメニスタンは準加盟国として参加している。一方、ウクライナは設立国でありながら憲章を批准しておらず、ジョージアは2009年に正式脱退した。さらにモルドバも2026年に脱退手続きを進め、2027年4月8日に法的な脱退が完了する見通しとなっている。こうした変化を踏まえ、CISが国家なのか、ロシアがどの程度の影響力を持つのか、現在も実質的な活動を続けているのかを整理する。
【まず結論】独立国家共同体(CIS)とは?国家ではない理由を解説

独立国家共同体は、英語でCommonwealth of Independent Statesと呼ばれ、その頭文字を取ったCISという略称で知られている。ロシア語ではСодружество Независимых Государств(СНГ)と表記される。
簡単に説明すると、旧ソ連を構成していた共和国が、独立後も必要な分野で協力するために設けた国際的な枠組みである。
ソ連のような一つの国家に戻ることを目的とした組織ではない。各国はそれぞれ独立した主権国家として存続し、共通の利益がある分野について協議や協力を行う。
CISは独立した国家なのか?
答えは、いいえである。
CIS憲章第1条では、加盟国の主権平等を基本原則とし、各国を独立した国際法上の主体として位置付けている。また、CISそのものは国家ではなく、超国家的な権限を持たないと定められている。
そのため、CISには独自の国家領土や国民、統一政府、各国の国内法を直接変更できる中央権力は存在しない。
欧州連合(EU)のように、加盟国の政策に一定の拘束力を持つ制度とも異なる。
CISでは、各国が自国の利益や外交方針に応じて協力する分野を選択できる。経済協力には積極的でも、安全保障や外交では異なる立場を取る国が存在するのも、この仕組みの特徴だ。
CISが担う主な役割
設立時から掲げられている目的は、次のような分野に及ぶ。
- 政治・外交分野での協力
- 貿易や経済関係の発展
- 環境問題への共同対応
- 人道・文化・教育分野の交流
- 国際平和と安全保障に関する協力
- 国家間の紛争の平和的解決
- 市民の交流や移動の促進
- 法律分野での相互支援
つまり、CISは旧ソ連諸国が独立した後も、長年築いてきた経済的・社会的な結び付きを維持するための協議の場として設計された組織なのである。
アルメニア外務省の公式説明やCIS憲章でも、主権平等と多分野での協力が基本原則として示されている。
【2026年最新】独立国家共同体の正式加盟国9か国と準加盟国一覧
2026年11月現在、CISの正式加盟国は次の9か国である。
| 国名 | 地域 | CISにおける位置付け |
|---|---|---|
| ロシア | 東ヨーロッパ・北アジア | 正式加盟国 |
| ベラルーシ | 東ヨーロッパ | 正式加盟国 |
| カザフスタン | 中央アジア | 正式加盟国 |
| キルギス | 中央アジア | 正式加盟国 |
| タジキスタン | 中央アジア | 正式加盟国 |
| ウズベキスタン | 中央アジア | 正式加盟国 |
| アルメニア | 南コーカサス | 正式加盟国 |
| アゼルバイジャン | 南コーカサス | 正式加盟国 |
| モルドバ | 東ヨーロッパ | 正式加盟国(脱退手続き中) |
| トルクメニスタン | 中央アジア | 準加盟国 |
| ウクライナ | 東ヨーロッパ | 設立国・参加国。正式加盟国ではない |
| ジョージア | 南コーカサス | 2009年に正式脱退 |
※上記の正式加盟国9か国は、CIS憲章の批准状況を基準にした法的な整理である。モルドバは脱退手続きが進んでいるものの、2026年11月時点では法的な加盟国として扱われる。
正式加盟国9か国の特徴
1. ロシア
CISの設立を主導した3か国の一つ。旧ソ連地域における経済、安全保障、外交の中心的な存在であり、CISの活動にも大きな影響力を持つ。
2. ベラルーシ
ロシアと特に緊密な関係を維持する国。CISの設立協定が署名された国でもあり、執行委員会の本部が置かれるミンスクを擁する。
3. カザフスタン
中央アジアの主要国で、資源、エネルギー、交通、物流などの分野で重要な役割を担う。CISに加え、ユーラシア経済連合にも加盟している。
4. キルギス
中央アジアの内陸国。労働移動、貿易、交通、エネルギーなどの分野で周辺国との協力が重要になっている。
5. タジキスタン
アフガニスタンと国境を接する中央アジアの国。国境管理や地域安全保障、経済協力などでCISの枠組みを活用している。
6. ウズベキスタン
中央アジアの人口・経済面で重要な国。2026年にはCISの協力強化について、貿易、物流、食料安全保障、エネルギーなど幅広い提案を行った。
7. アルメニア
南コーカサスに位置する国。CISの正式加盟国であり、2026年10月の首脳会議にはニコル・パシニャン首相が出席した。
8. アゼルバイジャン
カスピ海沿岸に位置し、石油・天然ガスなどのエネルギー資源を持つ国。CISの政治・経済協力に参加している。
9. モルドバ
東ヨーロッパに位置する国。EU加盟を目指す外交方針を背景に、CISとの関係を縮小してきた。2026年には設立協定と憲章の破棄手続きを進め、2027年4月8日の正式脱退を予定している。
トルクメニスタンはなぜ準加盟国なのか?
