「なないろ」は、BUMP OF CHICKENがNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のために書き下ろした楽曲だ。ドラマは2021年5月17日に放送を開始し、清原果耶が主人公・永浦百音を演じた。
物語の舞台は宮城県。気仙沼で育った百音が、登米での生活を経て気象予報士を目指し、天気を通じて人々や故郷と向き合っていく。過去の震災や故郷への思いを抱えながら、未来に向かって進む主人公の姿が描かれた作品である。
このドラマに「なないろ」が重なるのは、天気という自然現象だけでなく、過去の記憶と現在の自分を結び直すという共通点があるからだ。
晴れた日にも孤独を感じることがある。雨が止んでも、昨日の出来事が消えるわけではない。それでも人は朝を迎え、新しい一日を歩き出す。楽曲は、そうした人間の複雑な感情を、明るく軽やかなバンドサウンドに乗せて表現している。
NHKの番組情報でも、本作は『おかえりモネ』のために書き下ろされた主題歌として紹介されている。単にドラマの雰囲気を明るくする挿入的な音楽ではなく、作品全体のテーマと深く結び付いた一曲だ。
【歌詞の意味を徹底解釈】虹・記憶・雨・傘に込められたメッセージ

「なないろ」の歌詞を読み解くうえで注目したいのは、虹だけでなく、雨、水たまり、傘、空、太陽といった自然のモチーフが繰り返し登場することだ。
これらは単なる風景描写ではない。過去の自分と現在の自分をつなぐ象徴として機能している。
1.虹は過去に感じた希望や心の色
タイトルの「なないろ」が連想させるのは、雨上がりの空に現れる虹だ。
虹は、雨が降った後に初めて見ることができる。つまり、そこには雨という出来事が先に存在する。苦しい時間や思いどおりにならなかった経験があるからこそ、その後に見える景色にも特別な意味が生まれる。
歌詞に登場する虹は、未来に向かって進むための単純な希望というより、かつて自分が確かに感じた感情を思い出すための手がかりとして読める。
今の自分が迷ったとき、過去の自分が見た景色や、そのときに抱いた気持ちを思い出す。それによって、自分が何を大切にしてきたのかを再確認できる。
ここが「なないろ」の印象的な部分だ。希望を外側から与えてもらうのではなく、自分の記憶の中に残っている色をもう一度探すのである。
2.水たまりは過ぎ去った時間と現在を映す鏡
歌詞の冒頭付近では、昨夜の雨を覚えていない太陽と、雨の記憶を映し出す水たまりが対照的に描かれる。
太陽は新しい朝を象徴する存在だ。一方、水たまりは前日に降った雨の痕跡である。
太陽だけを見れば、昨日の雨などなかったかのように感じられる。しかし、水たまりには確かに雨が残したものが映っている。
この対比には、人間の記憶にも通じる意味がある。時間が経てば出来事そのものは過去になるが、そこで感じたことまで完全になくなるわけではない。
しかも、水たまりは永遠には残らない。乾いて消えてしまう。それでも、その短い時間に光を反射して輝く。
過ぎ去るものにも価値があるという視点は、楽曲全体を理解する重要な手がかりだ。
3.傘は失くせない記憶を守る存在
特に印象深いのが、失くせない記憶を傘にたとえた表現である。
傘は雨が降ったときに使う道具だ。普段は鞄の中にしまわれていても、必要な場面になれば自分を守ってくれる。
記憶も同じように考えられる。楽しかった思い出も、寂しさを伴う経験も、日常の中では意識しないことがある。しかし、迷ったときや苦しいときには、それまでの経験が自分を支える力になる。
ここで大切なのは、過去を忘れないことと、過去に縛られることは違うという点だ。
「なないろ」は、過去を捨てて前進することを求めていない。忘れられないものを持ったまま、それでも明日へ進んでいく姿を描いている。
4.思い出す寂しさと忘れてしまう寂しさ
この楽曲には、記憶に対する二つの感情が共存している。
思い出せば寂しくなる。しかし、思い出せなくなれば、それもまた寂しい。
人は大切な人や場所、過去の自分との関係を、いつまでも同じ状態で保つことはできない。時間が経つにつれて、記憶は少しずつ変化していく。
それでも、忘れずにいることしかできない夜を越えて、自分の旅は続いていく。
この部分には、単なる前向きさでは片付けられない藤原基央らしい感情表現がある。悲しみを消すのではなく、悲しみが存在することを認めたうえで歩いていくのだ。
5.朝の支度は、日常を取り戻すための小さな決意
後半では、歯を磨き、顔を洗い、着替えて出かけるという、ごく普通の生活の動作が描かれる。
大きな夢を実現することや、人生を劇的に変えることだけが前進ではない。