トルクメニスタンは、正式加盟国とは異なる準加盟国の立場にある。
1993年に採択されたCIS憲章を批准していないため、法的には正式加盟国に該当しない。
2005年8月26日のカザン首脳会議で、同国は準加盟国としてCISの活動に参加する方針を示した。
トルクメニスタンは永世中立政策を外交の基本としている。そのため、全面的な政治・軍事的統合ではなく、必要な分野で協力する立場を維持している。
2026年には同国がCISの議長国を務め、10月9日にはアワザで首脳会議が開催された。準加盟国であっても、CISの運営に関わる重要な役割を担っていることが分かる。
ウクライナ・ジョージア・モルドバの違い
CISの加盟国を調べる際に混乱しやすいのが、設立国であるウクライナと、脱退したジョージア、そして脱退手続き中のモルドバの扱いだ。
ウクライナは1991年の設立協定に署名したが、1993年のCIS憲章を批准していない。そのため、法的には正式加盟国ではなく、設立国・参加国として扱われる。
2018年にはCISの調整機関から代表を引き揚げる方針を進め、参加を大幅に縮小した。したがって「ウクライナが正式加盟国から脱退した」と単純に表現するのは正確ではない。
ジョージアは1993年にCISへ加盟したが、2008年のロシアとの軍事衝突を経て脱退を通告し、2009年8月18日に正式脱退した。
一方、モルドバは2026年に法的な脱退手続きを開始した段階であり、2027年4月8日までは正式加盟国という扱いになる。この違いが、2026年時点の加盟国数を理解するうえで重要である。
【設立の経緯】ソ連崩壊と1991年のCIS誕生に何があったのか
独立国家共同体の誕生を理解するには、1991年のソ連崩壊を押さえる必要がある。
ソビエト連邦は、複数の共和国から構成される巨大な連邦国家だった。しかし、政治改革や経済的な混乱、各共和国の独立要求が強まり、1991年には連邦体制が急速に崩れていった。
特に同年8月のクーデター未遂は、中央政府の権威を大きく弱め、各共和国の独立の動きを加速させる転機となった。
1991年12月8日:ベラルーシで設立協定に署名
1991年12月8日、ベラルーシのベロヴェーシの森で、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの3共和国の指導者がCIS設立協定に署名した。
この協定は、ソ連という統一国家の枠組みが事実上終わり、新たな独立国家間の協力体制に移行することを示す歴史的な出来事となった。
1991年12月21日:アルマアタ宣言と11か国への拡大
続いて12月21日、現在のカザフスタンのアルマトイに当たるアルマアタで、11共和国の首脳が議定書に署名した。
参加したのは以下の国々である。
- ロシア
- ベラルーシ
- ウクライナ
- カザフスタン
- アルメニア
- アゼルバイジャン
- キルギス
- モルドバ
- タジキスタン
- トルクメニスタン
- ウズベキスタン
この会議ではアルマアタ宣言も採択された。旧ソ連諸国が平等な立場で協力することや、旧ソ連が担っていた国際的な義務を引き継ぐことなどが確認された。
1991年12月26日:ソ連の解体が正式化
12月25日にミハイル・ゴルバチョフ大統領が辞任し、翌26日にはソ連最高会議の共和国会議が連邦国家の消滅を正式に確認した。
こうして約70年続いたソビエト連邦は歴史を閉じ、旧構成共和国は独立国家として国際社会に向き合うことになった。
欧州復興開発銀行の1991年年次報告書にも、この時期の連邦解体とCIS設立の経緯が記録されている。
1993年1月22日:CIS憲章を採択
設立協定の締結後、CISは組織としての制度整備を進めた。
1993年1月22日、ミンスクでCIS憲章が採択され、組織の基本原則や目的、各種機関の仕組みが定められた。
ただし、ウクライナとトルクメニスタンは憲章を批准しなかった。このことが、後の正式加盟国と参加国の法的な区別につながっている。
【憲章と仕組み】ミンスク本部とロシアの影響力はどれほど大きい?
CISの本部は、ベラルーシの首都ミンスクに置かれている。
正式名称は独立国家共同体執行委員会であり、加盟国間の協議や各種機関の活動を調整する役割を担う。
ミンスクが本部所在地となっているのは、設立協定の署名地がベラルーシだったこととも関係している。
CISの主な組織と役割
CISは一つの中央政府によって運営されるのではなく、各国の代表が参加する複数の機関によって運営されている。
主な機関は次のとおりだ。
- 国家元首評議会: 各国の首脳が参加する最高機関。共通の重要課題を協議する。
- 政府首脳評議会: 経済や社会、行政分野での協力を調整する。
- 外相評議会: 外交政策に関する協議を行う。
- 経済評議会: 貿易や経済協力に関する合意の実施を調整する。
- 国防相評議会: 安全保障や軍事協力について協議する。
- 議会間会議: 加盟国の議会同士が協力や制度に関する情報交換を行う。
- 経済裁判所: CISの経済協定などに関係する紛争を扱う。
CISの公式歴史資料によると、こうした機関に加え、経済、社会、科学、教育、安全保障などの分野で70を超える専門協力機関が設けられている。
また、首脳評議会と政府首脳評議会の決定は、原則としてコンセンサスによって採択される。特定の問題に関心を持たない国が、その問題への参加を見送る余地も設けられている。
この仕組みは、加盟国の政治体制や外交方針が異なる場合でも協力を続けるためのものだ。
ロシアはCISを支配しているのか?
CISを理解するうえで、ロシアの影響力は避けて通れない。
ロシアは旧ソ連の中で最大の共和国であり、経済規模、軍事力、エネルギー資源、外交上の影響力などで他の参加国を大きく上回る。そのため、CISの政治・経済的な方向性において中心的な役割を果たしてきた。
一方、法律上はロシアだけが他国に命令できる組織ではない。
CIS憲章が定めるのは加盟国の主権平等であり、各国は独立した国際法上の主体である。
実際、ウクライナはロシアによる領土侵攻を理由にCISとの政治的な関係を縮小し、モルドバもロシアの行動がCISの基本原則に反しているとして脱退を進めている。
ここには、CISの制度上の平等と、現実の国力の不均衡という二つの側面がある。
ロシアはCISの中心的な影響力を持つ国だが、CISそのものがロシアの政府機関というわけではない。 この区別が、組織の性格を正しく理解するためのポイントだ。
【現在の役割】2026年の活動とユーラシア経済連合(EAEU)の違い
CISは1991年に設立された歴史的な枠組みだが、2026年現在も活動を続けている。
設立35周年に当たる2026年には、首脳会議や外相会議、経済評議会などが開催され、加盟国間の協力が協議されている。
2026年10月9日:トルクメニスタンで首脳会議を開催
2026年10月9日、トルクメニスタンのアワザ国立観光地区でCIS国家元首評議会が開催された。
議長を務めたのは、トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領である。
会議には、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタンの各国大統領と、アルメニアのニコル・パシニャン首相が参加した。
CIS事務局長のセルゲイ・レベデフも出席している。
ウズベキスタン大統領府の公式発表では、会議で多国間協力の拡大が議論され、特に以下の分野が重要課題として取り上げられた。
- 自由貿易圏の実効性向上
- 貿易上の技術的障壁の削減
- 食料安全保障の強化
- 産業協力と共同投資
- 国際物流センターの整備
- エネルギー安全保障
- 気候変動への対応
- 文化・人道交流の拡大
- サイバー犯罪への共同対応
特に注目されるのが、国境を越えるサイバー犯罪や詐欺への対応だ。ウズベキスタンは、CIS各国が迅速に情報を共有できる共同連絡センターの設置を提案した。
これは、CISが従来の貿易や外交だけでなく、デジタル分野の新しい課題にも協力範囲を広げようとしていることを示している。
ただし、首脳会議で提案された内容と、実際に各国で実施される政策は区別する必要がある。共同提案が出されたからといって、すべての国で制度化されたわけではない。
CISとユーラシア経済連合(EAEU)は何が違う?