いつもと同じように起きて、同じ道を歩き、自分らしい姿のまま一日を始める。その小さな行動も、立派な前進なのだ。
転んだときの起き方を知っているという感覚も、経験を積み重ねた人間ならではの強さを表している。
つまり「なないろ」は、傷つかない人の歌ではない。傷ついた経験があるからこそ、自分の立ち上がり方を知っている人の歌なのである。
【制作背景と作品年表】藤原基央・MOR・公式MVを詳しく解説
「なないろ」の制作背景には、藤原基央がドラマ制作チームと向き合った過程や、当時の社会状況が関係している。
藤原基央が制作前に聞いたドラマスタッフの思い
2021年5月18日公開の音楽メディア「Real Sound」の記事によると、藤原基央は楽曲制作に入る前の2020年夏ごろ、ドラマの制作スタッフから作品に懸ける思いを聞いていた。
そこで感じたスタッフの熱意に心を動かされ、主題歌のオファーを快諾したという。
藤原にとって主題歌制作は、完成した映像に音楽を添えるだけの仕事ではない。作品を作るチームの一員として、その作品が伝えようとするものに向き合う作業でもある。
同記事では、2020年4月の緊急事態宣言下に藤原が感じていたことをスマートフォンのメモに残していたエピソードも紹介されている。そのとき思い浮かんだのが、ライブで出会ってきたリスナーの顔だった。
また、「なないろ」と「Flare」は同時期に制作され、共通する着想を持ちながら、それぞれ異なる温度感でメッセージを伝える楽曲になったと報じられている。
「Flare」が重さを伴う表現であるのに対し、「なないろ」は柔らかなサウンドで人間の心を描く。そこには、離れていても誰かに会いたいという気持ちが通底している。
作詞・作曲は藤原基央、編曲はBUMP OF CHICKENとMOR
公式YouTubeチャンネルの楽曲クレジットによると、「なないろ」の制作陣は次のとおりだ。
- 作詞:藤原基央
- 作曲:藤原基央
- 編曲:BUMP OF CHICKEN & MOR
藤原基央が楽曲の中心となる言葉とメロディーを生み出し、バンドとMORが編曲を担当している。
また、Real Soundの記事では、藤原がギター1本でデモを制作した段階から、間奏にトランペットを入れるイメージを持っていたことが紹介されている。
実際のレコーディングでは弦一徹ストリングスが参加し、ストリングスやトランペット、フルートなどの音色が楽曲に豊かな広がりを加えた。
軽快なギターサウンドだけでなく、間奏に現れる管楽器や弦楽器の響きにも注目したい。朝の空気を思わせる爽やかさと、過去を振り返るような温かみが同時に感じられる理由の一つだ。
公式MVは2種類。それぞれ異なる魅力がある
オリジナルMV
2021年5月公開
林響太朗が監督を担当。二人の少女が空を飛ぶ幻想的な映像で、人生の時間や重力をモチーフに楽曲の世界観を描く。
Performance Music Video
2021年12月公開
メンバーの演奏を中心に構成された映像。バンドの音楽的な一体感や演奏の表情を楽しめる。
オリジナルMVは、朝ドラのオープニング映像も担当した林響太朗が監督を務めた。制作に参加した吉村栞乙、吉村眞乙が二人の少女を演じ、空を舞う姿が映像の中心になっている。
CG制作の専門メディア「CGWORLD」のメイキング記事では、実写、フルCG、LEDウォールを組み合わせた制作工程も紹介されている。実質的な制作期間は約1週間という短いスケジュールだった。
一方、Performance Music Videoではメンバーの演奏そのものに焦点が当たる。同じ楽曲でも、映像表現によって異なる印象を味わえるのが特徴だ。
発売・タイアップ・ライブの重要年表
「なないろ」は、配信シングルとしての発表から、CD化、アルバム収録、ライブ映像公開へと展開してきた。主な出来事を整理すると次のとおりだ。
この年表から分かるのは、楽曲がドラマ放送時だけの一過性の主題歌にとどまらなかったことだ。アルバム、ライブ、CMという異なる接点を通じて、新しい聴き手に届く機会が生まれている。
【2026年最新】累積再生数1億回突破と日本生命CM起用の意味
2026年の「なないろ」にとって大きな節目となったのが、オリコン週間ストリーミングランキングでの累積再生数1億回突破だ。
オリコンで自身6作目の1億回突破作品に
2026年7月15日発表・オリコン週間ストリーミングランキング100,094,146回
累積再生数
週間再生数
287,423回
達成順位
BUMP OF CHICKENの6作目
集計期間
2026年7月6日~12日
出典:オリコン調べ。2026年7月20日付ランキング。
オリコンの2026年7月15日付発表によると、「なないろ」の累積再生数は1億94万1,146回に到達した。