CISと混同されやすい組織に、ユーラシア経済連合(EAEU)がある。
両者は加盟国が一部重複しているものの、目的や制度の強さが異なる。
CISは旧ソ連諸国の幅広い協力を目的とする組織であり、EAEUは経済統合を進めるための組織である。
ユーラシア経済連合は、2014年5月29日に設立条約が署名され、2015年1月1日に発足した。
正式加盟国は次の5か国だ。
- ロシア
- ベラルーシ
- カザフスタン
- キルギス
- アルメニア
EAEUは、商品、サービス、資本、労働力の自由な移動を促進し、対象となる経済分野で共通・協調政策を実施する制度を持っている。
一方、CISは政治、経済、文化、人道、安全保障など幅広いテーマを扱うが、超国家的な権限を持たない。
両者の違いを理解するには、次のように整理すると分かりやすい。
- CIS: 旧ソ連諸国が幅広い分野で協議・協力する枠組み。
- EAEU: 経済活動や市場の統合を具体的に進める地域経済連合。
つまり、CISに加盟しているからといって、必ずしもEAEUにも加盟しているわけではない。
EAEUの公式説明でも、5か国による経済統合と、商品・サービス・資本・労働力の自由な移動が主要な目的として示されている。
2026年のCISは実質的に機能しているのか?
CISの現在の役割を評価するには、政治的な統合と実務的な協力を分けて考える必要がある。
加盟国の間には、外交・安全保障上の対立や経済政策の違いが存在する。すべての国が同じ方向を向いているわけではない。
それでも、貿易、物流、労働移動、教育、文化交流、犯罪対策など、共通の利益がある分野では協議を継続する意味がある。
2026年10月の首脳会議が開催され、同年11月にもミンスクの本部で各種協力に関する会合が続いていることは、その実務的な役割を示している。
一方、ウクライナの離脱に向けた動きや、モルドバの脱退手続きは、CISの政治的な求心力が一様ではないことも示している。
CISの現在地は、強固な政治同盟でも、単なる歴史的な名称でもない。各国が必要な分野で協力を続ける、柔軟性の高い地域的な協議機構と捉えるのが適切だ。
【独立国家共同体に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:独立国家共同体は一つの国なのですか?
A1:いいえ。CISは独立した主権国家が協力するための国際的な枠組みであり、一つの国家ではない。加盟国はそれぞれ独自の政府、法律、外交政策を持ち、CISに各国を統治する権限はない。
Q2:2026年現在、CISの正式加盟国は何か国ですか?
A2:2026年11月現在、法的な正式加盟国は9か国である。ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバが該当する。トルクメニスタンは準加盟国である。なお、モルドバの脱退は2027年4月8日に法的に完了する予定だ。
Q3:ウクライナとジョージアはCISから脱退したのですか?
A3:両国は法的な経緯が異なる。ウクライナはCIS設立国だが、1993年の憲章を批准しておらず、正式加盟国ではなかった。2018年にはCISの調整機関からの離脱を進めた。一方、ジョージアは1993年に加盟した後、2009年8月18日に正式脱退している。
まとめ:CISの本質は旧ソ連諸国の協力と各国の独立の両立にある
独立国家共同体(CIS)は、1991年12月のソ連崩壊を背景に誕生した、旧ソ連諸国による国際的な協力組織である。
2026年11月現在、正式加盟国は9か国。トルクメニスタンは準加盟国であり、ウクライナは設立国・参加国、ジョージアは2009年に正式脱退した国という位置付けになる。モルドバも脱退を決定して手続きを進めているが、法的な脱退完了は2027年4月8日の予定だ。
CISの理解で特に重要なのは、次の3点である。
1. 国家ではなく国際協力組織であること。 加盟国の主権と独立を前提としている。
2. ロシアの影響力は大きいが、法的には加盟国が平等であること。 ロシアがCISを国家機関のように直接統治しているわけではない。
3. 現在も実務的な協力が続いていること。 貿易、交通、安全保障、文化、教育、サイバー犯罪対策などが主要なテーマになっている。
CISを理解することは、ロシアと周辺諸国の関係だけでなく、中央アジアや南コーカサスの外交・経済構造を読み解くことにもつながる。
今後はモルドバの正式脱退に加え、各国がCISとEAEUなど複数の地域協力枠組みをどのように使い分けるかが、旧ソ連地域の国際関係を考える重要な判断材料となる。