BUMP OF CHICKENにとって、累積再生数1億回を突破した楽曲としては6作品目。先行して達成した「天体観測」「アカシア」「SOUVENIR」「クロノスタシス」「ray」に続く記録となった。
特筆すべきなのは、リリースから約5年が経過した楽曲が、2026年にも新たな記録を作ったことだ。
なお、この数字はオリコン週間ストリーミングランキングの累積再生数であり、YouTubeのMV再生回数や全サービスの再生数を単純に合算した数字ではない。指標を区別して見ることが大切だ。
2026年4月、日本生命のCMソングに決定
もう一つの大きなニュースが、2026年4月2日に発表された日本生命のCM起用である。
使用されたのは、日本生命の「ニッセイみらいのカタチ ぴたほ」の新CM「なないろのパズル」篇。綾瀬はるかと山田裕貴が出演し、治療や入院に対する不安に寄り添う保険商品の特徴を明るく表現している。
日本生命の公式発表では、CMの内容について、入院時の不安に寄り添う商品を爽やかに伝えるものと説明されている。楽曲には「なないろ」が採用され、テレビとウェブの両方で展開された。
興味深いのは、2021年の朝ドラ主題歌と2026年の保険商品のCMという、異なるジャンルの映像に同じ曲が起用されたことだ。
ドラマでは過去を抱えながら未来に向かう物語を支え、CMでは日常の不安に寄り添う明るい音楽として機能する。楽曲の持つ柔らかさと前向きさが、異なる映像表現にも適応している。
2026年11月時点で見える「なないろ」の評価
現在の評価を考える際、注目すべきなのは単純な人気ランキングだけではない。
- 長期的な再生:2026年7月にオリコン累積1億回を突破した。
- 広告での再活用:日本生命の2026年CMに採用された。
- ライブでの継続:2024年のツアー公演映像が2026年に改めて公開された。
- アルバムでの再評価:2024年発売の『Iris』にも収録されている。
これらは、楽曲が複数のメディアや聴取環境で接点を持ち続けていることを示す客観的な材料だ。
ただし、再生数やCM起用だけで全リスナーの感想を代表することはできない。少なくとも数字から読み取れるのは、ドラマ放送当時の視聴者だけでなく、時間を経て楽曲に触れる人にも聴かれ続けているという事実である。
【アルバムIris・ライブ映像】現在も聴き続けられる理由
アルバム『Iris』では2曲目に収録
「なないろ」は、2024年9月4日に発売されたBUMP OF CHICKENの通算10枚目のアルバム『Iris』に収録されている。
同作は、2019年発売の『aurora arc』以来、約5年ぶりとなるオリジナルアルバムだ。全13曲を収録し、「なないろ」は2曲目に配置された。
ほかにも「アカシア」「クロノスタシス」「SOUVENIR」「strawberry」など、ドラマやアニメ、映画の主題歌として親しまれた楽曲が収められている。
レコード会社の公式発表では、アルバムについて、バンドが歩んできた5年間のドキュメンタリーのような作品と説明されている。
その中に「なないろ」が収録されていることには意味がある。2021年のドラマ主題歌として生まれた曲が、後年のBUMP OF CHICKENの音楽的な歩みを構成する一曲として位置付けられているのだ。
2024年の「Sphery Rendezvous」で披露
「なないろ」は、2024年のツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous」のセットリストにも入っている。
2025年12月10日に発売されたライブ映像作品には、東京ドーム公演Day2と金沢歌劇座公演Day1の演奏が収録された。いずれの公演でも「なないろ」が披露されている。
東京ドーム公演Day2では、序盤の「アンサー」に続く位置に配置され、ツアーの流れの中でも重要な一曲となっていた。
そして、2026年7月16日、バンドの公式サイトは累積再生数1億回突破を記念して、翌17日21時30分に東京ドーム公演のライブ映像をプレミア公開すると発表した。
公開されたのは「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous」の東京ドーム公演からの映像である。
スタジオ音源では整然と聴こえるメロディーも、ライブではバンドの演奏や会場の空気と結び付き、異なる表情を見せる。歌詞のメッセージをじっくり受け取るなら公式MV、演奏の熱量を味わうならライブ映像という楽しみ方もできる。
「なないろ」はどんな人におすすめか
この曲を特に深く味わえるのは、次のような経験や気持ちを持つ人だ。
- 過去の出来事を忘れられず、それでも前に進みたい人
- 人生の転機や環境の変化を経験している人
- 大切な人との別れや再会を考えることがある人
- 派手な応援歌より、静かに背中を押してくれる音楽が好きな人
- 日常の何気ない風景に特別な意味を感じる人
反対に、最初から最後まで強い高揚感が続く応援ソングや、明確な恋愛ストーリーを求める人には、少し違った印象になるかもしれない。
「なないろ」の魅力は、明るさの中に寂しさがあり、前向きな言葉の裏側に過去の痛みがあることだ。単純に元気を出すための音楽ではなく、自分の感情を整理したいときにも寄り添ってくれる。
【プロの結論】本当のテーマは「過去を持ったまま、今日を生きること」
「なないろ」を単なる希望の歌として理解すると、この楽曲の奥行きを十分に捉えられない。
本質にあるのは、過去を消去することができない人間が、それでも未来に向かって歩き続けるというテーマだ。
虹は、いつでも見られるものではない。雨が降り、空が変わり、特定の条件が重なったときに初めて姿を現す。記憶も同じで、いつも意識しているわけではないが、ある瞬間に鮮明によみがえることがある。
その記憶を持っているからこそ、今日の自分は昨日とは違う景色を見ることができる。
さらに重要なのは、藤原基央が制作時に思い浮かべていたというライブで出会ったリスナーの存在だ。楽曲の中にある誰かに会いたいという感情は、作品を作る側と受け取る側の関係にも重なる。
聴き手が自分自身の記憶を重ねることで、曲の意味は一つに固定されない。これが、ドラマの放送が終わった後も楽曲が聴かれ続ける理由の一つだと考えられる。
【BUMP OF CHICKEN「なないろ」に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:「なないろ」の配信日はいつですか?
A1:2021年5月18日です。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の主題歌として発表されました。CDシングルは同年12月に発売されています。
Q2:「なないろ」の作詞・作曲は誰ですか?
A2:作詞・作曲ともに藤原基央です。編曲はBUMP OF CHICKENとMORが担当しています。
Q3:「なないろ」の歌詞にはどんな意味がありますか?
A3:過去の記憶や大切な人への思いを抱えながら、今日を生きて明日へ進む姿を描いた楽曲です。虹は過去に感じた希望や心の色、水たまりや傘は記憶を象徴するものとして解釈できます。
Q4:「なないろ」は『Iris』に収録されていますか?
A4:はい。2024年9月4日発売の通算10枚目のアルバム『Iris』の2曲目に収録されています。
Q5:「なないろ」は2026年に1億回再生を突破しましたか?
A5:はい。2026年7月15日発表のオリコン週間ストリーミングランキングで、累積再生数1億94万1,146回を記録しました。
Q6:「なないろ」は日本生命のCMで使われていますか?
A6:はい。2026年4月2日から放映された日本生命「ぴたほ」の新CM「なないろのパズル」篇に起用されています。出演者は綾瀬はるかと山田裕貴です。
Q7:「なないろ」のライブ映像は見られますか?
A7:はい。2026年7月17日に、2024年の「Sphery Rendezvous」東京ドーム公演のライブ映像がBUMP OF CHICKEN公式YouTubeチャンネルで公開されました。
まとめ:BUMP OF CHICKEN「なないろ」は2026年も色あせない名曲
BUMP OF CHICKENの「なないろ」は、2021年の朝ドラ『おかえりモネ』のために制作された楽曲でありながら、ドラマの枠を超えて多くの人に聴かれ続けている。
藤原基央が作詞・作曲を担当し、BUMP OF CHICKENとMORが編曲。虹や雨、水たまり、傘といった自然の情景を通じて、過去の記憶と現在、そして未来への歩みを描いている。
2024年にはアルバム『Iris』に収録され、2026年には日本生命のCMソングに採用。さらに7月にはオリコン累積再生数1億回を突破し、東京ドーム公演のライブ映像も公開された。
この曲が伝えているのは、過去を忘れれば前に進めるという考え方ではない。忘れられないものを抱えたままでも、人は新しい朝を迎えられるということだ。
昨日の雨が残した水たまりにも、今日の太陽は映る。過去と現在は切り離されているのではなく、つながりながら変化していく。
2026年に1億回再生という節目を迎えた「なないろ」。その数字以上に価値があるのは、聴く人それぞれの人生のタイミングで、新しい意味を見つけられる楽曲であることだ。